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料理のチカラプロジェクト

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辻調オンラインセミナー①「初めて取り組むテイクアウト、デリバリー、弁当販売」

イベント

2020.06.11

辻調理師専門学校では、新型コロナウィルスの流行に影響を受ける飲食業界に向けて、新たな取り組みとして注目されているテイクアウトやデリバリーなど、飲食店における経営多角化のアイデアや手法について、全3回にわたってオンラインセミナーを開催しました。
各回30~40名が聴講し、各分野で活躍する方や有識者の解説の後に、参加者との質疑応答も活発に行われました。

今回は第一回目の大阪府健康医療部生活衛生室食の安全推進課 戸田 朋宏氏による「初めて取り組むテイクアウト、デリバリー、弁当販売」セミナーの内容をまとめて掲載します。


まずはじめに、テイクアウトやデリバリーの食中毒に関する話を、それから後半に、既存の許可でできる部分、できない部分に関する話をします。



テイクアウトやデリバリーは、すぐに喫食する店内飲食に比べて、喫食までの時間が長いという特徴があります。また、テイクアウト料理を買った後に寄り道をしたり、次の日に食べたりするなど、お客さまが飲食店の想定を超えた行動に出ることもあります。よって、食中毒のリスクが大きくなってしまいます。

また、はじめて取り組む場合にはノウハウがなく、不慣れなこともリスクになりうるし、これからの暑い時期には、微生物が増殖しやすくなってしまうのもリスクになります。



上記の食中毒の三原則を基本に、特に気を付けるべき部分について解説します。



・加熱や洗浄を意識し、生のものを避けるなど、リスクの少ないメニューを選びましょう。
・能力を超えると衛生に気が回らなくなってしまうので、調理場や調理スタッフの規模に応じて、無理のない食数を調理しましょう。
・食中毒菌は中途半端な温度帯を好みます。持ち運ぶときにも、保冷剤や保冷・保温ケースを使うなどの工夫をしましょう。
・当日調理、当日喫食が原則です。できれば調理は直前にして、最長2時間以内に喫食するのが目安です。また、口頭で伝えたり、シールを貼ったりするなどして、早く食べてもらう情報伝達をしましょう。

次に、テイクアウトやデリバリーを始めるにあたって、飲食店の持っている許可で、どこまでやっていいのかという相談が多くありますが、許可についての話です。



今回は大阪府の場合をお話します。大阪府でも、独自に保健所を持つ政令中核市では、解釈が異なる場合があります。また、自治体によっては、大きく異なることもありますので、大阪府の保健所の例として考えてください。

通常、飲食店で出しているものを、注文の都度作る場合、特に届け出なくできます。食品の表示に関しても、免除されます(下記Q&AのQ1参照)。ただし、作ったところと違う場所で販売する場合は、表示が必要になります。

実際には、保健所に気兼ねなく相談していただければ、心配がなくなるでしょう。



弁当を事前に調理し、違う場所で販売したい場合、並べて売りたい場合などには、まずは許可証を確認してみてください。
上の図の赤枠で示したような場合には、弁当や仕出しはできません。大阪府の保健所の許可証ならば、条件のところを確認してください。

弁当販売の許可がない場合、弁当を出すには、この条件を解除する必要があります。



リスクのより高いメニュー(弁当など)を扱うには、施設基準のランクが上がります。
厨房内に、放冷するための専用設備が必要です。この設備のハードルは高くなく、専用の冷ます場所が確保されれば大丈夫です。専用の放冷台やラックなどです。ブラストチラーがいるわけではありません。この設備をととのえた上で、変更の届出をしてください。

手続きについては、事前に保健所に相談すれば教えてもらえるのでおすすめですが、上の図に示したようなものが必要です。お金はかかりません。変更前の図面は、大阪府であれば許可証の裏についているもので、変更後の図面は放冷施設の記されたものです。

