FRANCE

辻調グループ フランス校

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調理外来講習 M. Philippe MILLE(フィリップ・ミル氏)/ Arbane(アルバーヌ)

フランス校教壇から

2024.08.02

 今回、外来講師としてお越しいただいたのは、シャンパーニュ地方Reims(ランス)にあるArbane(アルバーヌ)でシェフを務めるフィリップ・ミル氏です。

 ミル氏は、パリの有名レストランで経験を積んだ後、2009年にボキューズ・ドールにフランス代表として出場し、3位を獲得。2011年にはM.O.F.を受章。2010年よりランスにある高級ホテルLes crayère(レ・クレイエール)のレストランLe parc(ル・パルク)とブラッスリーLe jardin(ル・ジャルダン)の総料理長に就任されました。2011年にLe parcをミシュランガイド1ツ星へ、翌年2012年には2ツ星に昇格させ、2024年3月までシェフとして2ツ星を維持されていました。今年3月下旬からArbaneをオープンし、さらなる活躍を期待されているシェフです。
 また、毎年ランスで行われている、世界の調理師学校の学生を対象とした国際料理コンクール「トロフェ・ミル」の代表者として、若手料理人育成、ランスの生産者との交流にも注力されていることでも知られています。今回、長年シェフの右腕として働かれているフランス校卒業生の日本人シェフの馬場さんも一緒にお越しいただきました。

 今回は2品作成していただきました。

Fraîcheur végétale Palette de légumes marinés

 1品目は旬の様々な野菜を使った冷製料理です。

 まず、ヨーグルトを水切りし調味します。レモン汁、ライム汁、レモンのコンフィのピュレ、3種のこしょう(ティミュット、花山椒、タスマニア)、エスペレット唐辛子を加えて器に流し冷やします。次に野菜から取った出し汁にゼラチンを加えた、ヨーグルトの上に層になるように流します。野菜の出し汁はうま味がたっぷりで野菜だけとは思えないほどでした。
 桜型の食材はにんじん、黄にんじん、紫にんじん、クルジェット・ヴィオロン(トロンボーン型のズッキーニ)、茎レタス、大根、赤ビーツ、黄ビーツ、赤玉ねぎをそれぞれが一番おいしくなる火通し、味付けをします。

 味はオリーブ油と塩やピクルスなど素材によってさまざまでした。桜型に抜いたときに余った野菜は先ほどの出し汁として使用しています。

 桜型の野菜の上にはランスの特産品であるリュバーブのワインをジュレ状にしてのせます。さらに花びらを丁寧に飾っていました。
 奥のお皿は先ほど紹介した野菜の出し汁にレモン汁、レモンのコンフィのピュレとプロエスプーマを混ぜた冷たいムースです。こちらにもリュバーブのジュレ、香草のオイルを飾ります。
 野菜のうまみがたっぷりで様々な食感や優しい出し汁のうま味、リュバーブのジュレの酸味がアクセントとなっていました。
 研究生たちは細かい手元の作業を食い入るように真剣に見ている様子やシェフの作業の素早さに驚いていました。フランス語も聞き取れてきているので積極的に手伝っていました。


Homard et fleur de courgette Brioche émulsionnée

 2品目はオマール海老と花ズッキーニの1品です。当日花ズッキーニの良い状態の物がなく代替えでクルジェット・ヴィオロンを使ってつけ合わせを作っていただきました。
 ある食材で臨機応変に対応できるのも知識や技術があるからできることだと改めて感じさせられました。

 まずメインのオマール海老は手早く捌いて、尾の身の部分以外の殻を使って出し汁を取ります。

 尾の身は半割にしてぶどうの枝で燻製香をつけ半生に仕上げます。

 つけ合わせのクルジェット・ヴィオロンは2種の方法で調理します。まず、表面に焼き目をつけるように高温で焼き、器に見立てるため表面を削ります。
 次に詰めものを作ります。クルジェット・ヴィオロンを小さな角切りにし、炒めます。そしてナスはアルミホイルに包んでオーブンで火が通るまで焼きます。その後、中身を取り出しぶどうの枝で燻製香をつけ、炒めたズッキーニと合わせケイパーなどを加えて調味します。繋ぎとして卵白を加えていました。

 先ほどの器に見立てたクルジェット・ヴィオロンに詰め物を盛りつけます。上にケイパーの葉の酢漬けを飾っていました。
 ソースは2種類でオマールの出し汁をしっかり煮詰めて作ったソースと、ズッキーニをジューサーにかけて煮詰めオリーブ油を加えた緑色が鮮やかなフレッシュ感のあるソースを作っていました。

 別添えでトーストしたブリオッシュのサバイヨンです。
 まずトーストしたブリオッシュ生地、牛乳、生クリーム、アルコール酢をミキサーで細かくし、調味します。エスプーマの機械に入れて温かい所に置きます。仕上げにトーストしたブリオッシュをすりおろしていました。

アシスタントをしている研究生もシェフとのコミュニケーションに慣れ、積極的に動けるようになってきました。

 地元ランスの食材をたくさん活用されていて、研究生は初めて見る食材が多く興味津々な様子でした。また、たくさんのテクニックと繊細な盛りつけを見ることができ、シェフの技術を間近で見ることができ学びが多い講習でした。
 理論的で説得力のある講習が受けられて新たな刺激になったと思います。本科授業や卒業制作に向けてこの考え方を生かし、より良いシャトー生活が送れるといいなと感じました。

最後にミルシェフ、馬場シェフ、アシスタントを務めた研究生と記念写真を撮りました!