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辻調グループ フランス校

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調理外来講習 M. Gilles REINHARDT (ジル・レナルト氏) / RESTAURANT Paul BOCUSE(レストラン・ポール・ボキューズ)

フランス校教壇から

2024.08.19

 今回、外来講師としてお越しいただいたのは、リヨン近郊にあるレストラン、Paul BOCUSE(ポール・ボキューズ)より、シェフのジル・レナルト氏です。

 レナルト氏はアルザス地方で生まれ、5歳の時には料理人になることを目指していたそうです。アルザス地方のストラスブールの調理師学校を1995年に卒業しました。コルマールにあるレストランLe Fer Rouge(ル・フェール・ルージュ)で働いたのち、パリにて財務大臣の料理人としても働きました。その後レストランPaul BOCUSE(ポール・ボキューズ)やランスにあるChâteau Les Crayères (シャトー・レ・クレイエール)にてジェラール・ボワイエ氏の元で働きました。2000年から再びポール・ボキューズに戻り、現在に至ります。2004年にはフランスの国家最優秀職人章(M.O.F.)を受章されました。2011年からポール・ボキューズのシェフをされています。

講習ではポール・ボキューズを代表する伝統的なスペシャリテを2品作っていただきました。

Loup en croûte, Sauce Choron「スズキのパイ包み焼き、ソース・ショロン」

 1品目はスズキを丸1匹使い、パイ生地に包んで焼きあげる料理です。
 メインのスズキは、内臓やえらを取り除いた状態で鱗と皮を包丁で取ります。皮を剥がす作業は研究生も初めて見る方法で、内臓がなくなると腹身の部分は張りがなくなるので皮と身の間の数ミリに神経を集中させないと上手くはいきません。シェフの技術にかかればその数ミリの作業も的確に素早く、研究生たちを魅了していました。

 内臓やえらを取り除いた場所には、魚のムースを詰めます。魚のムースは研究生も何度も作ったことがありますが、今回使用する材料にはポイントがあります。まず、白身魚、ホタテ、塩を計量し、しっかりミキサーにかけ粘りをだします。全卵と卵黄を加え、発酵クリームとポマード状のバターを加えることで普段の卵白のみで作るムースよりも濃厚でコクがある仕上がりになります。合わせて作る際の注意点も詳しく解説しながら作っていただきました。

 スズキをパイ生地で包みます。シェフの手に掛かってあっという間にスズキがパイ生地に包まれていきました。包まれたスズキをオーブンで焼成します。


 ソースは卵黄と水を泡立てながら加熱してサバイヨンを作ります。そのサバイヨンに澄ましバター、レデュクション(エシャロット、白ワイン、赤ワイン酢、黒こしょうを煮詰めたもの)を加えます。ここにもシェフのこだわりポイントがあります!
 レデュクションはソースに酸味を利かせる役割として使われます。通常はソースを漉してなめらかなソースに仕上げますが、漉さないことでエシャロットや黒こしょうの食感がアクセントとして楽しめるソースに仕上げたい!とこだわりを話してくれました。
 仕上げにトマトの果肉を水分がなくなるまで煮詰めたものと、香りが良い香草でエストラゴンとセルフイユを加えます。最終的なソースは、旨味や全体の味わいのバランスが整えられた仕上がりでした。

Poularde de Bresse en vessie, Sauce fleurette aux morilles
「鶏のヴェッシー包み、モリーユ茸風味のソース・フルーレット」

 2品目は、ブレス産の鶏を1羽丸ごと使った料理です。
 まず鶏の下処理をします。
 鶏の皮と肉の間にポルト酒を絡めたトリュフの薄切りを差し込み、鶏の内側にトリュフの香りをまとわせます。次に形を美しく保つために糸で成形します。

 ブイヨンの中でゆでて火を通しますが、ここでもポイントが!しっとりとした仕上がりになるように、沸騰直前の火加減でゆっくりと1時間火を通します。火が通ればヴェッシーに詰めて、さらにブイヨンに浮かべて加熱します。トリュフの香りがお客様のテーブルでふわっと広がるような演出をするため、パンパンに膨らませます。

 ソースは鶏ガラ、マッシュルーム、エシャロット、ヴェルモット酒、白ワイン、エストラゴン、鶏の出し汁を鍋に入れてゆっくりと煮詰め、発酵クリームを加えたクリームソースです。モリーユ茸はポルト酒の中で味を含ませるようにしっかり火を通します。
 つけ合わせはバターライス、ココットの形にむいて火を通したにんじん、ズッキーニ、大根とさやいんげんをお皿に盛りつけ、ヴェッシーに包まれたブレス鶏をのせて完成です。

 今年はボキューズ家100周年記念でスペシャルメニューをレストランで提供しています。特別に記念メニューのカルトをプレゼントしていただきました!

 シェフの仕事がとても丁寧で早く、普段から厨房を仕切っている様子が目に浮かびました。
 そして、クラシックな料理を今も変わらず続けて作り、提供しているのがこのポール・ボキューズという素晴らしいレストランの魅力だと改めて実感できた講習でした。
 研究生も日本で学んだポール・ボキューズの料理と本場のシェフが作る料理の違いを知る機会となりました。

 最後にシェフとアシスタントを務めた研究生で記念撮影をしました!