松元 ゆり香さん 研修先:Château d'Adomenil(シャトー・ダドメニル)
松元ゆり香 MATSUMOTO YURIKA
2018年春コース レクレール校 製菓研究課程
出身校 三重・セントヨゼフ女子学園高校
愛知・名古屋文理大学短期大学部 食物栄養学科 製菓専攻
辻調グループ出身校 エコール 辻 大阪 辻製菓マスターカレッジ
研修先 Château d'Adomenil(シャトー・ダドメニル)
私の研修先は、ロレーヌ地方にあるホテルレストランChâteau d'adomenilです。ミシュランガイドでは1ツ星を獲得しています。緑の映える自然豊かな場所にあり、ホテルの敷地内にある庭もとても綺麗です。レストランの外装はお城を改装した場所で内装もとても豪華です。食事に来られるお客様は家族や団体、小さなお子様からお年寄りの方まで年齢層は幅広く、記念日は誕生日のお祝いをするお客様もとても多いです。
毎日の仕事の最初はプティ・フールとして出されるお皿の準備から始めます。パート・ド・フリュイやショコラ、ボンボンを盛り付けます。それから先輩に今日する仕事内容を聞いて、準備して初める、という感じでデセールとして出すガトーの仕込みをします。私の担当する仕込みは、飴細工、フルーツカット、メレンゲを転写シートに薄く伸ばす仕事をはじめ多種多様です。特に飴細工は大きさや形を揃えるのが難しく今でも苦戦しますが、シェフや他の方からも褒めて貰えるので今では好きな仕事です。研修当初から現在までの仕事内容はあまり変わっていませんが、今ではガトーの完成度も上がって、飴細工とメレンゲを扱う仕事は任されるようになりました。
シェフをはじめスタッフはみな優しい方ばかりです。シェフはいつもワンちゃんを連れています。同僚はふざけ合ったり、冗談も多かったり...良い意味で騒がしいですが、レストランの営業になるとすぐ切り替わって真剣になります。仕事が終わるとまたすぐにおふざけが始まります。その流れ玉を受けることもあります(笑)。
パティスリーの研修生は私だけで、先輩は2人います。一緒に仕込みをすることもあって、最近ではちょっとした雑談もしたり、今でもフランス語を話すときは冷や汗かきますが、少しでも仕事以外の会話が出来るのは嬉しいです。あと、どんな人でも恋愛話は盛り上がります。スーシェフは日本人の友人がいるらしく少し日本語が話せてよく絡んできます。日本語を教えると喜びます。
住居はラボから徒歩数十秒のところに寮があります。2人部屋に一人で生活しています。食事はレストランの賄いの残りやパンが食べられて、洗濯もホテルの洗濯室がいつでも使えるので生活に困ることは無いです。
地元の町はリュネビルLunévilleで、中心まではお店からは田舎道を歩いて1時間弱かかります。ここに来てからは町や駅まで行くのに歩くので体力も随分つきました。大きなスーパーがあってよくそこに行き、生活用品やお菓子を買っています。
大きな都市に行くにはとてもアクセスがいいですが、駅からシャトーに帰るまで1時間程かかる上、住宅地から林道に入ると外灯が無くなるので夕暮れ前に帰ることが前提です。以前にスマホのライトで道を照らしながら歩いていたらシャトーのお隣の牧場で飼っているワンちゃんに吠えられながら真っ暗な中めちゃくちゃ追いかけられました。全力で逃げました(汗)。
最寄り駅のリュネビルから東へ1時間でアルザス地方最大の街ストラスブールにも行けます。また、西に20分のところにナンシーNancyという大きな街があります。パティスリーも沢山あるので食べ歩きをしたり、先日はショコラトリーを巡って沢山ショコラを買いました。
また、ナンシーからローカル線で1時間弱でマドレーヌ発祥の地コメルシー、ナンシーから北へ行く電車で30分行くとフランス最古の街の1つと言われるメッスにも行くことができます。メッスは歴史的な建物も多く、フランス校の外来講習で来てくださったMOFのシェフのお店「フレッソンPâtisserie Fresson」さんのサロン・ド・テがあります。
休みの日はそんなロレーヌやアルザスの街に行き友達とあったり、シャトーの自然に癒やされながらのんびりしたりします。晴れた日の夜は星空がとても綺麗です。
研修中はコミュニケーションの大切さを痛感しています。とにかく言われたことを瞬時に理解して行動する!アンボワイエ(お皿を仕上げてテーブルに出す合図)時や、忙しいときに指示が飛んできて、理解できずにモタモタしているともちろんその時間は無駄になるし、先輩のリズムも崩すことになります。自分から伝えることも大事ですが、ちゃんと聞いて理解すること、1秒でも早く動くこと、先輩が次に言うであろうこと必要になるものを、自分から先取りして声をかけていきます。
特にパティシエの人数は最大で3人、団体や何十人のお客様相手だとキュイジニエ(料理人)も手伝います。常にコミュニケーションを取らないと上手く回せないし、特別なデセール、例えばクリスマスや大晦日のときは、手伝いに来たキュイジニエにこちらからどのように盛り付けをするのかを伝えなければならない場面もありました。点と点を線で繋いでいくようなイメージの連携プレーです。
特にシェフの考えるデセールはまさに発想の勝利と言うようなクリエイティブなデセールが多く、基本生地やクリームをどのように使うのか、何と合わせて盛り付けるのか、組み合わせが自在で面白くて勉強になります。
フランス校での実習は学生同士では日本語のコミュニケーションが殆どだと思います。フランス人とのコミュニケーションは身振り手振りだけでもなんとかなると言えば、確かになんとかなるかもしれません。ですが、自分が意識していれば、日頃からフランス語に触れられる機会はたくさんありますし、フランス語はできたほうが絶対にいいです。研修に出て私は自己満足の仕事はしたくないと強く思うようになりました。ちゃんとシェフの考えを理解して、笑顔に応えられるようにありたいと思います。そう思えたのもここのシェフが本当に優しくてスタッフを大切にしてくれるからです。
研修も残り僅かですが、毎日緊張しながらもコミュニケーションの大事さを忘れずに確実に仕事をこなしていきたいです。帰国してからはパティシエとして働きたいですが、人に一声かけることも勇気がいる人見知りなので、ヴァンドゥーズ(販売員)やサーヴィスをする機会があれば、色んな人と関わって苦手意識を無くしていきたいと思っています。また、様々な目線からガトーを作ったり見たり食べたりしてこれからもずっと勉強していきたいです。