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「地方料理の集合体」などと形容されるイタリア料理。ちょっと堅苦し〜い表現ですが、つまりは「土地のマンマ(お母さん)の味」ということ。「イタリアの家庭で作られるおふくろの味を日本の食卓へ!」をテーマに、皆さんよ〜くご存知のこれぞイタリア料理から、日本では無名に近い地方料理まで、ただひたすら個人の趣味でご紹介。「イタリア料理はmammaのマンマ」の思いをタイトルに込め、辻調グループ校「イタリア大好き!!!」職員が、遠き恋しきイタリアを想いながら好き放題、いえ、自由に綴る偏重コラム。星付きレストランの料理も!と、時にはテーマを外れて大暴走なんてことにも!? |
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シチリア伝統のマジパン菓子、
フルッタ・ディ・マルトラーナ |
みんな、甘いものが好きかー!! イタリアの菓子は料理同様に地方色が非常に豊か。右の写真、果物屋さんでパチリ!・・・ではありません。実はシチリアのお菓子屋さんの店先なんです。
これはフルッタ・ディ・マルトラーナ(マルトラーナの果物)といって、アーモンドの粉と砂糖をこねて果物を形作り、色づけしたシチリアで有名なお菓子。こんな感じで何かに見立てたお菓子もイタリアにはたくさんあるんです。
山ほど種類のあるイタリア菓子の中から、世の中のお菓子好きな人たちのために2人のイタリアーノ(気取りの純粋ジャッポネーゼやけど・・・)が、何かに見立てたお菓子や名前がおもしろいお菓子を取り上げて少しご紹介しましょう。
Salvatore(以下S):ピアチェーレ(はじめまして)!! 甘いもの大好き、イタリア大好き人間のサルヴァトーレSalvatoreこと、菊富でーす。夜中であろうと早朝であろうと甘いものがあるとついつい口にしてしまう俺。
イタリアのお菓子もかなり日本人に浸透し、ティラミスやパンナ・コッタを知らない人はいないのではという今日この頃・・・。この前、神戸の街をぶらぶらしているとカフェちっくな店のショーケースにコーダ・ディ・アラゴスタを発見!! で、思わず衝動買い。どことなく素朴で懐かしい味でうまかったー。
Michele(以下M):うまかったは分かったから、俺へのお土産は??
S:・・・。いきなりの登場やね、ミケーレMichele・・・。あっ、紹介しときます。こちらは俺の兄弟みたいなもんで、長い付き合いになるミケーレです。こいつも甘いものには目がなくて、どこかに行ってきたのを知るとお土産をねだるんです。
M:で、俺へのお土産は??
S:ご・・・ごめん。
M:俺も伊勢海老食べたかったなぁー。刺身か? 天ぷらか?
S:はっ、はいっ? 刺身? 天ぷら? 何の話?
M:ほらっ。さっきコーダ・ディ・アラゴスタって言ってたやろ!? アラゴスタって伊勢海老という意味じゃなかったっけ?
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コーダ・ディ・アラゴスタ |
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カンノーリ |
S:あー、それは伊勢海老の尾に見たてたカンパーニャ州のドルチェなんや。生地を何回も折り重ねて、その生地を円錐形にして中にシュー生地を詰めて焼くと、まさに伊勢海老の尾のような形になるねん。生地は薄っぺらく見えるけど、食べるとしっかりと固く、口の中が切れそうなくらいパリッパリッ。くせになるでー。
M:見た目そのまんまの名前なんやね!
S:そうそう、おっしゃるとおり。イタリア菓子の名前は見た目そのまんまからきてるものが結構多いねんで。有名なところでいくと、管(イタリア語でカンナ)の中にリコッタ・チーズのクリームを詰めたカンノーリ。ズッコットは、聖職者の小さな半球形の帽子ズッケットをトスカーナ方言でズッコットと呼ぶことから(前回のコラムで詳しく紹介しています!)。モンテ・ビアンコも超有名やね。モンテが「山」、ビアンコが「白」で、マロンクリームにたっぷりと生クリームや粉砂糖をかけて白い山に見立てたケーキ。モンブランって言えばピンとくるよね。
今回、作り方を紹介するのもそんな、ストレートかつユニークなネーミングのお菓子ちゃん達です。まずはブルッティ・マ・ブオーニ。これは北イタリアの伝統菓子で、使う材料は作り手によって多少のアレンジはあるものの、メレンゲにナッツを混ぜ込んで焼き上げたシンプルだけどおいしいお菓子なんやで。
M:へー! で、なんて意味なん??
