調理外来講師 M. Patrick HENRIROUX(パトリック・アンリルー氏)Restaurant LA PYRAMIDE(ラ・ピラミッド)
今回の外来講師は、レストラン「ラ・ピラミッド」のシェフ、パトリック・アンリルー氏です。
リヨンから70kmほど南に下ったVienne(ヴィエンヌ)という街にあり、「フランス料理を勉強している人なら
誰でも知っている」といっても過言ではないほど有名な1822年から続く老舗レストランです。
フランス料理の巨匠フェルナン・ポワン氏が腕を振るい、氏が亡くなった後もマダム・ポワンが店の看板を
守り続けていました。当校の前校長・辻静雄もこのレストランでフランス料理の薫陶を受けました。
1986年にマダムが逝去した後、衰退・閉店の危機にあったラ・ピラミッドですが、31歳の若さですでに
天才料理人と評判だったアンリルー氏が1989年にシェフに就任し、翌年に1つ星、1992年には2ツ星を
獲得しました。
アンリルー氏は、レストランでの料理を「ア・ラ・ミニュット(料理を仕上げてすぐ提供すること)」が
大切だと考え、マダム・ポワンから引き継いだという「レストランの現代風改革」の姿勢を守り続けています。
緊張した様子で挨拶する研究生。
講習中にアンリルー氏から、大切な3つのポイントについて話がありました。
① 目で見る couleur(クルール) 色彩
② 鼻で感じる odeur(オドゥール) 香り
③ 口で感じる saveur(サヴゥール)風味
これ以外にも、固い、柔らかい、クリスピーなどの食感、酸味を和らげる甘味の使い方なども大切と
言われていました。
そして、「ア・ラ・ミニュット」で料理を提供するためには、短時間で仕上げられるようなに使うパーツの仕込みをしっかり行うことが重要だと言われていました。これからムニュースペショーを考える学生にとっては、料理の考え方、作業の目的、調理作業のノウハウを再確認できたのでないかと思います。
そして最後に「私は調理人だが、いつも自分がお客様になったときに喜ぶような料理を作ろうと心がけている。お客様の事を考えなければ、どんな料理をしていいのか私は分からない」と言われていました。
常にオーナー、シェフ、調理人それぞれの立場でお客様のことを考えて料理を作っていると語られ、コアールシェフがいつも言うこととを重なっていることを学生は感じてくれていたと思います。
☆今回披露していただいた料理2品
Tarte de Moules AOP du Mont Saint Michel. Compotée Oignons à la Sarriette, Courgettes Piments Espelette Citron.Huile Fruitée à l'Ail Frit.
南へ向かう中継点にあたる街らしく、地中海を意識した一皿。サフラン入りの口どけの良いクッキー生地、甘味と酸味・食感を残した玉ねぎのコンポート、生のズッキーニのマリネ、ブッロコリーとムール貝を合わせて炒めたものを重ねてタルト仕立てにします。棒状に切ったニンニクを色付くまで炒め、煮詰めたバルサミコ酢、
エシャロット、オリーブ油、タピオカなどを混ぜたソースを添えます。香ばしい香りとはっきりした味のソースが、タピオカを入ることで味を丸くし、より食べやすくしています。付け合わせのナスは、野菜の皮の部分にはしっかりとした味があるので、微塵切りにした皮を加えピュレにします。また甘く煮たキンカンを添えて
アクセントにしています。
アンリルー氏の指示で、講習の助手をする研究生2人。
Champignons sauvages en émulsion de riz, mascarpone et café Yrgasheffe « moka bio d'Ethiopie »
秋らしくセップやキノコをたくさん使った一皿。様々な季節のキノコ、ソリレスと言われる鶏肉の柔らかな
部位、アーティチョークのソテ、ヘーゼルナッツを盛り合わせ、バスマティ米(香り米と言われる長粒米の
一種。香りが強い)のでんぷんを利用し、キノコ、マスカルポーネを合わせ、コーヒーの風味を付けた泡で
全体を覆い見えなくします。こうすることで、お客様には「何が入っているのだろう?」と思わせる事が
出来ます。コーヒーは酸味ではなく、甘味のある物を使います。
シェフを囲んで、研究生全員で記念写真。