調理外来講習 M. Philippe MILLE(フィリップ・ミル氏) / Arbane(アルバーヌ)
今回、外来講師としてお越しいただいたのは、シャンパーニュ地方Reims(ランス)にあるArbane(アルバーヌ)でシェフを務めるフィリップ・ミル氏です。
ミル氏は、パリの有名レストランで経験を積んだ後、2009年にボキューズ・ドールにフランス代表として出場し、3位を獲得。2011年にはM.O.F.を受章。2010年よりランスにある高級ホテルLes crayère(レ・クレイエール)のレストランLe parc(ル・パルク)とブラッスリーLe jardin(ル・ジャルダン)の総料理長に就任されました。2011年にLe parcを1ツ星へ、翌年2012年には2ツ星に昇格させ、2024年3月までシェフとして2ツ星を維持されていました。今年3月下旬からArbaneをオープンし、さらなる活躍を期待されているシェフです。
また、毎年ランスで行われている、世界の調理師学校の学生を対象とした国際料理コンクール「トロフェ・ミル」の代表者として、若手料理人育成、ランスの生産者との交流にも注力されていることでも知られています。今回、長年シェフの右腕として働かれているフランス校卒業生の日本人シェフの馬場さんも一緒にお越しいただきました。
今回は帆立貝とバターナッツを使って、様々な調理法や切り方で5品作成していただきました。
1ère assiette
Courge confite aux agrumes, écailles de st jacques au café
バターナッツをチューブ状にくり抜き、コーヒー豆と一緒に柔らかくなるまでコンフィにします。そこに薄くスライスした帆立貝にコーヒー豆を削ったものを乗せます。この組み立てはお寿司をイメージされているそうです。
シトロンキャビア、柑橘類の果肉やジュース、柿、シーアスパラガスなどで作った冷製のソースを流したお皿に盛り付けて、レモンのジュレやお花を飾り爽やかな冷製の前菜が完成しました。
2ème assiette
Crémeux de courge, tartare de st jacques, safran et pistache
2品目は、小さな角切りにした帆立貝に柑橘類の皮で香りを付けたものと、ピスタチオとバターナッツをオリーブ油で炒めたものを合わせてタルタルを作ります。
バターナッツを絞ったジュースやオレンジジュースを煮詰めたものにゼラチンを加えて、サイフォンに入れ泡状のクリームにしてお皿の中央に絞り、その上にタルタルを盛りつけ、サフランパウダーやピスタチオを飾ります。
こちらの1品は、酸味の効いた冷製の前菜となりました。
3ème assiette
St jacques et foie gras consomé de barbes et courge au sarrasin
帆立貝に数か所切り込みを入れて、そこにスライスしたフォア・グラを挟み込み、ラップで包み形を整えます。火通し方法は、そのまま蒸気で蒸して、最後にバーナーで炙り香ばしさを付けていきます。
次に、帆立貝のひも、断面を焦がしたたまねぎ、シャンパン、バターナッツを絞ったジュースでコンソメと作ります。そこに乾燥した帆立貝のひもを加えてさらにうま味をプラスしていきます。コンソメといっても、一般的にイメージする澄んだものではなく、バターナッツの甘みがありながら、帆立貝のうま味を感じられるものでした。
たんぱくな味わいの帆立貝はフォア・グラで濃厚さをプラスしされ、かぼちゃのピューレや蕎麦の実を添えたコンソメ仕立てとなりました。
4ème assiette
Royale de courge, lamelles de st jacques, sucs de champignon à l'estragon
こちらの料理はまず、小さく切ったバターナッツをバターで軽く色付ける様にソテーして、ミキサーにかけてピューレにします。そこに卵を加えロワイヤル(royal :茶碗蒸しの様なフランス料理)にしていきます。上からマンダリンの皮を削った、少し厚めにスライスした帆立貝を乗せます。
最後にバターでエシャロットを炒め、シャンパンを加えしっかりと煮詰め、生クリーム、エストラゴンのオイルを加えてマーブル状のソースをかけて、アクセントとして山椒を飾り、色鮮やかな温かい1品となりました。
5ème assiette
St jacques rôtie, pickles de courges, sauce courge au vieux champagne et tagete
薄くスライスしたバターナッツでピクルスを作り、扇状に組み立てます。その中には、バターナッツのピューレにコンテチーズ、刻んだカボチャの種、爽やかな香りが特徴のマリーゴールドの葉を加えたものを絞り込みます。
ソースは、バターでかぼちゃの種を煎り、バターナッツの千切りと一緒に炒めて、味に深みを出すために年代物のシャンパンを加えて煮詰め、最後にバターナッツのピューレを加え濃度をつけたものを流し、表面に軽く切込みを入れた帆立貝を色よく焼いて盛りつけて5品目の完成になります。
同じ食材を使っていても、カットの方法や調理法を変えるだけで、温度帯も仕立て方のバリエーションを披露していいただき、ムニュ・スペシャルの時期が近づいてきている研究生にはとても参考になった事と思います。
最後にミルシェフ、馬場シェフ、アシスタントを務めた研究生と記念写真を撮りました!