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L'Oustau de Baumanière(ルスト・ドゥ・ボーマニエール)

フランス校 食べ歩き日記

2024.08.06

今回紹介するレストランは、ミシュランガイドで三ツ星を獲得しているL'Oustau de Baumanière(ルスト・
ドゥ・ボーマニエール)です。(以下の文章からレストラン名をボーマニエールと記載。)


ボーマニエールの場所は、フランスの最も美しい村の一つとして認定されている、レ・ボー・ドゥ・プロヴァンスにあります。この村の周りには真っ白で巨大な岩山が広がっており、昔の石切り場を利用した美術館や石造りの家々が立ち並ぶ、自然と歴史が調和した街並みが魅力です。

石造りの家


昔の石切り場を利用した美術館の中

ボーマニエールも石造りを基調としシンプルでモダンな建物です。
敷地内はとても広くいろいろな施設があります。入り口を入ると、特産品・工芸品が並ぶブティック、ショコラトリー、ラベンダーなどの特産物を使った体験型のイベントができるアトリエがあります。その奥に、レストラン、五ツ星ホテルの客室、スパを併設した建物があり、テラス、プール、庭園が広がります。


レストラン、テラス席


ショコラトリー、アトリエ

1945年にオープンしたボーマニエールは1954年から1986年まで途切れることなく三ツ星を獲得していましたが、それ以降二ツ星に。2015年にGlenn VIEL(グレン・ヴィエル)氏がボーマニエールのシェフとなり、2020年に再び三ツ星を獲得しています。

現在のボーマニエールのオーナーであるJean-André CHARIAL(ジャン・アンドレ・シャリアル)氏は、大学卒業後、祖父であるRaymond THUILIER(レイモン・チュイリエ)氏がオープンしたボーマニエールで1969年から経営と管理業務を始めます。1973年から料理人として働き、トロワグロ、ポール・ボキューズなどフランス各地の有名三ツ星レストランで修業。その後、ボーマニエールのほかにも経営・事業を展開されています。


シェフのグレン・ヴィエル氏はブルターニュ出身でパリのムーリスなど名門レストランで修業、腕を振るってきました。2020年9月にゴ・エ・ミヨ・ガイドによって同業者が選ぶトップ・シェフ(年間最優秀シェフ)に選ばれています。現在ではフランスの料理テレビ番組"トップ・シェフ"の審査員を務めるなど多方面で活躍されています。プロヴァンスの職人たち(ガラス吹き職人、鉄工職人、陶芸家)と親密な関係を築いておりレストランで使用されている食器類、小物類は彼らの作品で構成されています。その結果、ミシュランガイドの「サステナブル・ガストロノミー」も受賞されています。

また、2016年から厨房に加わったパティスリーのシェフであるBrandon DEHAN(ブランドン・ドゥアン)氏がゴ・エ・ミヨ・ガイドの2019年ヤング・パティシエに選出され、同年ミシュランガイドとヴァローナ(チョコレートメーカー)が選出する「デセール・パッション」という賞も受賞されています。

今回レストランを訪れた日は快晴だったので、私たちは景色の良いテラス席でアペリティフ(食前酒)とアミューズ・ブーシュ(一口大の料理)をいただきました。

『Pascal Doquet ANTHOCYANES ROSÉ PREMIER CRU』

シャルドネとピノ・ノワールで造られた色鮮やかなシャンパーニュ・ロゼです。透き通るフルーティな香りと力強い個性が特徴です。

テーマが書かれた紙が置かれ、料理と一緒に説明が始まります。


『Pêche à pied , les pieds sous la table』

海の食材を使用したアミューズ・ブーシュは、ブルターニュ地方出身のグレン・ヴィエル氏のエスプリが感じられます。右から、イカ墨を使用した磯の香りのする生地で、濃厚なムール貝のペーストをサンドしたものです。中央は、塩味を感じるサリコルヌ(海沿いで収穫できる植物)のタルトで、オレンジのコンフィを合わせています。左は、爽やかな香りのきゅうりとキャビアの程よい塩味のあるジュレでさっぱりとしていて、コース料理の前に食欲をそそられる盛り合わせでした。


