STEAM教育チャレンジ(7)~辻製菓専門学校 製菓技術マネジメント学科2年生・ブーランジェクラス~
辻調理師専門学校は東京学芸大学と連携してSTEAM教育に取り組んでいます。
STEAM教育チャレンジ(1)~(6)は、東京校の取り組みでしたが、今回は2023年11月16日に大阪の辻製菓専門学校 製菓技術マネジメント学科2年生・ブーランジェクラスの「高度製菓理論」の授業にて行った取組みをご紹介します。
辻調では数年前より、学生が主体的に考え、能動的に学ぶ『アクティブラーニング』を取り入れており、その一環としてブーランジェクラスではクロワッサンをテーマとして、「バターと生地の層を、意図的に増やす、または減らすことで焼き上がったクロワッサンにどのような違いが表れるのか?」という問いを投げかけ、学生たちは自ら考え結果を予想します。その後実際に層の数を変えたクロワッサンを見て、食べて検証を行うことで、層数の違いがクロワッサンに与えることを知ることで、商品開発能力や問題解決能力を高めることを目的とした授業を行っています。
『STEAM教育』の最初のステップは「自分(たち)のありたい姿」を映し出す。ということから、今回はそのクロワッサンの授業に【理想のクロワッサン】というテーマを設定した『STEAM教育』を取り入れました。まず、授業の事前学習として授業の約1カ月前に、『世の中に販売されているクロワッサンから自分の理想に近いものを見つけ、それをより自分の理想に近づけるためにどこを改善したいか。』という課題を提示しました。
<事前課題>
学生は自らいろいろなお店へ足を運び、実際に食べ、自分の理想に近いクロワッサンを見つけてきました。
そして、いよいよ授業当日です。
事前課題をもとに、各自が考えた【理想のクロワッサン】の特徴が、似ている人同士でグループを作り、グループワークを開始します。
<グループワークの様子>
グループワークのルールはただ一つ、『他人の意見を否定しない』。
否定しないことでお互い自分の考えが言いやすくなり、いろいろな考えが飛び交いました。
最初に議論するのは【理想のクロワッサン】とは何か?
同じグループの中でも、当然人によって違う考えを持っています。一人ひとりが、自分の意見を伝え合い、共感し、考えを深めながら、グループとしての理想のクロワッサンをまとめあげていきます。その結果、サクサクがいい、フワフワがいい、バターの香りが強いものがいい、発酵の香りが強いものがいいなど、グループごとにいろいろな【理想のクロワッサン】が出てきました。
さて次は【問題定義】の時間です。
自分たちのグループの【理想のクロワッサン】を他のグループに伝え、「理想」と「現実」との間にあるギャップから考えられる問題点を出してもらいます。例えば、経費や時間に制限があると仮定すれば、原価が高過ぎる、1日の就業時間内に完成しない、一般的ではない特徴があれば、客層がかなり狭くなるなど、様々な厳しい意見が飛び交います。
最後に 【実現可能な理想のクロワッサン】を考えるグループワークです。問題をどうすれば解決できるかを考え、理想を実現可能なものへと進化させていきます。小麦粉をこれに変えれば・・・砂糖の量をこうすれば・・・多くの人に受け入れてもらうためには・・・など、今まで学んだことを総動員し、みんな必死に「理想」と「現実」の両立を目指してワークシートを作り上げていきます。
そしていよいよ【実現可能な理想のクロワッサン】のお披露目です。
<完成したワークシート>
各グループ完成したワークシートをプレゼンします。
学生は自分たちの力で【理想のクロワッサン】のデッサンとなるワークシートを完成させることができ、達成感にあふれた表情をしていました。もちろん、ものづくりはデッサンで終わるものではありません。【理想のクロワッサン】をワークシート上から形あるものにするためには、実際にクロワッサンを作り、試食を繰り返し、さらなる改善を行う必要があります。今回の達成感を忘れず、いつか今回の【理想のクロワッサン】を形にし、世に出してくれることを楽しみにしています。
自分の理想を思い描き、今度はそれをどうすれば実現可能かを考えて、それを形にする。食の世界で、また実社会に出てから必要となるプロセスです。「今回の授業が将来新商品の開発をする時に役立ってくれるといいな。」そんなことを感じた授業となりました。今後も実社会に出てから役立つような授業を進めていきたいと思います。
~プロフィール~
辻製菓専門学校 製パン担当
中村 紘尉(なかむら ひろやす)
パンと釣りが大好きです!パン屋さんだけではなくスーパーやコンビニのパンも新商品は全部買って一度は食べてみています。パンのことなら何時間でも(笑)話せるので、いつでも質問に来てくださいね!