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La Chèvre d'Or (ラ・シェーブル・ドール)

フランス校 食べ歩き日記

2024.10.07

 今回紹介するレストランは、ミシュランガイドで二ツ星を獲得しているLa Chèvre d'Or (ラ・シェーブル・ドール)です。(以下の文章からレストラン名をシェーブル・ドールと記載。)

 シェーブル・ドールは、南仏のニースから車で約30分の場所にある鷲の巣村として名高い Èze(エズ)という村にあります。鷲の巣村とは、鷲の巣が卵や雛を守るために山や崖の頂上や他の動物が近寄れない場所にある様子と村の様子が似ているためそのように呼ばれています。南仏のコート・ダジュールやプロヴァンス地方などに多数の鷲の巣村があり、それらの村の景観はとても素晴らしく、観光地としても有名になっています。

エズ村は海岸から数百メートルしか離れておらず、標高は約400mあります。村の頂上にある熱帯植物園から見る、海と空がどこまでも続いていく壮大な景色はとても鮮明に記憶に残っています。


 ホテル入り口の門
 そんなエズ村の高級ホテルChâteau de La Chèvre d'Or(シャトー・ドゥ・ラ・シェーブル・ドール)内にあるレストランやバー4店のうちの一つです。地中海に面した断崖にまるで隠れ家かのように造られてあり、地中海の自然や光といった素晴らしい景観が一望できるレストランになっています。



 ホテルまでの通路



 エントランス

 

 レストランの入り口と室内



 レストランからの展望



 シェーブル・ドール(黄金の山羊)の像

 そこでシェフを務められているのがTom MEYER(トム・メイヤー)氏です。
 ジュラ地方出身の彼は父親がレストラン経営者であった為、幼いころから料理に対し興味を持ち、研鑽を積んだのち、ヴァランスのレストラン・ピックでスー・シェフを務め、メゾン・ラムロワーズといった名立たるレストランで活躍されました。2015年に現在のシェーブル・ドールで働き始めスー・シェフとして活躍します。2016年にはスイスのオテル・ド・ヴィルでシェフを務め、2019年にはボキューズ・ドールのフランス代表ファイナリストにも選ばれています。そして2023年にはM.O.Fを受賞。
 2024年4月に前任のアルノー・フェイ氏の後を引き継ぎ、シェーブル・ドールに戻り総料理長を務められています。現在まだ31歳という若さであり、今後もさらなる活躍が期待されている方です。

 今回レストランを訪れた日は幸いなことに快晴でレストランからの景色も素晴らしく、そんな非日常の空間で最初にアペリティフ(食前酒)を頂きました。



『Rémi Leroy NV ROSÉ Brut Nature Champagne』
 シャルドネとピノ・ノワールで造られた綺麗な琥珀色のシャンパーニュ・ロゼです。フレッシュな柑橘系の風味とクリーミーさ、余韻がしっかりと残る芳香が特徴です。

 最初にアミューズ・ブーシュ(一口大のおつまみ)をいただきました。

 1つ目はトマトの爽やかなグラニテに細かく切ったピスタチオとディルを振りかけています。2つ目は海藻のピューレとバターを合わせたムースの上に柑橘風味のブラン・マンジェがのせてあります。3つ目はシェーブルチーズのムースのタルトレットの上にマージョラムの香りをつけたスイカのコンフィとオクサリスという香草を飾っています。4つ目はしっかりと乾燥させたサーモンマリネの燻製の上にパン生地を揚げたものとシトロンキャビア、レモンのジュレ、ハーブを飾っています。
 いずれもさっぱりとした爽やかさもありつつ、食材の旨味も感じられる料理で、これから出てくるお皿がさらに楽しみになるものでした。



 メニューはSentier du littoral(海岸沿いの小道)といわれる140€で4品構成のものと、Horizon(水平線)といわれる220€で6品構成の2種類があり、私たちは6品構成のHorizonというメニューにしました。

先ずは冷たいオードブルから。

『Le mulet de Méditerranée』

 地中海で獲れたボラを使った一品で、少し熟成させて旨味を凝縮させたボラの下には小えびの香ばしいソースが広がり、その上にバジルのピストゥと小えびのオイルを使ってまるで水彩画かのように盛りつけられていました。小えびの濃厚な味とバジルの爽やかな香り、ボラの旨味がバランスよく、綺麗でありながらしっかりとインパクトのある一皿でした。

 もう一皿冷たいオードブルが続きます。

『La tomate cerise』



 プティトマトとメロンを使った一品です。
 昆布を使ったタプナードの上に、フレッシュのメロン、プティトマト、セロリ、ヴェルヴェンヌを飾り、仕上げにヴェルヴェンヌ、ミルト(銀梅花)、スベリヒユの葉の香りをつけた冷たいスープを注いだ一品。
 フレッシュな食材やハーブの香りが心地よい一品で、メロンとプティトマトの甘みを昆布のタプナードの塩気がうまく引き立てていました。

