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連載コラム 半歩プロの西洋料理
「半歩プロ」をテーマに家庭でできる西洋料理を紹介するこのコラム。まずは個性豊かな担当シェフの声をどうぞ。「フレンチって難しくないよね」「語るで〜!」「対談がしたい!」「研修先のレストランではなー」。えー、お話し中すみません、それは「家庭でできる」料理なんですよね?みなさーん、聞いてますかー?だからテーマがあるんだってばっ!守って下さいよ〜っ!
楽しいヴァカンスの過ごし方
いい季節になってきました。7月の声を聞くと、フランス人たちは日頃乗っている自家用車の2倍はあるキャンプ用ワゴンを引っ張り、聖地巡礼の如く夏の太陽を求めて移動を始めます。パリから南仏に向かう高速道路(通称、太陽道路)はそんな車でいっぱいになります。
朝のこもれびこの時期のフランスは日本と違い、少しひんやりとした空気の中で朝を迎えます。朝日が木々の間から射し込み、まさに”すがすがしい朝”。目覚めもさわやかです。普段と変わらないカフェ・オ・レにクロワッサン、コンフィチュール(ジャム)といったお決まりの朝食も、ヴァカンスという心のゆとりと、少し遅めの時間に庭でとるというだけで、いつもは忙しさで忘れかけている優雅な時間となります。
さぁ、目的地を定めぬまま車で出発。クーラーがないのが当たり前なので窓を開けて走ります。喉が渇いてくればカフェを探しましょう。条件は、眺めがよくサーヴィスがカッコいい所。ピッタリのカフェ発見!すかさず席を確保。

田舎のカフェ モナコ

よく陽に焼けたスタイルの良いいかにもといった感じの女性が注文を取りに来ます。いつもはビールなのですが、小粋(?)に、「モナコ(ビールを炭酸水で割り、グレナデンシロップを数滴落としたカクテル)」か「カンパリ」と言いたくなる気分。サーヴィスのプロとしての女性のパフォーマンスを含めた動きを眺めたりするうち、既に2杯目も残りわずか。昼間から飲んでいるという罪悪感を多少感じながらのマッタリとした時間も休日ならではのものです。
夜はミシュランの星つきレストランのテラス席で陽が沈んで行くのを眺めながらとる食事が最高。特にアペリティフ片手にメニューを見ている時間が僕にとってはもっとも幸せなひとときです。レストランのテラス席数時間後に請求書を見て現実に戻される事などはすっかり忘れています。メニューが決まれば次はワイン。何を飲もうかと皆で盛り上がり、ソムリエを呼んで何本かをセレクトしてもらいます。まずは値段の確認。少し見栄を張って真ん中ぐらいのランクのものを注文。その後は皆がソムリエに早代わりし、競ってうんちくを述べるのですが、これは早い者勝ち。先手を打ったものが「なっ、するでしょ。○○の香り!」と何度も繰り返します。すると一同「する、する」と賛同。周りから見れば変な団体でしょうが本人たちは大満足です。
いよいよ料理の登場。職業病とでも言うのか、一同一斉に沈黙。メニュー名を確認しつつ、他人の料理を横目で見て「良さそうだね」と人のを誉めつつ、自分の料理を味わいます。少しの沈黙の後、誰かが「これ美味いよ!」と口を開く。このフレーズは実はかなりの曲者で、その後一斉に「味見させてよ」、「食べてみる?」という会話と共に日本人特有の皿回しの儀式が始まってしまいます。その中でも僕の心をくすぐる料理がありました。それは<ニース風サラダ>。材料は基本的には街場のビストロなどで出しているものと大差はないのですが、やはり星つきレストランが出すだけあって、トマトはコンフィになっていたり、ツナが自家製だったりと、ひと工夫もふた工夫ものあとが見え、その上、盛りつけがまさに芸術的。改めて料理における視覚的効果の重要性を感じる一品でした。
気がつくと席に着いてから早3時間以上も過ぎ、当たり前ですがあんなに明るかった外も暗くなり、今は綺麗な星が出ています。満腹感と少しの肌寒さ感じながら席を立ち、優雅な一日が終わったことを感じました。
こんなふうに過せるヴァカンスは本当に楽しいものです。ただ日本だと忙しく生活しているせいか、なかなか体験出来ませんが・・・。休日に少しだけ早起きをして、ゆったりとした気分で過したり、時にはフランスの休日をイメージして、<モナコ>を飲みながら、遊び気分半分で<ニース風サラダ>でも作ってみてはいかがでしょうか?工夫次第で星つきレストランバージョンも生まれ、思っても見なかった時間が過せるかも・・・


このコラムのレシピ

コラム担当

レシピ ニース風サラダ

三十路少年?
人物 山内 茂
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