タイ・バンコク「デュシタニ・カレッジ」ラーメン講座実施レポート
辻調理師専門学校が教育連携を結ぶタイ・バンコクのDusit Thani College(デュシタニ・カレッジ)では、本格的な日本料理を学べるコースが設置されており、本校から毎年教員を派遣しています。今回はその中の大人気講座「ラーメン」の講習・実習を担当された、中国料理の西浜康之先生が一足早く帰国されたので、レポートを紹介します。
この講座を紹介する前に、タイのラーメン事情についてお話ししておきましょう。特にバンコクには日本のラーメン店が多く進出しており、豚骨ラーメンが一番の人気とのこと。日常の味付けを見ても、どうやらタイの人は"濃い味ごのみ"なんですね。タイにも小麦麺の料理はありますが、日本のラーメンはそれとは区別されてそのまま「ラーメン」と呼ばれ、中国料理ではなく、日本料理の一種として認識されているそうです。
さて本講座は、2日間でラーメンの基本を集中的に学ぶプログラムとなっており、今年度は計2回開講しました。各回16名の学生は、年齢層もスキルのレベルも様々ですが、3分の1がラーメン店開業を目指すほどの熱心な人たちです。授業も非常に白熱したものになりました。
[1日目・AM] スープの取り方を学ぶ
まずはスープの取り方から。魚介、豚骨、鶏白湯(鶏のみ使用)、鶏ガラ(豚の背骨と丸鶏も使用)の4種類を、西浜先生が実際に作ります。学生たちの素晴らしいところは、作業中もどんどん質問が飛んでくるところ。先生も即座に、答えをかみ砕いて解説します。このやり取りによってさらに学びが定着し、授業も活気づいていくのが見て取れます。
[1日目・PM] 実際にスープを取り、料理を仕上げる
午前中に学んだスープの作り方を、学生が実践するのが午後の授業です。自ら取ったスープを使って、担々麺を仕上げます。そしてなんと、餃子も作れる授業構成...(羨ましい!)。餃子の皮ののばし方、包み方、そしてその速さと美しい仕上がりに思わず動画で記録する学生も。餃子は、焼き餃子にして仕上げました。
[2日目・AM] トッピング各種の作り方を学ぶ
2日目の午前は、煮豚、煮卵、メンマなど、ラーメンの基本的なトッピングの作り方を学びます。ちなみに材料はすべて現地調達で揃えたものです。というのは、日本から持っていった材料で作ったとして、実際タイでは手に入らない・味が違うとなると本末転倒だから。副材料(ラー油など)も、現地の材料で作られたものです。現地調達のトラブルのお話は、また別の機会に...笑。
[2日目・PM] ラーメン4種を作る
午後の授業では、醤油ラーメン、味噌ラーメン、豚骨ラーメン、つけ麺の4種類を仕上げます。ここで面白いのが、前日学んだスープの"組み合わせ"を学べるところ。魚介スープ+豚骨スープは? そしてその配合の幅は? 先生の解説は続きます。「一人ひとり顔が違うのと同じで、味覚も千差万別。味のストライクゾーンは自分でつかみましょう」。答えが一つしかない教え方は、単純明快であっても、学ぶ側にとって良いことばかりではありません。タイ人の学生は、先生の解説を聞いたうえで自ら調合を体験し、納得の味を一つ見つけるという貴重な体験ができたようです。
2日間のハードな授業をこなし、無事修了証を手にした受講生と記念撮影
ラーメン講座を振り返って
海外ならではの注意点として、宗教的戒律により食の禁忌を持つ方がいることが挙げられます。このラーメン講座では、あらかじめ豚肉を使うと告知し、念には念を入れて了承の確認も取っているのですが、それでも授業中に「実は食べられません...」という人がいることも。完全なハラルは無理ですが、西浜先生は、豚肉を使わず作れるラーメンも準備していました。このあたりは様々なハプニングに対処してきた先生の長年の経験があってこそ。表には出ませんが、さすがと思わせるワンシーンでした。
本講座は西浜先生を主担当として、日本料理の松島愛先生、新谷祐貴先生がサブ担当を務めました。スムーズに授業を進めることができたのは、デュシタニ・カレッジの有志の学生さんたちが、片付けなど手が回らない部分を、一生懸命サポートしてくださったことが大きいです。お礼を兼ねてまかない料理をふるまい、一緒に食卓を囲みました。ありがとうございました。
実はこの講座、希望者多数で応募を締め切ったそうで...。おそらく来年もまた、デュシタニ・カレッジを訪れることになりそうです。今からとても楽しみです!