続いては鰯(いわし)を使った温かいオードブルです。

『La sardine』

 提供直前に客席でガルム(いわしを使った魚醤)を鰯の表面に塗って直火で炙りミ・キュイ(半生)の状態にします。
 焼いた瞬間は日本の焼き魚のような香りが食欲をそそります。つけ合わせには火を通したさやいんげん、ピスタチオ、抹茶のピューレ、ソースには抹茶とさやいんげんを使用しており、和風な香りが漂っていました。

オードブルに合わせて白ワインもいただきました。

『Quintessence Blanc(Cru Classé) Rimauresq 2020』
 コート・ド・プロヴァンス地方の白ワインで品種はヴェルメンティーノ。
 まろやかでみずみずしいワイン。ミネラル感とフレッシュな感じがさっぱりとした前菜や焼いた鰯に合っていました。

料理と共にパンも2種類提供されました。

 トマトと乾燥オリーブを練りこんだふわっとした生地を、クロワッサンのようなサクサクとした生地で包んで焼き上げたもの。


 ライ麦を使ったパン。


 ドゥミ・セルのバターにレモンペッパーとバジルオイルを合わせたもの。

 続いては魚料理です。

『La pêche du jour』

 レストラン沿岸で獲れた魚を使用しており、今回はカジキマグロを使った料理でした。
 ゆっくりとコンフィにしてあるので、ねっとりとした他にはない食感のカジキマグロに仕上がっています。上にはオリーブのコンフィ、セベット、タジャスカオリーブ、コリアンダシード、ピンクペッパー、ハーブをいくつか飾りつけられており、コリアンダーの香りをしっかりと含んだソース・ヴェルモットと合わせて食べると、地中海の食材とエスニック料理が混ざったような複雑ながらも上品な味わいとなっていました。

 最後にメインの肉料理です。

『Le veau』


 リ・ド・ヴォを使った料理です。リ・ド・ヴォは表面に小麦粉を付けて焼きあげています。表面はカリッとした食感で、中はリ・ド・ヴォらしいまったりとしたミルキーな食感に仕上がっていました。周りにはトマトコンフィ、コーヒーパウダー、シュローのジュレ、ソースはジュ・ド・ヴォにコーヒーの香りをつけたものです。つけ合わせはイチジクの葉の上にラードのような油を練りこんだほんのり甘い生地、その中にはスパイスを効かせた子牛のミートソース、イチジクの葉を使ったピストゥ、フロマージュ・ブランが入っています。エスニック料理のようなエキゾチックなつけ合わせとリ・ド・ヴォの食感、コーヒーの香りが調和していて、心地よいハーモニーを味わえる料理となっていました。

 メインの料理に合わせてロゼワインをいただきました。

 『Château Crémade Palette Rosé 2021』

 プロヴァンスのロゼワインで品種はグルナッシュ、シラー、ムールヴェードルで、華やかでエレガントな香りと同時にフルーティーさが楽しめて今回の肉料理にも合うワインでした。
 追加でフロマージュも用意していただき、ワゴンでたくさんのチーズが運ばれてきました。


 私は羊のチーズにピマン・デスプレットを練りこんだもの、ブリヤ・サヴァランにトリュフを挟んだものとエポワスを選びました。またチーズをさらに美味しく食べるためのコンディマン(薬味)として、南仏ならではのブラックオリーブのコンフィチュールをいただきました。


 続いてデザートをいただきます。
 まずアヴァン・デセールが運ばれてきました。

 お皿の底にはリ(米)スフレ、リュバーブのコンポート、その上にヨーグルトのムースが絞ってあり、香りづけに黒こしょうが振られています。その上にリュバーブのジュレが被せてあり、甘みと酸味のバランスがとれていて重すぎることなく食べられました。次のメインのデセールも期待出来る一品でした。

最後にコースの締めくくりのデセールです。

『La vanille Mexicaine』

 メインのデセールにはメキシコ産のバニラをふんだんに使用したデセールです。
 サクサクとした食感のサブレ生地と、シャンパーニュを使ったグラニテが底に盛りつけてあり、上にはバニラたっぷりのクレーム・グラッセ、仕上げにパリパリとした歯ごたえのアルレットを飾っています。一口食べると、バニラの風味が口いっぱいに広がります!また、アルレットとサブレ生地の食感が楽しく、最後にシャンパーニュの香りですっきりとした後味になり、最後の締めとして相応しいデセールでした。

 帰りに厨房内も見せていただきました。



 しっかりと掃除がされている厨房でスタッフの方達も綺麗な作業で仕込みをされていました。

 地中海が見渡せる素晴らしいロケーションで水平線を眺めながらプロヴァンスの風を感じられる彩り豊かな美味しい料理やデザート、そして本当の意味でのヴァカンスを味わうことができるかもしれない、シェーブル・ドールで、ゆったりとした時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

『La Chèvre d'Or』

Rue de Barri, 06360, Eze Village-France
Tel : +33(0)4 92 10 66 66
HP : https://www.chevredor.fr/com