S:ブルッティが「醜い」でブオーニが「おいしい」で、なんと「不細工だけどおいしい」という意味なんです。どうや!参ったか!って感じやろ!? 焼き上がりがごつごつしていてほんとに不細工な奴なんです。でもこれがうまい。もー、止まりましぇーん。真ん中のマは「しかし」という意味。ロンバルディーア州にはブルッティ・エ・ブオーニという似た菓子あって、エは「そして」という意味だから、「不細工でおいしい」という名前になるねん。材料がシンプルなだけに、他にもイタリア各地に似たような菓子があるんだとか。まーどっちにしても不細工ってことには変わりないけど。
次は「貴婦人のキス」というお菓子を紹介するでー。
M:キッ、キスー!? そりゃまた興味ありありです。
S:まぁまぁそう興奮するなって。バーチ・ディ・ダーマっていうねんけど、バーチが「キス」で、ダーマが「貴婦人」っていう意味。小さいアーモンド風味のクッキーでチョコレートを挟んだ一口サイズのお菓子。「チュッとキスをする時のように、小さくすぼめた口でも食べられるから」とか「2つのクッキーがキスをしているように見えるから」とか言われてるねん。もともとは北イタリアのピエモンテ州出身やったけど、今ではイタリア全土のお菓子屋で売られてるねん。
M:へー。なるほどね。イタリア人ってネーミングがおしゃれやねー。
S:イタリアのお菓子って材料や作り方を見てもわかるよーにシンプルで焼きっぱなしでOKなものが多いから、お菓子屋さんで買って持って帰ることもあるけど、家庭でもよく作るねんて。で、マンマの手によってその家独自のアレンジなんかがされちゃうってわけ。
M:とゆーことは料理同様、家庭の数だけお菓子が存在するって言っても過言ではないんやね。
S:そうなるね。バニラやシナモンで香りをつけようとか、うちは松の実、うちはアーモンドとかっていう具合で。では3つめのお菓子にいきますか。
M:待ってましたー。
S:次は焼き菓子ではなく、冷やし固めたものを紹介するでー。これもロンバルディーア州のお菓子で、サラーメ・ディ・チョッコラート(チョコレートのサラミ)という名前がついてるねん。ゼラチンを入れたり、加熱したりせずに、材料を混ぜ合わせて冷蔵庫に入れるだけのこれまたシンプルな、でもとってもおいしいお菓子。
M:お菓子なのに「サラミ」!? 塩っ辛いの??
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サラーメ・ディ・チョッコラート |
S:そうじゃなくて・・・。これも見た目からこの名前がついてん。作り方はバターと砂糖、エスプレッソコーヒー、たっぷりのココアパウダーを混ぜ合わせて、小さく割ったクッキーを入れて筒状にして冷やし固めるだけ。カットすると、クッキーの部分が本物のサラミの脂身に見えるってわけ。作ってからそう見えたのか、そう見せようと思って作ったのかはよー分からんけど、まさに見たまんまってカンジやで。
M:はー。納得。これも地方や家庭によってバリエーションがあるんかな!?
S:そうやねん。サルーミ(食肉加工品)で有名な中部イタリアにあるのはもちろん、南のシチリアにも存在するねんて。ココアパウダーじゃなくチョコレートを使ったり、エスプレッソを入れなかったり、ナッツや好みのリキュールを入れたりバリエーションはあるみたいやね。衝撃なのは、「辛いサラーメ・ディ・チョッコラート」と銘打った唐辛子入りのもの!! 作ってみたいような、でも食べたくないような・・・
M:へー。なんかもっともっといろんなお菓子が知りたくなってきたわー。
S:今回はおもしろネーミングシリーズでお送りしました! 手間のかかるお菓子ももちろんおいしいけど、シンプルな材料で作り方が簡単なお菓子だって負けへんくらいおいしいでー! だからこそ長く人々から愛され続けているんやろね。シンプル・イズ・ある意味ベスト! たまにはそんな事にも思いを巡らしながら、おいしいお菓子たちをこれからも食べ続けるでー。
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