左:コースのメニュー  右:デセールのメニュー

アペリティフを楽しみながら私たちが選んだメニューは『Flânerie』(フラヌリー)というコースです。テーマは『散歩』。その下に"伝統と創造の間..."と書かれています。


建物内の席へ移動しました。白を基調とした石造りの室内なので、とても涼しく感じました。照明は少し落としてあり、落ち着きのある居心地の良い空間でした。


フランス南部にある村々には、一生に一本、質の良い高級なナイフを持ち、手入れしながら、それを生涯大切に使い続けるという伝統があります。その伝統に倣い、ボーマニエールでもサービスの方から「コース料理の初めからフロマージュが出るまでこのナイフをお使いください。」と説明があり、テーブルにはティエールのナイフがセッティングされていました。


『Un gasteropode propriétaire』≪Régressif≫
レストラン近郊のサン・レミ・ドゥ・プロヴァンスという村で採れたエスカルゴに、火を通したキノコと乳化させてムース状にしたにんにくのクリームを合わせた一品です。ほんのり甘く濃厚な味わいの軽やかなクリームと、弾力のあるエスカルゴは噛むほどにうま味を感じます。それぞれの料理に合うパンも一緒に提供されるスタイルになっており、こちらの一品に合わせたパンは、"パン・オ・レ"。ミルク入りのパンです。


『Une fleur pas comme les autres』≪Poétique≫

見た目にも美しい花のような一品。ズッキーニは薄くスライスされ、キャビア、レモンのコンフィ、ズッキーニのオイル、食感に粟が散りばめられています。ズッキーニのコンソメをサービスの方が目の前でかけてくれることで、さらに澄んだズッキーニの香りやフレッシュさを最大限に感じることができました。こちらの一品に合わせたパンは、"ブリニ"。甘さの少ない気泡を含んだ小さなパンです。


『Entre le thon et le cochon une histoire de ventrèche』≪Paradoxal≫

まぐろのハラミ、ラルド・コロナータ(イベリコ豚の背脂の塩漬け)の組み合わせです。テーマの≪逆説的な≫から読み取れるように、一見合わせることのないまぐろと薄くスライスされたラルド・コロナータを重ねています。粒マスタードの食感と辛味、ビネーグル・ドゥ・マクロー(しめ鯖に使う合わせ酢)のジュレの酸味とも良く合います。まぐろの下にはルッコラとアンチョビや、まぐろの切れ端などを乾燥させ、うま味を凝縮したあと粉末にしたもの(かつおぶしのような感じ)が敷かれています。口に含むとまぐろの脂身と豚の薄い背脂が溶け、口いっぱいにうま味が広がる一品でした。
こちらの一品に合わせたパンは、"パン・クラシック"。


『Saint-Pierre en eau de tomate Triple sauce』≪Aguicheur≫

1枚目の写真は海藻で蒸したサン・ピエール(的鯛)です。その後、提供前にトマトの液体でポシェし、トマトの枝と一緒に表面をローストしています。つけ合わせは、左からトマトの種を使用したソース、ズッキーニのブイヨンと味を凝縮したサン・ピエールのソース、トマトのコンフィとスライスされたズッキーニです。
柔らかく火通しされたサン・ピエールのクセのある味わいに、トマトの甘味、酸味が加わることでコクとうま味を感じました。
こちらの一品に合わせたパンは、"パン・オ・アルグ"。海藻入りのパンです。




『Un pigeon en inertie』≪Analytique≫

レストラン近郊のニームという町で育てられた鳩を使った一品です。1枚目の写真は、胸肉を干し草とローズマリーで包みジューシーで柔らかく火通しされています。もも肉はコンフィにした後、香ばしくキャラメリゼされています。ロメーヌレタスで包んだ鳩のレバーペーストと一緒に食べると、さらに鳩自体の素材の美味しさを堪能できました。ラベンダーで香りづけした鳩のソース、食感にロメーヌレタスの芯の角切りが添えられています。鳩の美味しさを引き出した一品でした。
こちらの一品に合わせたパンは、"カンパーニュ"。ドライアプリコットとイチジク、ナッツ類や穀物入りです。

南フランスのフロマージュ8種類がワゴンで出てきました。

CHATEAU VIGNELAURE 2022
Appellation:Coteaux d'Aix-en-Provence
Cépages:Assemblage de Grenache Noir , Syrah , Cabernet Sauvignon , Rolle

