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料理のチカラプロジェクト

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地域活性に協力!「地元食材を使った料理セミナー」を熊本で開催!

地域連携

2013.08.28

2012年の3月~2013年2月にかけて、4回にわたり
辻調グループは、旅行新聞新社とともに、熊本県観光連盟主催の
「地元食材による料理セミナー」 に企画・協力しました。

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熊本県内の各エリアで、それぞれの地元食材を生かした料理を先生方が紹介するこのセミナーは
業界紙「旬刊 旅行新聞」にも連載されました。

参加者は、旅館・ホテルの女将や料理長、高校生などを対象に、考案レシピの実演はもちろん、味見もしてもらい
普段と目線を変えて、地元食材の活用方法を学ぶことで、宿の料理メニューの参考にしてもらうことや
若い世代に料理への興味を持ってもらうことを目指しました。
セミナー内容ついては、関係者の方と打ち合わせをし、リクエストなどにも応える形での企画となりました。

第1回は、天草エリアのホテルアレグリアガーデンズ天草にて開催。

講師は西洋料理の杉本昌宏先生が務めました。 
天草では、お刺身などで提供した後に大量に出る伊勢海老の殻を利用して、アメリカンソースと呼ばれる甲殻類のソースの作り方と「天草産伊勢海老の煮込みアメリカ風」の実演。フランス料理をもっと気軽に、それぞれの持ち場でアレンジして利用してみようと思ってもらえるようにと、とても簡単にできる、エスカルゴバターも紹介しました。エスカルゴバターは、クリーム状にしたバターにニンニクとパセリエシャロットのみじん切りを加えると言う手軽さに加えて、冷凍保存ができるなどの使い勝手の良いのがポイント。実演ではあわびのステーキにエスカルゴバターをかけたものを披露し、会場の味見用には天草産のタコにバターをあわせたものを用意しました。

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リクエストのあったデザートについても、サツマイモの一種、にんじんかんしょを使う場合の調理法や、チェックイン時のお茶請け、食事のデザートとシーン別のアドバイスも行いました。

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第2回は、阿蘇エリアの阿蘇ホテル一番館にて開催。

第1回に引き続き、杉本昌宏先生が担当。地元からリクエストのあった「あか牛」などを生かした料理として、「牛テールのゼリー寄せ、高菜入りタルタルソース添え」などを紹介しました。ロースなどの部位ではなく、活用しやすいテールを使い、地域性を高めるためにタルタルソースに高菜を加えたものを提案。ゼリー寄せは、ゼリー部分のだしをメインに食べる場合と、具材のつなぎとして使う場合があるので、その時に応じてゼリーの味は変わってくることや、高菜入りのタルタルソースについても、マヨネーズに高菜を加えるだけでは、味のバランスが崩れてしまうため、ゆで卵を加えて調整することなど、調理の際の細かいポイントについても説明しました。

その他にも、西洋料理では、料理に砂糖はほとんど使わないので、デザートで甘いものを出すけれど、日本料理では料理に砂糖が入っているので、理論的にいえば、無理にデザートを出す必要性はないなど、料理の文化的な側面にもふれ、幅広い内容で参加者を引き込みました。

もう一品は、基本的な肉の焼き方を紹介するために、イタリア料理のタリアータを実演。塩をふること、また肉を冷蔵庫から出して室温に戻すことなど焼き方のポイントを説明し、ステーキ1つでも、工夫すべき点は多く、旅館での陶板焼きを例にあげ、仲居さんがお客様にかける一言で、もっと美味しく食べてもらうこともできると、サービス面との連携についてもアドバイス。参加者に自分の舌で実感してもらうため、塩をふらずに低温で焼いたものと、塩をふって高温で焼いたものを同じポン酢ジュレで食べ比べてもらうこともしました。最後に「新たなものを作るというのは、至難の業。すでにあるものや、他地域で成功しているものを参考にして、地域の特産を組み合わせていければ、独自のものになるのではないか」ということをお伝えしました。

