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料理のチカラプロジェクト

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2024年度 東京学芸大学留学生への特別授業(辻調理師専門学校 東京)

東京学芸大学×辻調

2024.06.18

2024年6月10日(月)・17日(火)の2週連続で、辻調理師専門学校東京において、東京学芸大学(以下、学芸大)の学生を対象に、「日本料理を概括する」ことをテーマとした授業をおこないました。

本講座は、辻調と学芸大との「新しい時代の学びの場づくり」に関する包括連携協定の一環で開かれるもので、今年が2年目となります。訪れた学生は、学芸大の日本語と英語での教育研究に携わる日本人学生と、10か国近くからなる外国人留学生の約20名です。

教壇は、日本語での解説を岡田裕先生(日本料理)が担当し、英語通訳を田美愛先生がつとめました。

1日目は、日本料理を取り巻く環境と歴史の変遷が、どのように日本の食に影響し、日本料理が形作られていったのかについて、俯瞰的に捉える試みがなされました。縄文時代から令和にかけての縦軸の歴史にのせながら、今の日本料理を構成する要素(食材、調味料、調理技術、形式、外国との交流、精神性など)を浮き上がらせたことで、初めて日本料理の食文化に触れた皆さんにも分かりやすかったのではないでしょうか。

解説中の岡田裕先生

また、英語での教育法を学ぶ日本人学生にとっても、英語圏の方に日本の食を伝えるにはどういう表現や切り口が良いかについて、ヒントとなる糸口がたくさんあるようでした。

英語通訳をつとめた田美愛先生

料理は気候風土を反映した結果であることが見えてくると、学生たちも自然と、自らの出身国や育った国に照らし合わせて考えてみた様子。ときに日本と比較してみることで、料理が単にお腹を満たすだけのものだけではないと気づくなど、知的な好奇心を刺激されたようです。

質疑応答の時間では、例えば「トルコにおけるオリーブ油は、日本においてどんな位置づけか」といった、さりげないようで、我々も考えさせられるような角度の質問があったり、先生から学生に質問を投げることで共通点を見出だしたりと、食文化をテーマとして双方向の交流が生まれたのも良い光景でした。

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2日目は、日本料理のだし汁についての授業です。
だし汁を構成する大きな要素は水です。水に恵まれていることは、他国の料理との比較において、日本料理を特徴づけるポイントでもあります。初日の授業で「日本の食と地理的要因」を解説したのを受け、2日目は実際にだし汁を作り味わうことで、日本料理の土台を知ることを目的とします。

はじめに、東京都小金井市の普通の水道水、海洋深層水、超硬水という3種類の水の飲み比べをおこないました。学生たちには、自らが暮らしてきた地域の飲みなれた水の味があるはず。改めて、味に違いがあることに気づいたようでした。

次に、だし汁(昆布と鰹節の一番だし)の解説に移ります。だし汁の材料は、水、昆布、削り鰹の3種類だけです。まずは昆布について説明し、実際に昆布のだし汁を試飲しました。

今回は我々にとっても、大変興味深い感想が飛び交いました。数年前であれば、外国人留学生は、昆布だしは磯臭い・味がしない・美味しくないなど、あまり良いコメントが出てこないのが常だったのが、今回の参加者全員が美味しいと答えてくれたからです。これも日本料理ブームに関係しているのか? 地域によって存在したはずの味覚や嗜好の違いが世界規模で一律化しているのか? など考えさせられる変化でした。

次に鰹節の説明へ。鰹節の製造工程を学んでから、実際に本節を「鰹節削り器」で削る体験をしてもらいました。ひと昔前は各家庭にあった削り器ですが、日本においても、使ったことがなければ見たことすらない人がほとんどかと思います。学生たちは積極的にチャレンジし、「難しい!」を連呼していました笑。


最後に、削った鰹節を使ってだし汁を引き、お待ちかねの試飲をおこないました。
皆さん一様に笑顔で、おいしいと感動してくれているのを見ると、授業のやりがいがありますね。

日本料理のブームの要因としてだし汁があること、そして世界中で日本のラーメンがブームになっているのもだし汁が関連しているという話に、学生たちは実感を伴って納得してしている様子でした。

日本料理に欠かせない食材の基本や、技法、いわゆる匠の技など、歴史に裏打ちされた独特の食文化を垣間見て、肌で感じてもらえる良い機会になったと思います。みなさん2回に渡り、おつかれさまでした。