長坂 亮太さん 研修先:「Maison Decoret」
長坂 亮太さん
NAGASAKA Ryota
北海道岩見沢農業高等学校 卒業
[エコール 辻 大阪]辻フランス・イタリア料理マスターカレッジフランス校留学コース 卒業
2012年秋コース エスコフィエ校フランス料理研究過程
研修先:Maison Decoret(メゾン デコレ)
ミネラルウォーターや温泉保養地として有名なVichy(ヴィシー)という町にあるミシュランガイド1つ星を持つレストラン「Maison Decoret」で長坂くんは研修をしています。M.O.Fを持つデコレシェフはフランス校のシェフとも仲がよく、学校に講習にも来てくださいます。斬新な料理を出すお店として知られるデコレシェフのレストランで、長坂くんがどのような研修生活を送っているかお話してもらいました。以前は「今後フランスで働く」という気持ちはなかったそうですが、研修を通して「いつかまたフランスで」と少し考えるようになったそうです。
「地域密着型レストラン」
温泉で有名なVICHYにある『MAISON DECORET』で研修しています。シェフは昔からVICHYでレストランを経営されており、レストランで使う食材、fromageも土地のものを使っています。そのためか地元のおじいちゃんおばあちゃんが普段着でも気軽に入ってこられる、地域密着型のレストランです。VICHYはとても治安がよいところです。大きな言語学校があるため語学留学をしている人が多く、歩いているとフランス語以外にもアジア圏の言葉もよく耳にします。
外観 内装
「仕事は臨機応変に」
オードブル、 魚料理、 肉料理など特定のポジションには属せず、各料理に必要なパーツ(肉や野菜の下処理、飾り付けの葉っぱ、クルトンなど)をいくつか任されています。ブリュノワーズなどきれいに細かく切り揃える作業ならほかのスタージュ生に負けない自信があります!営業が始まると、amuseを僕ともう一人フランス人で担当します。それが終わると次に出る皿のパーツを用意したり、火を入れるものは火入れして、盛りつけに備えます。ここのお店は基本シェフとスーシェフが火入れと味付けをしてそれをみんなで盛り付けていきます。最後の盛りつけの時も常に周りを見てソーシエールが出てなければ出したり、手が足りてなさそうであれば盛り付けに加わったり、一足先に抜けて次の準備をしたりと、人数が少ないので本当に『臨機応変』という言葉がしっくりくる職場です。
(左)後部はスーシェフの横山さん、プライベートでもお世話になっています!
(右)プラックの近くで仕事をしているので、最近は暑くて大変です。
「尊敬できるシェフ、楽しい同僚」
M・O・Fを持つ Jacques DCORET シェフはお皿の盛り付けがとてもきれいで、シャトーにいるとき食べ歩きで訪れた際は、「どうやってこんなにきれいに盛り付けているんだ?」と思っていましたが、実際に働いてシェフの隣で作業を見ていると、実にシンプルながらも配置や置き方でお皿に美しさを出していることがわかりました。仕事以外でもシェフやマダムはアパートの事などいろいろと気にかけてくださるのでとても助かっています。
同僚の人達はみんな優しく素敵な人たちばかりです。フランス語がわからないときには何度も別の言葉に言い換えてくれたり、ショートコント並みの長さのジェスチャーで伝えようとしてくれます(笑)。バロンタは一緒にamuseの盛りつけをしているフランス人で、彼と一緒に仕事をするのが一番楽しいです。日本が好きなのか、かなりの頻度でおかしな日本語や、どこで覚えた !?というような言葉(ちょっと下品な?)を言ってきて仕事中に笑わせてくれます。
厨房の雰囲気は思っていたよりもはるかにアットホームで親しみやすい空間だったことに驚きました。「フランス人はやる時とことんやって、やらない時とことんやらない」と聞いたことがあったので仕事中はピリピリしているのかと思ったらそうでもなく、いつも明るく楽しく仕事をしている姿に少し驚きました。(やる時はもちろんちゃんとやりますけど...)
