Auberge du cep (オーベルジュ・デュ・セップ)
今回はリヨンから北へ車で45分ほどの場所にあるフルーリーという村の中の、「オーベルジュ・デュ・セップ」というレストランをご紹介します。
このオーベルジュ・デュ・セップというレストランの歴史は古く戦前からあり、その時はオテル・ド・フランスと呼ばれていたそうです。1951年にマダム・トマスがミシュラン1ツ星を獲得し、1969年にシャンタル・シャニーという女性がこの店を引き継いだあと、現在のオーベルジュ・デュ・セップの名前に改名されました。
改名後10年以上に渡ってミシュラン2ツ星を獲得、維持をしたのち2012年に引退されました。
その後、2015年11月に現在のシェフのAurélien Mérot(オレリアン・メロ)氏が引き継ぎ、2021年にふたたびミシュラン1つ星を獲得しました。
シェフのメロ氏は調理師学校を卒業後、リヨンのポール・ボキューズ氏の ブラッスリーで料理人人生をスタートされました。
次のレストランはなんとこのオーベルジュ・デュ・セップです。このレストランで2年働いた後、ボジョレの中心にあるChâteau de Bagnols(シャトー・ド・バニョル)、南仏エズのChèvre d'Or(シェーブル・ドール)、パリのFouquet's(フーケッツ)を経て2006年にボジョレのChâteau de Pizay(シャトー・ド・ピゼイ)でシェフに就任されました。
その後2013年にはヴィルフランシュ・シュール・ソーヌのBellooga(ベルーガ)の立ち上げを行い、2015年に現在のオーベルジュ・デュ・セップのシェフとなりました。
レストラン内は青い壁紙で落ちついた雰囲気になっています。テーブルセッティングもシンプルにまとめられています。
レストランで提供されるお昼のみのメニューでは25~30€、昼夜ともに提供されるコースメニューは50、60、70、85€の3コースがあります。
今回は60€のディナーコースメニューをご紹介します。
パン
アミューズ・ブーシュ① 3種盛り合わせ
かぼちゃのスープ
1人前ずつ試験管に入れて提供されました。ポティロンという皮が橙色のかぼちゃがあり、それを使ったスープです。シンプルにかぼちゃの甘味を楽しめました。
干し草の香りをつけたハムとマスタードの香りのマヨネーズ
ジャンボン・オ・フォワンというフランスの伝統的な料理があります。豚のもも肉を塩漬けしたものを沢山の干し草とともにゆっくりと茹で、その香りを移したものです。
マスタードをつけて食されることが多いのですが、今回のアミューズではマヨネーズと合わせることでよりまろやかに食べることができました。
じゃがいものチュイル、シリアル
香ばしく焼いたじゃがいものチュイルの表面に様々なシリアルが乗せられています。塩気がしっかりとあり、食前酒がすすみます。石の切り込みに直接刺さっており、先述のかぼちゃのスープのプレゼンテーションも合わせて見た目も楽しい盛りつけです。
アミューズ・ブーシュ② パセリのソースとレンズ豆を炊いたもの、サボデソーセージ
レンズ豆を玉ねぎや人参とともに柔らかくまで炊いたものと、sabodet(サボデ)というリヨンで作られる豚の肉や頭などの様々な部位を混ぜて作られるソーセージが添えられています。
下にはハーブの爽やかな香りがつけられたパンナ・コッタがあり、酸味もしっかりと効いていました。
Escargots de Bourgogne et porc fermier sur un toast d'aubergines et légumes de l'arrière-saison, vinaigrette de pommes à cidre
にんにく、パセリの香りをつけたエスカルゴが周囲に置かれています。
半分にカットした茄子の表面をしっかりと焼き、その上には茄子で作られたピュレとローストした豚バラ肉、そしてブーダンという豚の血と肉で作られたソーセージが乗っています。
一見すると脂質の多い食材が沢山使われていますが、茄子のピュレにもしっかりと酸味があり、焼いたリンゴやリンゴ酢で作られたドレッシングがかけられており、食べやすい一皿に仕上がっていました。