第3回は、山鹿エリアの山鹿温泉清流荘にて開催。

地元からのリクエストもあり、日本料理のセミナーとなりました。
今回の講師は、ニューヨーク日本総領事館で公邸料理人を務めたこともある日本料理の中村泰弘先生。

中村先生は、一つのものをアレンジしてどのくらい発展させられるかが重要だと話し、今回は日本料理の基本的な調味料で、保存も効く味噌を使ったものを紹介しました。まず、「赤練り味噌(赤玉味噌)」と「白練り味噌(白玉味噌)」を使った料理として「フォアグラの入った赤練り味噌ソースの山鹿牛フィレステーキ」や「山鹿野菜の和風みそグラタン」などを披露。甘くした味噌を、「桜味噌」と呼ぶことを紹介し、赤味噌を桜味噌として、山鹿エリアにある「さくら湯」に絡めた提案も行いました。

赤練り味噌の実演では、会場内から高校生をアシスタントとして、作業を実際に体験してもらい、忙しい厨房なら、時間はかかっても、湯煎でもできることを説明。湯煎なら、焦がす心配なく人がついていなくてもできるといった状況に応じたアドバイスもしました。

山鹿牛フィレステーキは、大人数にも対応できるレシピを紹介、白練り味噌を使用した料理「山鹿野菜の和風味噌グラタン」の白練り味噌に生クリームを加えた「和風ホワイトソース」は、値段を抑えたければ牛乳、ヘルシーにしたければ豆乳でも合うこと、また味噌和えはクリームチーズを加えることで一味違ったものになるなど、幅広いアレンジ方法やバリエーションを紹介。地元からリクエストがあがっていた「米粉」についても、「米粉」を生地にして、白練り味噌と産物のみかんなどを入れたオリジナルのスイーツにしてはどうかという提案をしました。

実演後、「海外の方に喜ばれる日本料理は」という質問に「寿司やすき焼き、天ぷらなどがやはり人気だが、日本と同じ味付けでは好まれないこともある。お吸い物などはかつお、昆布ダシだけでは満足してもらえないことも多く、鶏ガラを利用したこともある」と中村先生は、海外経験を踏まえて回答しました。

最終となる4回目は、球磨エリアの人吉温泉、鍋屋本館にて開催。

「地元食材を使った日本料理とフランス料理のコラボレーション」をテーマに、

杉本昌宏先生と中村泰弘先生が担当しました。

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西洋料理・杉本昌宏先生   日本料理・中村泰弘先生

まず、中村先生が地元のヤマメを使い、大人数に対応する旅館でもアレンジできる「やまめのホイル焼き」を実演。
一方、杉本先生は、「燻製」を紹介。木材の粉状を圧縮して固めた「スモークウッド」と、段ボールで、その場で燻製器を作成。簡単に作れることをアピールしました。今回提案した「冷燻」は、低い温度の煙で燻製ができるので、煙の香りだけつき、その後は好みに応じて火を通すことができる利点があり、それを活かした地元産のアユを燻製にした料理を実演しました。

また、旅館の料理は、和食ベースのものが多く、その間に洋風の品が差し込まれると、嬉しいこともあるが、味のポイントにはならないこともあると指摘。味のポイントというのは、味の濃さで、その点で中華は味が濃く、少量でポイントになるので、旅館の料理に中華風のものを挟む発想をしてもよいのではないかと示唆し、リクエストのあった焼酎のデザートについては、「イチゴだったらデザート、トマトだったら料理の一品に。アレンジのヒントになれば」とイチゴとトマトを入れた焼酎のゼリーを配りました。

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最後に、杉本先生は「食べたときに自分が感じたことを大切に、日々のまかないなどでスタッフに味見をしてもらうなど、さまざまなものを試していけば大きく発想が変わるチャンスになると思う」とエールを送りました。

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各回の参加者アンケートをみると、満足度はとても高く、4回のセミナーで、のべ330人以上の方が参加され、それぞれに今回のセミナーで学んだことを現場で活かしていただけたらと思います。
また、次回開催時はスイーツへの要望が高く、どの宿もスイーツの強化をはかっていることが感じられました。

私たちが、これまで積み重ねてきた技術や知識を、地域活性のために役立てることのできるよい機会となりました。
これからも、さらに研鑽を深め、さまざまな形で社会活動に寄与していけたらと思います。

※写真提供:旅行新聞新社