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連載コラム 半歩プロの西洋料理
「半歩プロ」をテーマに家庭でできる西洋料理を紹介するこのコラム。まずは個性豊かな担当シェフの声をどうぞ。「フレンチって難しくないよね」「語るで〜!」「対談がしたい!」「研修先のレストランではなー」。えー、お話し中すみません、それは「家庭でできる」料理なんですよね?みなさーん、聞いてますかー?だからテーマがあるんだってばっ!守って下さいよ〜っ!
辻釣理師、こだわり魚料理!「根魚編」
   春に美味しく味わえる魚の代表格は、魚の王の名にふさわしいマダイ。特に桜の咲く時期が一番美味しいと言われ、「桜ダイ」とも呼ばれています。他にも初ガツオ、ホタルイカ、キンメダイといろいろありますが、今回は根魚の高級魚「メバル」のお話とその料理法を紹介します。

神戸沖、和田防の根魚各種

神戸沖、和田防の根魚各種

   まずは、「根魚(ねざかな)って何?」の疑問にお答えします。海釣りをされる方ならご存知かと思いますが、メバル、ガシラ(カサゴ)、アイナメなど沿岸の岩礁地帯やテトラポットの隙間、波止際のケーソンの隙間等に好んで生息している魚を総称してこう呼びます。ほとんどの場合、海の底の方にまとまって生息しているので、読んで字のごとく、「根魚」なんです。

   メバルの種類は非常に多く、日本近海だけでも30種類は超えると言われています。中でも代表的なのは、ウスメバル、通称「竹の子メバル」です。竹の子が出回るころが旬になるのでこう呼ばれています。今回コラムのレシピで料理に使ったのもこの竹の子メバルです。その他は黒メバルなどが有名です。身は白身で淡白、くせがなく上品な高級魚です。そんな良い魚が手に入れば、生のまんま造りで!と日本人なら誰しも考えるでしょう。実際僕もそういきたい所です。確かにビールや焼酎にもよく合って無難です。でも、毎回それだと芸がないですし、飽きてしまいます。そこで、火を通しても抜群においしいこのメバルを、素材の味を損なわないようシンプルに、ハーブと共にオーブン焼きにすることにしました。

   さて、高級魚のメバルは釣るのも難しいというイメージがあるかもしれませんが、この根魚に関しては、春になると手軽に波止からでも狙う事ができます。胴付き仕掛けの2〜3本針に活エビやシロウオを餌に、波止際の底やテトラの隙間の魚がいそうな所を求めて探り歩きます。

餌 い ろ い ろ
シラサエビ。生きのよさが釣果につながる 生きたシロウオ。粘りがあるのでタオルの上で針につける 淡水の小魚イサザ。冷凍ものがある

シラサエビ。
生きのよさが釣果につながる

生きたシロウオ。粘りがあるのでタオルの上で針につける

淡水の小魚イサザ。
冷凍ものがある


   船釣りの場合も仕掛けの構造はだいたい一緒です。こうして誘いをかけるとピクピクと竿先に当たりがきます。ここで早合わせせず、完全に食い込むまで我慢します。魚は待っていれば必ず最後まで勝負を挑んできますので、ここは我慢です。この瞬間は集中です。僕は周囲の音が全く聞こえてこなくなります。そして、次の大きい当たりで合わせ、見事に乗せて上げる事ができれば釣り人の勝利。餌だけがきれいに無くなっていれば、魚の方が一枚上手!この駆け引きが釣りの醍醐味と言えるでしょう。

   根魚は何匹かまとまって生息していることが多いので、1匹釣れれば、また同じポイントに垂らして2匹、3匹と立て続けにくることもよくあります。そうして効率良くポイントを見極めて引き当てる事ができると、2桁釣果(ちょうか)もざらにあります。最初はひたすら釣る事だけを考えますが、ある程度釣果が上がってくると、途中から今度はこれをどう料理しようかと考え始めます。それもまた楽しいので僕の釣り歴は長く続いています。

釣りあげたガシラと筆者   ガシラの好ポイント!和歌山加太沖、乗合い船で

釣りあげたガシラと筆者

 

ガシラの好ポイント!
和歌山加太沖、乗合い船で


   では、魚を美味しく料理するコツやアドバイスなどを少しまとめてみましょう。
   鮮度がよく最高の状態の魚の場合は、何も手を加えずそのまま焼きます。食べきれなくて残った魚を翌日に持ち越したり、あるいは冷凍しておく事もあるでしょう。そういう時には、焼く前ににんにくや好みのハーブ、オリーブ油で20〜30分「マリネ(漬け込み)」をすると良いでしょう。ハーブやオイルの香りが魚に移り、魚臭さが緩和されます。青魚や少しくせのあるような魚を使う場合にも効果的です。また、ハーブやオイルに好みのスパイスを加えても良いでしょう。例えば、身近なものならカレー粉なんかです。このちょっとした工夫で大分食べやすくなってきます。

   このコラムのレシピでソース代わりに利用した「タプナード」は、黒オリーブをペースト状にした南仏の薬味です。これは焼いた魚にならだいたい何にでも合う代物で、一度食べたらやみつきになります。作り方も非常に簡単。覚えておくととても便利です。魚の塩焼きと言えば大根おろしと醤油が浮かんでくる方も、一度試してみる価値はあります。

   つけ合わせは旬の春野菜を何種類か用意して、1つの鍋で蒸し煮にしてみました。野菜から出た甘みが煮汁に移り、この煮汁がソース代わりにもなります。作る時には、チキンブイヨンは薄めにし、野菜の味を生かしてください。この野菜の煮汁にタプナードを混ぜ込んでソースとしても良く、また見た目の色合いも映えてくるでしょう。春の休日にぜひ一度お試しください。


このコラムのレシピ

コラム担当

レシピ メバルのオーブン焼き、春野菜の蒸し煮添え、タプナードソース

ミスター二等兵
人物 阿部 浩喜
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