キュイジニエのメンバーとプロンジュ(皿洗い)のおじさん(右端がデコレシェフ)
同僚のパロンタ。こう見えて19歳(笑)
「まさかのランニング(笑)」
休みの日の過ごし方ですが、ここは温泉保養地として有名なので町のいたるところに源泉が噴出しているのを見ることができ、友達がVichyに遊びに来たときには、必ずそこに連れて行って健康によいとされている温泉水を飲ませてあげます。基本飲んだ後はみんな顔をしかめます(笑)。おいしくないです。健康目的なので。あとはなんといっても町の中心に大きなアリエ川が流れているので、考え事やぼーっとしたいときは川沿いの木の下に指定席のベンチでします。料理人は『体が資本』ということでランニングをしています(おそらく日本では絶対にしてません。(笑)
Vichyには大きな川がありその周りは歩道が整備され、絶好のランニングスポットとなっていて、火・水が休みなのですが、平日にもかかわらずたくさんの人がランニングを楽しんでいます。好きな音楽を聴きながら、すれ違うフランス人に挨拶するだけでワクワクした気持ちになります!コースの途中には公園もあり、遊具やゲートボール、ペタンクなどを楽しむフランス人でにぎわっています。そこにはバスケットコートがあり、地元のフランス人たちと一緒に暗くなるまでバスケットボールをしています。最初は怖かったけどいろいろ喋ったり一緒にバスケットをするうちに仲良くなる事ができました!あとは買い物をして、平日お腹がすいたときのために、冷凍してすぐ食べられるものとかを仕込んだりします。(時々フランス人の同居人に食べられますが・・・)月に使うお金は80ユーロくらいでしょうか。休みの最後は必ず包丁をとぎ明日からの仕事に備えます。
走っていてとても気持ちのいいスポットです!
(左)バスケ友達のフィリップとイガロン!
(右)夕陽に向かってシュート!
「日常会話は仕事より大変?」
MAISON de stage 「研修生の家」といアパートに研修生は住んでいます。一番多いときで5人と一緒に生活していました。フランス人以外にもコロンビアの人とも住んでいました。フランス人の一人には女性もいます。職場はシャトーに居たときに使っていた調理用語がわかるのであまり問題はありませんが、それに比べると日常会話はあまり使ってこなかったので、むしろ仕事より神経を使います(笑)。
なんやかんやで楽しくやっています。
「フランスのレストランで働くということ」
『レストランで料理人として働く』ということがどういうものかわかりました。料理人がいて、セルヴィス、クリヨン(お客様)がいて...とここまではシャトーでもやってきましたが、そこにお金が発生して、経営方針があって、上司と部下の関係がある。研修生と聞くとかわいいように聞こえますが、いつも社員の人と同じ場所に身をおいて仕事をしています。もちろん研修生はいろいろと条件は緩和されていますが、日ごろ一緒に働いて、忙しいときはみんなで焦り、セルヴィスがミスをして料理を作り直したときは共にイラッとし、クリヨンが拍手してくれたときには一緒に喜びました。技術的なことを挙げればきりがありませんが、やはり一番はフランスのレストランで働くとはどういうものなのかを知れたのがとても大きな収穫だと思っています。
後輩が食べ歩きに来たときの一枚
アルザスでシャトー仲間と久々の再会
「将来はまたフランスで」
ここのお店のスーシェフは日本人の方でしかもフランス校の卒業生、つまり我々の先輩です。職場ではシェフや仲間たちから絶対的な信頼をされており、まさにお店をまわすのに欠く事のできない人です。また、私生活でもご夫婦でvolvicの源泉地へ行くピクニックに僕も誘っていただいたりと、本当にお世話になっています。フランスで働くことは恐らく無いと思っていた僕でしたが、その方と一緒に働いて、「絶対またフランスで働きたい !!」と思うようになりました。なので、将来またフランスで働ける日のために、せっかく今フランスにいるのでやれることは全部やって悔いなんて残さず日本に帰ります!そして腕を磨き、また!いつの日か!フランスに戻ってきたいです !!
volvic源泉地にて
スーシェフの横山さんと奥様