調理外来講習 M.Chikara YOSHITOMI氏(吉冨 力良氏) / Restaurant L'AMBROISIE(レストラン・ランブロワジー)
今回、調理外来講師としてお越しいただいたのは、パリ4区のヴォージュ広場に面するミシュラン3つ星のお店、Restaurant L'AMBROISIE(レストラン・ランブロワジー)でシェフを務める吉冨 力良氏です。
吉冨氏は熊本県甲佐町出身で九州の調理専門学校を卒業後、2008年に渡仏し、2014年から現在までレストラン・ランブロワジーにて勤務。2017年にはパテ・アン・クルート世界選手権優勝、そして2020年に現レストランの料理長に就任します。2022年にはフランスの権威ある料理コンクールであるプロスペルモンタニエで3位に入賞されています。
1986年からミシュラン3ツ星を獲得し続けているランブロワジーで日本人にしてシェフを任されている吉冨氏の授業に研究生らも講習が始まる前から興味津々でした。また吉冨氏から、「研究生の皆さんには着席スタイルではなく、立ちながらより近くで自分の授業を受けてもらいたい」と話があり、いつもの講習よりも距離が近くなり食材の状態や香りも確認しやすく質問もたくさん飛び交う楽しい授業となりました。
今回の講習は3品作成していただきました。
吉冨氏の食材や料理の考えから、「シンプルな材料や作り方でも、状態や品質のいい食材を適切な調理をすることでとてもおいしい料理になる」といったテーマの講習でした。
Gougère
1品目はグジェールというシュー生地を使った塩味のおつまみです。
まず牛乳、水、バター、塩を鍋に入れ沸騰させて、そこにふるった小麦粉を加えて水分を飛ばしながらしっかりと粘りが出るまで火にかけます。その後シェフこだわりの旨味の強い卵を加えて、仕上げにコンテチーズとエスプレット唐辛子を加えて絞り出します。
表面に卵を塗り、オーブンに入れて約11分間焼いて完成です。
「焼きたての一番美味しい状態のものを食べてもらいたい」というシェフの考えからオーブンから出てすぐの熱々のグジェールをみんなおいしそうにほおばっていました。
焼き加減にもこだわりがあり、表面はカリッと香ばしく、シュー生地の中はしっとりとやわらかく焼き上がっていました。
Purée de carotte
2品目はにんじんを使ったピューレです。
にんじんは中心の水っぽい部分をしっかりと取り除き、皮のまわりの甘みが強い部分だけを使いました。
もちろん中心の部分も他の料理や野菜のブイヨンに使用したりと無駄にはしません。
そのにんじんをバターでじっくりと炒めて甘さを引き出し、にんじんと相性が良いスパイスのクミン、牛乳を加えてから蓋をしてにんじんがしっかりと柔らかくなるまで火を通します。にんじんが柔らかくなればミキサーにかけてピューレにします。その後さらに煮詰めてにんじんの味を凝縮させます。完成後、こちらもすぐに一番いい状態で試食をしました。にんじんの濃厚な甘みとほのかなクミンの香りの組み合わせに研究生たちも「シンプルな食材だけでこんなに美味しくなるなんて!」と驚きの表情でした。
Sorbet à la fraise
3品目はいちごを使ったソルベ(シャーベット)です。
いちごはヘタを取り、それぞれの大きさを揃えるようにカットし、グラニュー糖をまぶしていちごの水分を出します。その後ミキサーにかけてピューレにし、レモン汁とカシスのリキュールを加えて味を調え、アイスクリームマシンにかけてソルベにします。こちらも同じく出来立てのいちごのソルベをすぐに試食しました。シンプルな工程ですが、いちごの良さが引き立つように、レモン汁やリキュールを使ったソルベに研究生たちも美味しさで笑顔が溢れていました。
シェフがいるレストランではアラカルト(単品メニュー)の提供となっており、その場のお客様の要望に答えて、常にお客様が満足する料理を提供されています。そのレストランの雰囲気を研究生が少しでも体験できる講習になったのではないかと思います。そして吉冨氏の食材に対する細かな考え方や日本人シェフならではの感性に研究生たちもたくさんの刺激を受けたことでしょう。
最後にシェフとアシスタントを務めた研究生たちで記念撮影を撮りました!