調理外来講習 M.François MOUREAUX(フランソワ・ムロー氏)/ Restaurant AZIMUT(アジムット)/ LA POUTRE(ラ・プートル)
フランスサヴォワ地方のクールシュヴェルCOURCHEVELにあるレストラン「アジムット」とジュラ地方のボンリューBONLIEUにあるホテルレストラン「ラ・プートル」のシェフM. François MOUREAUX(フランソワ・ムロー)氏にお越しいただきました。
季節に応じて2ヵ所のレストランを交互に営業されています。冬から春の時期は多くのスキー客が訪れる「アジムット」にて、最高の食材をベースにシンプルで現代的な料理を、春から秋の時期は父親の後を継いだ「ラ・プートル」にて、ボンリューの湖、山、川、森などの自然から着想を得た料理を提供されています。
ムロー氏は「ラムロワーズ」やパリの「トゥール・ダルジャン」など著名店で研鑽を積み、2001年より「ラ・プートル」を父親から引き継ぎ、2007年より「アジムット」のシェフに就任。2010年にはミシュランの一ツ星を獲得し、2022年まで維持されていました。ボキューズ・ドール2015年フランス国内大会では2位に輝くなど、確かな実力の持ち主です。
コンクールに出場するために何回も試作を重ねてより良い料理を作っていた経験がレストランの料理構成に繋がっているそうです。
Huîtres pochées et bouchons de pommes de terre fondantes Sauce vin Jaune et œufs de truite fumée
牡蠣を2分だけ90℃に温めたオーブンの中で加熱し、殻を開けて中の身を取り出します。これは、殻から身を外しやすくするのが目的だそうです。中のジュースは鍋に移しておきます。
シャルロットという種類の小さなじゃがいもをパイプ状にくり抜き、たっぷりと溶かした有塩バターの中で煮るようにオーブンの中で加熱します。火が通ればくり抜いた中身の円柱部分を一部切り、パイプの中に戻してケース状にします。中には燻製の香りをつけたマスの卵を詰めます。
ソースはエシャロットをバターで炒め、ヴァン・ジョーヌというジュラ地方で作られるサヴァニャンという品種のぶどうを使ったワインを加えて煮詰めます。生クリームを加えてさらに煮詰めて仕上げます。
最後に殻の中にあったジュースの中で牡蠣の身を少し温めて盛りつけます。
バターをたっぷりと含んだじゃがいも、ほんのりと温まった牡蠣のうまみと磯の香り、マスの卵の燻製の香り、ソースに使われたヴァン・ジョーヌの香りや酸味がとてもいい組み合わせになった一皿です。
盛りつけの様子を観察する研究生です
Filet de rouget en escabèche, jus et crème à la cerfuze
ルジェという日本ではひめじという名前の魚を使った料理です。
綺麗な赤色の皮をもち、ふっくらとしたやわらかい身が特徴の魚です。エスカベーシュは揚げた食材を酢など酸味のある漬け汁で漬けて作った料理を指します。
まず漬け汁を作ります。
玉ねぎのみじん切りと人参の薄切りをオリーブ油で炒め、甘味が出れば香草、にんにくを加えさらにオリーブ油を足します。シードルというりんごのお酒から作った酢と水を加え、沸騰すれば漉します。
ソースは玉ねぎの薄切りをバターで茶色くなるまでしっかりと炒め、鶏のだし汁を加えて玉ねぎの味と香りが移るまでしっかりと炊きます。
漉したあとに残った玉ねぎ、ブレス産の発酵クリームとクリームチーズを混ぜ合わせてつけ合わせの一つにします。
バターナッツかぼちゃをリボン状に切り、冷めた漬け汁をかけて少し柔らかくしたあと、円錐状のケースに着物の十二単のように交互に巻き付けてケースを作ります。残りのバターナッツかぼちゃは角切りにし、オーブンで香ばしさがでるまでしっかりと焼き、つぶしてピュレにします。
先ほど作った円錐状のケースにピュレを詰めてモミの木に見立てたもう一つのつけ合わせになります
研究生がバターナッツの巻き方の指導を受けている場面です。
漬け汁を一度沸騰させ、ルジェの身にかけて味をつけるのと同時に軽く火を通します。
ルジェ、バターナッツのつけ合わせ、玉ねぎのクリーム、漬け汁を作った時のにんじんと玉ねぎ、泡立てたソースを盛りつけて完成です。
研究生に感想を聞きました。
「シンプルな構成で料理が作られていたが、それぞれの素材の味を最大限引き出す方法で調理されていると思いました。サスティナブルも意識して調理をされていて自分も意識していきたいと思います」
最後にアシスタントを務めた研究生と記念写真。