TSPAレポ#1:授賞式1 《第5回辻静雄食文化賞贈賞式》<東京>
6月3日明治記念館で行われた第5回辻静雄食文化賞贈賞式に、
受賞された方のお話を聞きに行きました。
今回、専門技術者賞の選出にあたり、この賞の対象は日本料理に限らないので、
選考段階で、西洋料理と日本料理を同じ土俵で評価してもよいのか、
だとするなら日本料理とは何であるか?というところまで議論が白熱したそうです。
そして専門技術者賞を受賞された、大阪「本湖月」の穴見秀生さんにお話をうかがいました。
料理人になって今年で50年になられるそうですが、
ご自身の料理が好き、未来の自分の料理も好き、とおっしゃっていました。
この言葉が、お客様に対して誠実な感じがして、私も穴見さんのお料理を是非食べたいと思いました。
ご自身の料理が日々どんどんよくなっている、料理が楽しいとおっしゃる穴見さんですが、
最初からそうではなく、先が見えない、辞めようか・・・
今日、キラキラしていた穴見さんの姿からは想像できませんが、
そんな風に思われたこともあったそうです。
穴見さんとのお話の中で一番印象に残ったのは、「素敵な料理」という言葉です。
「美味しい料理を作る」とはおっしゃらないんです。
『例えば鮎の塩焼きをしようとしよか?』
これは穴見さんの優しい関西弁の話し方の再現です。
『料理人になって5年目に焼く鮎と、10年修行したあと焼く鮎では、
10年修行した時の方が、素敵に焼けると思うねん。』
穴見さんの素敵な表情をお見せできないのが残念ですが、キラキラしていると想像して下さい。
穴見さんには、これで100%できたというのは無いそうです。
もっと先があるはず。
110%、120%...
そう考える穴見さんは、
来年、さ来年、未来の自分が作る料理が好きだと楽しそうにお話してくれました。
自分でこれでいいやと限界を決めない限り、
どんどん自分の料理が素敵になっていくという考え方に、どきどきしました。
素敵な料理を支える素敵な考え方だなあと思いました。
エコール 辻 東京 辻日本料理マスターカレッジ 山口真理