料理と一緒にプロヴァンス地方のロゼワインを注文しました。

今回アヴァン・デセールは3種類提供していただきました。
上:きゅうりとバジルの飲み物、上はオリーブオイルのタルトレット
左下:リンゴジュースにゼラニウムと人参を合わせた飲み物、スプーンの上にはゼラニウムと人参のペースト
右下:しょうがのレモネード、フレッシュのフヌイユとレモン。
それぞれ甘さは控えめで、口の中を爽やかにする組み合わせでした。

メインのデザートはメニューから好きなものを選ぶことができます。今回は3人でレストランに訪れたので、それぞれ違ったデザートを頼みました。


『Le Millefeuille』

パイ生地、マダガスカル産のバニラを使用した軽やかなクリーム、イタリア産ピスタチオ、ピスタチオのヌガティンヌ、キャラメルソース、バニラアイス。
ワッフルの機械で表面を焼いた後、オーブンで中まで香ばしく焼き上げたパイ生地は、膨らみハラハラと崩れるような食感と、抑えられて焼き上がることで層が詰まり噛み締める2つの食感を味わえました。パイ生地は層がしっかりとしていながらもナイフが綺麗に入り、歯切れの良い食感です。軽いクリームとの相性はとても良く、バニラ、キャラメル、ピスタチオの定番の組み合わせでシンプルでありながらも他にはないミルフィーユでした。


『La Crêpe Soufflée』

スフレ生地、クレープ生地、バニラソース、パッションソース。
このデセールはボーマニエールの創業者のレイモン・チュイリエ氏の伝統的なレシピを現代風にアレンジしたものです。見た目の大きさとは裏腹に、生地の軽さとパッションの酸味でペロリと平らげることができました。オレンジ・リキュールのグランマルニエの芳醇な香りが心地の良い余韻を与えてくれ、変化しながらも変わらぬ美味しさを守り続けています。また綺麗に膨らんだスフレ生地は時間が経っても軽やかに膨らんでおりパティシエの技量の高さも感じることができます。


『La Pêche scalpée』

表面をオーブンで焼いた桃のコンポート、フレッシュアーモンドのムース、色鮮やかなビーツのジュースと桃の果汁にバジルを合わせたソース、パート・ダマンドのグリエ、フレッシュアーモンドと桃のソルベにバジルのジュースと桃の種を使用した果実酒を合わせたカクテル。旬の桃、フレッシュアーモンド、バジルを合わせたデザートです。桃と相性の良いフレッシュアーモンドの組み合わせに、バジルの爽やかさが夏の季節にぴったりなデセールで、旬の素材を様々な形に変化させ、思う存分メインの桃を楽しめるデザートでした。


ミニャルディーズ(一口サイズのお菓子)

左:牛乳のコンフィチュールのタルト
お皿に乗っているもの
上:トウモロコシのテュイル、ビールを煮詰めたシロップ
左:ヤギのヨーグルト、オリーブオイル
右:トウモロコシ風味のキャラメルと柔らかい牛乳プリン
見た目にも可愛い遊び心のあるミニャルディーズで、コーヒーにも良く合いました。

カカオ分65%のエアインチョコレートにヘーゼルナッツとピスタチオが入っています。

サービスの方が目の前でチョコレートを"のみ"で切り分け、石切り場をイメージした面白い演出がありました。


コーヒー


最後に、シトロネル、ミント、ヴェルヴェンヌの冷たいハーブティーが提供され、爽やかにコースが終了しました。

厨房内も見せていただきました。


入り口には昔のメニューや、イギリス王妃などレストランを訪れた著名人の写真やサインなどが飾ってあり、ボーマニエールの歴史を感じることができます。

絶景のロケーションで南フランスの食材を使用した美味しい料理とデザートや文化、歴史までも感じることができる、唯一無二のルストー・ドゥ・ボーマニエールで、素敵な休暇を過ごしてはどうでしょうか。

『L'Oustau de Baumanière』

Les Baux-de-Provence, 13520, フランス
Tel:+33(0)4 90 54 33 07
HP:https://www.beaumaniere.com/