アイゴを通して海の持続可能性を学ぶ ~Relation Fish株式会社「いただきますを考える会」 in 辻調~
皆さんは、アイゴという魚をご存知でしょうか?
どちらかというと日本の南側の温かい海域の沿岸に広く分布する魚で、ヒレには毒があり、刺されると大変痛い魚です。近年、海藻の生える場所(藻場)の消失「磯焼け」が問題となっていますが、アイゴは海藻を好んで食べるため、この一因になっているとも言われています。
アイゴは食性のせいで内臓に磯臭さがあり、下処理を丁寧に行わなければ身に臭みが移ってしまいます。嫌われもので、なかなかメジャーに流通しませんが、きちんと下処理を行えば大変美味しい魚です。刺身にしても、煮付けにしても、焼いてもそれぞれ美味しくいただけます。
ここに注目したのが、Relation Fish株式会社のメンバーです。
Relation Fish株式会社とは、2022年に関西の有名料理人が中心となり、持続可能な食の未来実現に向け、具体的な行動を起こすために設立された団体です。彼らは「アイゴが植物を好んで食べる」ことに着目し、野菜を与えて養殖を始めました。
今回はRelation Fish株式会社より、島村雅晴氏(日本料理 雲鶴)、松尾英明氏(日本料理 柏屋)、広里貴子氏(有限会社 貴重)のお三方にお越しいただき、アイゴをテーマとして、海の持続可能性についてのセミナーを開催していただきました。
まずは松尾氏より、Relation Fish株式会社の成り立ちや、海の持続可能性についてお話しいただきました。料理人の視点からの水産資源の現状は、学生たちにとっても、近い将来に振りかかってくる大変身近な問題です。
続いて島村氏より、魚としてのアイゴの特徴や、生態系の中での役割、Relation Fish株式会社が行っている養殖についてのお話をいただきました。
次に、広里氏によるアイゴの調理です。アイゴならではのおろし方、臭みの出ない処理の仕方、肝おろし和えの作り方などを実演していただきました。
最後は質疑応答。スーパースターのお三方へ、学生からは様々な質問が飛び交いました。
持続可能な社会をめざすことは、今の学生にとっては当たり前の感覚です。
具体的なアクションを最前線で行う方々のお話を生で聞くことができ、さらに「自分たちも何かしなければ」という思いが強くなったはずです。将来なりたい自分像を描くのに、大いに役立ったのではないでしょうか。
セミナー参加者の1人、調理技術マネジメント学科1年生の西川柊生さんによるコメントを紹介します。
「最初は食べるどころか見たこともない魚だったので、本当に美味しいのかと疑わしく思っていました。しかも実際に内臓を嗅がせていただくと、鼻にツーンとくるほど臭いがきつかったのです。しかし、適切に処理して調理することで、内臓には全く臭みがなくなって食べやすくなり、身の方は鯛に似た味わいで、非常に驚きました。今回のセミナーを受けて、アイゴに限らず他の未利用魚でも、同様の取り組みが増えていけば良いと感じました。私も含めて、未利用魚の可能性はまだまだ知られていません。まずは食べることから。飲食に携わる人たちが、おいしく活用できる調理法を提案し、広く伝えていくことができそうだと考えました」
辻調理師専門学校 東 庸介