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辻調グループ フランス校

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調理外来講習 / M.Alain PERRILLAT MERCEROT (アラン・ペリヤ=メルスロー氏) / Atmosphères (アトモスフェール)

フランス校教壇から

2024.05.31

今回講習に来ていただいたのは、フランス東部サヴォワ地方にある湖、Lac du Bourgetブルジェ湖付近の小高い山の上にあるレストラン「Atmosphères」(アトモスフェール)のAlain PERRILLAT MERCEROT(アラン・ペリヤ=メルスロー)氏です。

こちらのレストランは2009年よりミシュラン1ツ星を獲得されており、2024年時点では、世界でも528軒のレストランしか受けていない、サスティナブル(エコロジーに積極的に取り組んでいる)なレストランの称号『グリーンスター』も獲得されています。また、2009年に「世界のレストランベスト500」にも選出され、さらには、フォワ・グラの名門ルジェ社より最優秀若手料理人として表彰されたこともあり、マルチな活躍をされている実力派シェフです。
ペリヤ氏のテーマは【地産地消】で、土地の食材や季節の食材を用いて構成されています。中でも、ブルジェ湖から獲れる新鮮な淡水魚を使った料理を得意とされています。

今回の講習ではうさぎを使った1品を作成します。
そして、所々では地方で採れた材料を使われ、料理へのこだわりをお話いただきました。

まずは、丸々1匹のうさぎを捌いていきます。
今回はrâbleラーブルと呼ばれる背肉の部分を使用します。フィレ肉を包むようにしてある脇腹肉(panoufleパヌフル)をつけたまま捌き、厚みを均一にするように叩いて伸ばします。そこににんにくと香草のピューレで香りをつけたエスカルゴを包み込みます。
ヨーロッパでは、よく山の食材と海の食材を合わせます。今回も少し淡白な味わいのうさぎに、アクセントとしてにんにくで香りをつけたエスカルゴを合わせられたそうです。

最後に、豚の網脂で形を整えるように包んでいきます。
しっかりと水分をふき取り、塩とこしょうをして、きれいな焼き色を付ける様に、澄ましバターで表面を焼き、オーブンに入れて火を通します。
切った断面が、虹色に輝くようなnacréナクレという火通しで仕上げます。
この火通しは、しっとりとジューシーに仕上がるので、うさぎとは非常に相性が良いです。

つけ合わせは、Chou-pointuシュー・ポワンチュというキャベツを使用します。
その名前の通り、「先が尖った形のキャベツ」です。春先になるとマルシェに並び始め、葉が甘くて柔らかいので春キャベツのような使い方をします。ヨーロッパでは、サヴォワ地方やドイツでもよく食べられています。
このキャベツを1枚ずつ剥がし、塩ゆでをします。一度氷水に落とし、しっかりと水分を取ったら元の形に戻すように外側の色の濃い部分から重ね、四角くなるように整えます。そして乾いた布巾で包み、再度しっかりと水分をきり真空パックにしておきます。
最後に1人前に切り分けてクルミオイルをかけ、温かい場所でゆっくりと温めておきます。
クルミの産地でもあるGrenobleグルノーブルが近いので今回も料理で使用しています。他にもクルミのヴィネガーもよく使用されるようです。

もうひとつのつけ合わせは、うさぎのリエットです。
うさぎの脚肉や、豚ののど肉を白ワインでマリネしてから火を通してペースト状にし、粒マスタードを加えて型詰めしたものです。クラシックなフランス料理の「Lapin à la moutardeうさぎの煮込み マスタード風味」のイメージで作られています。一般的には、レストランでアミューズとして提供されることもありますが、今回はこのリエットの表面を澄ましバターで香ばしく焼き、つけ合わせとして使用します。
ソースには、mousseron St-Gerorgeムースロン・サン・ジョルジュという野生のきのこを使用します。和名はシバフダケと言い、芝生や牧草地に生息しており、アーモンドのような香りがするきのこです。日本ではきのこの旬は秋のイメージがありますが、このフランスでは春に出回るきのこも多くあります。このムースロンは出回る期間が短い為、研修生は今回試食出来るいいチャンスでした。
ムースロンはバターでソテーし、うさぎの骨から取ったソース(jus de lapinジュ・ド・ラパン)を加え軽く煮込みます。最後にバターを溶かし込んで完成です。このjus de lapinは、ゼラチン質を加える為に、フォン・ド・ヴォを使い、味が凝縮するようにしっかりと煮詰めてあります。
仕上がったソースは、ムースロンの香りと、艶っとした色合いがとても綺麗でした。


最後に、研修生からお店の紹介や、仕事内容、休日の過ごし方を話してもらいました。やはり1番苦労しているのはフランス語でのコミュニケーションの様です。ですが、積極的に話していかないと仕事が回ってこないので、ジェスチャーを交えながら日々頑張っているようです。研究生へは、「実習中やフランス語の授業では積極的に話して、研修に出る前からフランス語を話す練習をしておく事が大事」だという自身の経験からくる貴重なアドバイスをもらいました。

最後にシェフと研修生、アシスタントを務めた研究生で記念撮影を行いました。


こちらは全員で記念撮影です。