私がフランス料理と出会ったのは、今から30年近く前、「アンノン族」と呼ばれる女性が現れ、「何じゃそれは?」と思ったことに始まります。これは2つの女性誌に由来する言葉ですが、書店で見ればそれはファッション雑誌のような、旅行ガイドのような、はたまた料理本?、思わず見入ったものでした。その中で初めて目にしたフランス料理、今まで見たことも食べたこともないものがずらりと並んでいるではありませんか。「これだ!!!」と思いました。フランス料理、そうだ、先ずはフランスだ。そして雑誌の中の”今も残る中世の街と名物菓子「ガレット」”についての記事が、なぜか心の片隅に残っていて、是非食べてみたいという思いに駆られたものです。それから7年後、フランスへ行く機会がめぐってきて、念願のそのガレットが食べられたのです。 |
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その中世の街とは、パリと並ぶ美食の街リヨンから北東へ35kmほど離れた小高い丘の上にあるぺルージュです。城壁に囲まれた直径約200mの小さな街。石畳の道も広場も家々も教会も全て中世の面影を濃く残しています。(映画「三銃士」のロケ地にもなったほどです。)ペルージュは、イタリアのサッカーチームでおなじみの「ペルージャ」、そうです、イタリア中部の町、ペルージャから来た人々によって作られました。中世には織物の街として栄えていたのですが、19世紀末に鉄道や幹線がこの街を迂回した為、人口が1500人から80人まで減ってしまいました。その後20世紀初めに街の復興運動が起こり、住民も戻ってきたのです。 |
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幅がせまく、曲がりくねった石畳の道を歩いて街の中心へ行くと、大きな菩提樹の立つティユル広場に面して「ロステルリ・デュ・ヴィユ・ペルージュ」というホテル兼レストランがあります。木組みのバルコニーのある3階建ての石造りの建物は、13世紀建築当時のまま。街の歴史的記念建造物にも選ばれています。 |
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ここのレストランのデザートがあの心の片隅にあった「ガレット」なんです。直径がなんと50〜60cm!このガレットを焼くかまども昔どおりのものが使われ、その様子が通りからも眺められるようになっていて、厨房の横の出窓から買う事も出来ます。このガレットの特徴は、発酵させた生地をピッツァのように大きく薄く伸ばし、膨らみすぎないよう二次発酵させずにバターと砂糖を散らして高温で短時間で焼くこと。表面がカリッと、中がふんわり柔らかい食感に仕上がります。現在の菓子店では、なかなか見かけられないタイプではないでしょうか。 |
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今回、皆さんにぜひこのガレットを作って、試食して頂きたいのです。味の方は、・・・・・食べてみてのお楽しみ。でもきっと、素朴で、何となく田舎の母親を、いやおばあちゃんを思い出すことでしょう。さあ、召し上がれ! |
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