現在、コロナウィルス感染リスクを減らすため、郵送やネットでの申請も可能となっています。府庁HPで検索してみてください。申請の後、通常は現場検査が実施されますが、これも今年度に限り、施設の写真と図面を見比べるなどの対応をしています。

いずれにしても、事前に保健所へ相談されるのがよいでしょう。



最後に、テイクアウトとは別の話になりますが、HACCPに沿った衛生管理が制度化されたことをについて触れておきます。
2020年6月1日に施行されましたが、猶予期間が1年間あるので、今から取り組んでも十分に間に合います。厚労省のHPに指針があり、それに沿うと誰でもできるようになっていますが、困ったことがあれば、やり方についてなど、所管の保健所にぜひ相談してください。



【Q&A(参加者との質疑応答)】

Q1.
販売するお弁当には、どのような表示が必要ですか?
A1.
「注文を受けてから調理し、調理後すぐに喫食されることを前提として提供する食事」以外の弁当等には、食品表示基準に基づく表示が必要となる場合があります。食品表示基準において表示が義務付けられている項目には、名称、原材料名、添加物、内容量、消費(賞味)期限、保存方法、販売者の氏名及び住所等、製造所の所在地及び製造者氏名、栄養成分表示などがあります。また、アレルゲン情報については表示義務の有無にかかわらず、積極的に提供していただくようお願いします。

Q2.
調理後2h以内の喫食とのことですが、運送に30分要した場合、運んだ先で喫食できる時間は90分となるのでしょうか?
A2.
その通りです。調理後、消費者が喫食するまでの時間が最大でも2時間以内となるようにしてください。

Q3.
営業許可の内容を理解できていないまま、弁当のテイクアウトや販売を行なっているお店も、現実にある気がします。(理解不足にせよ)適正な営業許可を得ていなかった場合、どのようなペナルティがあるのでしょうか?また、万が一、食中毒事故などが発生した際に、適正な営業許可を得ている場合と、得ていなかった場合では、どのようなペナルティの違いがあるのでしょうか?
A3.
まずは、保健所により適正な許可を取得した上で行うよう指導が行われます。再三の指導にも関わらず、その指導に従わない場合は、営業の禁停止等の処分を受けることがあります。通常、適正な営業許可を得ている場合で食中毒を発生させた時は、営業禁停止等の処分が行われます。一方、適正な営業許可を得ていなかった場合で食中毒を発生させた時は、食品衛生法上、2つの条項違反(【食中毒の発生】【許可条件違反】)となるので、処分内容が適正な営業許可を得ている場合と比べ、営業停止期間が長くなるなど重くなることがあります。

Q4.
これからキッチンカーを始めたい場合、どのような許可を貰えばいいですか?調理する場とキッチンカーの両方を見ていただくことになりますか?
A4.
キッチンカーを始める場合、営業を行う地域で(食品衛生行政の自治体区域ごとに)自動車営業の許可を取得する必要があります。許可を取得するためには、自動車内に必要な設備(手洗い設備、洗浄設備、冷蔵設備など)の設置が必要です。(提供するメニュー内容により設備基準が異なります。)また、自動車内では、魚介類を捌く、野菜の土を落とすなど食品の下処理ができないため、基地施設で下処理等を行う場合は、必要に応じて、基地施設も保健所に確認されることがあります。

Q5.
宅配業者に依頼をして飲食店の料理をデリバリーしてもらった場合、食中毒が起きた時には、どこの責任になりますか?
A5.
宅配業者の不備で食中毒が発生した場合でも、宅配依頼主であるレストランも、営業禁停止等の不利益処分を受ける場合があります。そのため、宅配を業者に依頼する場合は、衛生管理がしっかり行われている業者を選ぶことが大切です。
第3回 2020年6月15日
「生産者と一緒に乗り切ろう!ふるさと納税で新規のお客様開拓」
辻調理師専門学校 企画部 尾藤環/ゲストスピーカー 長島未来企画合同会社 太田良冠氏