Traditionnel pâté en croûte au ris de veau et foie gras, moutarde de pistaches, pickles
伝統的な料理であるパテ・アン・クルートです。中にはリ・ド・ヴォ(子牛にのみある内臓のひとつ)とフォワ・グラが入っており、滑らかな食感とフォアグラの豊かな風味が生かされています。
野菜のピクルスの酸味、ピスタチオ風味のマスタードクリーム、ビーツのソースが添えられています。
Coquillages, couteaux et caviar servis dans une pomme au four et salicornes
じゃがいもを皮つきのままオーブンで焼き、中をくり抜いてあります。くり抜いた中身をポタージュにし、クトー(マテ貝)やサリコルヌ(あっけしそう)を合わせて流し込んでいます。
マテ貝の殻をじゃがいもの上に乗せてムール貝の身を並べ、キャビアが添えられています。
じゃがいもと貝類の味わいがとても合っており、オーブンで焼いたじゃがいもの皮の香ばしさがより食欲をそそります。見た目も味もとても満足の一品です。
Saumon de fontaine de la famille Murgat condiment d'une grenobloise purée de cresson et champignons des bois
川マスと呼ばれる魚を使った一品です。
グルノーブル風のつけ合わせ(クルトン、ケイパー、レモン、パセリ)と、シャントレルや黒ラッパ茸といった野生のきのこのソテーが添えられています。
レモンのピュレ、クレソンのソース、クレソンのパウダーがバランスよく盛られており、食欲をそそります。
Poulet fermier de l'Ain cuisiné au vin de Fleurie : Le suprême rôti et la cuisse comme un coq en pâte
鶏の胸肉をオーブンで焼き、地元フルーリーのワインを使ったシンプルな赤ワインソースがたっぷりとかけられています。とうもろこしの粉を使ったピュレと、焼いたマッシュルームが添えられています。
もも肉はコンフィにしたあと、ベーコンやマッシュルームと濃厚な鶏のソースとともに器に入れられパイ包み焼きにしてありました。
メニュー名のcomme un coq en pâteは直訳すると『生地の中の雄鶏のように』になり、そのままこの料理を表しているように見えます。
調べてみたところ、慣用句的な表現がありました。快適な生活を送り、不安や心配などから解放されるという意味があるようで、シェフの遊び心に後々気づかされ心憎い演出を感じました。
Comté 24 mois râpé, mousse de lait et noisette
24か月間熟成したコンテチーズを溶かした牛乳をソーダサイフォンでムースにし、その上にはたっぷりとコンテチーズをすりおろしたものがかかっています。
相性のいいヘーゼルナッツを砕いたものを散らしています。
Chocolat d'origine « Mexique » et la poire pochée au Beaujolais
メキシコ産のチョコレートを使ったムースをフィヤンティーヌというとても薄く焼いた生地で挟んであります。ボジョレの赤ワインで洋なしをコンポートにしたものと洋なしのシャーベットが添えられ、コンポートにした時の煮汁がソースとしてかけられています。
濃厚なチョコレートムースが赤ワインの酸味とバランスが良く、さっぱりと食べることができました。
お茶菓子3種類です。
フィナンシェ、チョコレートのムース、パート・ド・フリュイが提供されました。
今回いただいたコース料理はお手頃な価格にもかかわらず、ボリューム満点でとても満足のいくものでした。ボジョレの食材を使い、地域の伝統もリスペクトしながら作られた料理はシェフの地元愛を感じさせました。
ミシュランガイド1ツ星を獲得され、地元に愛されているレストラン。リヨン近郊に来られた際にはぜひ少し足を伸ばして訪れてみてはいかがでしょうか。
Auberge du cep
住所 11 Rue des Quatre Vents 69820 Fleurie
電話 04 74 04 10 77
contact@aubergeducep.com