佐原 茜さん 研修先:「Restaurant LE BEC AU CAUCHOIS」
佐原 茜さん
SAHARA Akane
東京都立八王子拓真高校 卒業
[エコール 辻 東京] 辻調理技術マネジメントカレッジ 卒業
2012年春コース レクレール校 フランス料理研究課程
研修先:「Restaurant LE BEC AU CAUCHOIS」
今回のレポートは、パリの北、ノルマンディー地方のヴァルモンという町にある
「レストラン ル・ベック・オ・コショワ Restaurant LE BEC AU CAUCHOIS」の佐原さんです。
シェフのカイエ氏(一番左)は2010年にゴー・ミヨの「今年の若き才能」に選ばれると、
2011年にはM.O.F.を受賞、そして2012年にはついに1ツ星を獲得した注目のシェフです。
これが私の研修先のファミリーです!
「まるで映画のような美しい町です」
レストランのあるヴァルモンValmontは本当にのどかなところです。
レストランの裏には大きな池があり、お隣さんは農家なので牛や馬、鶏がいます。
周囲にはこれといって何もなく、大自然の中にぽつんと存在しています。
なので、夜にはたくさんの星が見え、朝は鶏の声で起きています。本当にそんなところです(笑)。
(左)ここからがヴァルモンの町。自然にあふれた美しい町です。
(右)お店の裏にある池。ここまで壮大な風景は日本では体験できないですね。
レストランから町の中心地までは歩いて15分くらいです。
小さな町ですが「シャトー・ド・ヴァルモン」というお城があります。
きれいな水が流れる水路もあって、それに沿って林道もあるので、たまに散歩をしたりしています。
こんな何もない田舎でも、有名なレストランがあれば、そこで食事をするためにたくさんの人がやってくる、
それがフランスなんだなあと改めて実感します。
(左)この林道は私のお気に入りの散歩道です。
(右)離れたところから見たシャトー・ド・ヴァルモンもステキです。
「こだわりたっぷりの小さなホテルレストラン」
ホテル・レストランですが、お店の規模はそれほど大きくなく、客室も5つと少ないです。
でも部屋ごとに基調の色が違って、どれもすごくかわいいんです。センスがステキですよね。
お店の外にはシェフご自慢のお庭があり、
ローリエやタイムなどのハーブ類から、ブレットやカボチャなどのお野菜までたくさん植わっています。
収穫した野菜は、もちろんレストランで提供しています。
店内は2つのフロアに最大42席、どちらも白をベースにした落ち着いた雰囲気で、
各テーブルの蝋燭の明かりがとてもきれいです。
お客さんはご夫婦が多く、結婚記念日やお誕生日、ヴァカンスなどでいらっしゃるようです。
(左)規模はそれほど大きくないですが、かわいいお店です。
(右)赤と白を基調にした清潔感のある店内
私は最初はアペリティフ(食前酒)と一緒に出すカナッペの仕込みをさせてもらっていました。
そこから少しずつ、アミューズ(お通し)やガル二(付け合わせ)をやらせてもらって、
今は魚を捌いたり、ジビエ(狩猟で獲れた野生の鳥獣)の処理などをさせてもらっています。
段階的にいろいろさせてもらえるので、とても勉強になります。
盛り付けの細かい心遣いにいつも感心します。
「本当の家族のようなシェフとその家族」
シェフは強面で目力が強いので、見た目の印象は少し恐いかもしれないです。
でも、本当はとても親切で優しく、茶目っ気のある素敵なシェフなのです。
スーシェフ(セカンドシェフ)、アプランティ(見習い)、パティシエール、マダム、
セルヴィスが2人、プロンジュ、バレイユ(掃除担当)の総勢9人のスタッフと
一緒にお仕事をさせてもらっています。
みんな優しくて、ユニークな楽しい人たちです。
(左)見た目はちょっと厳ついですが、子煩悩なやさしいパパです。
(右)シェフはM.O.F(フランス最優秀職人章)受賞者!襟のトリコロールが似合ってます!
シェフがいろいろなところに連れて行ってくれます。
それはもう毎週のように。
海や大きなショッピングセンター、シェフやマダムのご実家、シェフの見習い時代のレストラン、
シェフがひいきにしているクレソン栽培農家、
シェフが外来授業をする調理師学校にも連れて行ってもらいました。
(左)クレソンの畑なんて初めて見ました!シェフ、貴重な体験をありがとう!
(右)どこに行っても嬉しくて自然に笑顔が出ちゃいます。
ちなみにノエル(クリスマス)はマダムのご実家でのパーティーにご招待していただきました。
そういったお出掛けのない日は水路沿いの林道でのんびりしたり、
お庭仕事の手伝いやお子さんたちのお世話なんかをしています。
本場フランスの家庭のクリスマスが体験できて感激です!
住居は厨房の真上です。一人部屋です。
隣にもう一つ部屋があり、そこは期間限定でやってくる別のフランス人研修生が使います。
部屋には出入口とは別にもう一つドアがあって、
物置と化した通路を抜けた先はシェフ家族の住居に繋がっています。
よく長女のエリーヌがそこを通って部屋に遊びに来たりします。
休日の食事のアナウンスも彼女のお仕事です。
朝食はシェフが毎週木曜日に行く仕入れの時に一緒にパンやジュースを買ってきてくれます。
昼、夜はペルソネル(まかない)がありますし、休みの日の食事はシェフ家族と一緒に食べます。
洗濯もマダムがしてくれますし、ネットも自室で使えます。
なので、お金はほとんどかかりません。
シャンプーやティッシュ、ちょっとしたおやつくらいしか買う必要がないので、
そういう意味では恵まれていると思います。
(左)私の部屋です。シェフの家とつながっているので安心です。
(右)長女のエリーヌとは大の仲良し。本当に家族のように過ごしています。
「考え方が前向きに!研修の成果です」
このお店では厨房内に2つだけ客席が設けてあり、
お客さんが料理しているところを見られるようになっています。
最近は厨房で特別なお客さまをおもてなしする店も多くなっているようですが、ここもそのひとつです。
おかげで今まで以上に常にきれいで無駄のない仕事をすることを意識するようになりました。
日本人の研修生はやはり珍しいようで、話しかけられたりじっと見られることが多く、
シャトーの頃以上に緊張します。
初めのころはできるだけ見えない所で仕事をしていたりしました。
ですが、今は仕込みの時でも誰かに見られてることを意識して仕事をすることで、
自信を持って厨房に立っています。
(左)いつもピカピカの厨房。
(右)よく「シェフズ・ターブル」といわれる厨房内の特別席。
正直なところ研修に出る前は自信がなく、ただただ怖かったです。
ですが、今はとても楽しくやっています。
今しかできない経験なんだ!と、ある意味開き直って、日々を大切に、
少しでも納得のいく自分に成長できるように頑張っています。
研修に出て本当によかったと思っています。
研修で学んだ大事なこと。 それは、初心を忘れず向上心を持って日々を大切に過ごすことです!