通信教育講座受講レポート

宮本さんの受講日記 フードライター、料理研究家 宮本さやか製菓技術講座

イタリアのトリノから製菓技術講座を受講している宮本さやかです。この通信教育講座を受講しようと思った一番の理由は、以前に受講した日本料理がとても楽しくてファンになってしまい、また別の何かを受講したいと常々思っていたことです。それに加えて職業柄、プロのパティシエにインタビューすることもあり、そんなとき、こちらにも知識があるほうが取材しやすいということ。イタリアで日本人駐在員の奥様方対象にイタリア料理のお料理教室を開催していますが、そのレシピ作成にも役立つだろうと思ったこと。そしてなによりおいしいお菓子を自分で作って食べたかったことです!みなさんも一緒にがんばりましょう!

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今回のテーマは…

第1課 スポンジ生地

第2課 スポンジ生地を用いた菓子

いちごのショートケーキ

テキスト一式が無事イタリアまで届き、張り切ってパッケージを開くと、第一課はスポンジとある。「よっしゃ、これはもう、楽勝」と内心ニヤリとほくそ笑む私。

なぜ楽勝、だなどと傲慢なのかといえば、スポンジ生地にはかなり自信を持っていたからだ。東京の某有名パティシエのレシピを愛用するようになってもう10年以上だが、常に失敗もなく大きく、しっとりと膨らんでいた。このレシピは専門的な製菓読本から主婦向けのレシピ本などいろいろ試した結果、雑誌『ダンチュウ』に載っていたものに行き着いたのも。一工程ずつ写真入りで、とても詳しく説明してあったのも分かりやすく、お菓子作りは素人同然だった私も、何年も同じレシピで作り続けるうちに、スポンジは絶対失敗なし、という自信がついていた。数年前に憧れのメランジュールを買って以来、ますます楽に、失敗なくできるようになった。

ところがDVDを観てみると、知らなかったプロの技がいくつも出てくる。たとえば最初に「粉をふるってから計量する」とか、そのふるうやり方とか。卵と砂糖を湯煎にかけて温めるのは、砂糖を溶かすことが目的だと思っていたが、それに加えて「温めることで卵のコシが切れ、さらっとした状態になり、泡立ちやすくなる」なんてことも初めて知った。最後に加える溶かしバターは「熱いまま入れなければ、冷たい生地に加えたときにバターがさらに固まってしまい、生地の流動性がこわれる」というのは晴天の霹靂、という気分だった。今までは、熱いままだとなんとなく気泡が潰れてしまうような気がして、できるだけ冷ましてから加えていたからだ。こういう、なんとなく見逃してしまうような小さな疑問も詳しく、わかりやすく説明してあって、やっぱりこの教材はいいなあと再認識。日本料理に引き続いて受講してよかったと再認識。

イメージ:スポンジまずはパータ・ジェノワーズに挑戦することにした。適当なサイズのセルクルを持っていないので、いつもスポンジを焼くときに使っている、底が抜けるタイプのケーキ型を使うことにした。底の板を使わず、先生と同じように紙を底にまきつければいいだろうと思ったのだが、紙を先生のように巻きつけることができない。映像で見ると簡単そうだが、やってみると難しい。どうしても紙がするする動いてしまうので、紙は断念して底板を使って焼いてみることにした。今までは型の底と内側にサラダオイルを塗り(紙を定着させるため)、オーブンペーパーを底と側面に貼り付けていたのだが、今回は、紙は一切使わないで試してみることにした。
基本的なことは私の今までのレシピと違いはないのだが、テキスト通りに正確に作ろうと思うと、途中でノートを見たりして作業の流れが滞る。いつもと勝手が違い、スムーズに作れない。一度DVDを見、テキストを読んだだけですぐに実践しようとする短気は私の悪い癖だ。何度も見て、頭に叩き込んでから行動に移さないと、結局覚えたことにならないし。  
イメージ:いちご準備した型に流し込んだ生地を見て、何か違うなあというかすかな予感がやっぱりする。
焼きあがってみると、予感は的中、あまり膨らんでいない。これでは先生のように3枚に切ることは難しそうだ。

イタリアに来てから、生クリームがきれいに塗れずに悩んでいた。何度やっても表面がぼそぼそになってしまうのだ。だが今日DVDを観て、「パレットで作業を何度もしているうちに泡立てるのと同じ状態になり、ドンドン固くなる」と聞いてなるほど!しかも、どのぐらい柔らかめにたてておくとよいのかを映像で見せてくれるので、感動。やはりこれは、文字だけのテキストではありえない収穫だ。
イメージ:ケーキところがDVDと同じ状態にたてて作業を始めたつもりだったが、1回パレットでならしただけで、あっというまにクリームがボソボソになった。イタリアの生クリームの脂肪分は38%程度で、そのへんに違いが出てきてしまうのだろうか?次にやるときはもっともっと柔らかく立ててやってみよう。でも、生クリーム自体が日本のものとイタリアのもので違うのだったら、イタリアのプロにもいつか事情を聞いてみたいところだ。彼らは一体どんなふうに生クリームを扱っているのだろう?

大きさや形の不ぞろいなイタリアのイチゴたちを苦労して飾り、イチゴがあまりきれいでない分をベリーで補い、イメージ:ショートケーキなんとかケーキの形に出来上がった。切って食べてみると、とてもおいしい。これまで作ったスポンジでは、それだけ食べるとおいしいのだが、クリームを塗ってケーキにすると、なんだかずっしりと、少し重たい感じがして、実はそれが秘かな悩みの種だった。それに比べて今日のものは、軽く、すっと口の中で消えていくような感じ。ふくらみ自体は悪いのに、いったい、この違いはどこから来るのか?
やはりプロと言われる人たちの仕事にはそれなりの理由があるのだ。そういう秘密をわかりやすく見せてくれる辻の教材、やっぱりすごいのかも!?

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