通信教育部ブログ

受講生日記

日本料理 第3課・第4課 魚の扱い方(1)(2)

 

体験記第2回の今月は「魚の扱い」について。ざっと言えば、生魚を適正に処理し、お造りができるまでになるお勉強である。

 
魚を水洗いし(ウロコを引き、内臓を取り出し、きれいに水で洗うこと。調理にかかる前段階の下準備)、三枚におろすのは、得意なのでリラックスして取りかかれる今回の私。なぜ得意かというと、前回も書いたように15年ほど前に日本料理講座を修了した後、トリノの和食店で1年ほど、魚をさばく手伝いをさせてもらったことがあるから。他の和食メニューよりも、"数をこなした"という自信が多少ある。

 
一般的に、海外、と大くくりにしては失礼かもしれないので、イタリアの、和食店のほとんどは、外国人(特に中国系)経営で料理人も外国人というケースが多い。別に外国人だってきちんと学んでいい料理をしてくれれば大歓迎だが、どこで誰に習ったのか? 怪しい技術を駆使した日本料理もどきでがっくり、という事ばかり。

 
ところが私が修行したお店には、その当時、日本で10年キャリアを積んだ日本人の寿司職人さんがいたのです。だから私は辻調の通信教育で基本を学んだ後、実践を重ねられたというわけ。鮭のウロコをすき引きにしたり、オコゼのような変な形(?)の魚をさばいたり、うなぎをさばいたり、いろいろと経験ができた。日本に暮らしていれば、魚を自分で買ってきて練習するなど、腕を磨く方法はあるだろうけれど、魚がとても高く、種類も少ないイタリアに暮らす私にとっては、あれはなかなかいい方法だったなあ、と自画自賛である。

 
そんなわけで、満を辞して、まずは鯛の平造り、そぎ造りに挑戦しようと思い、だったらテキスト通り鯛でしょ、と、普段買ったことのないPAGRO(パーグロ。真鯛)を、魚屋さんに注文して取り寄せてもらった。普段買ったことがないのはあまり売られていないのと、家庭で消費するにはサイズが大きすぎるから。買いに行き、これだよ!と言って渡された時に、鯛の目つきがちょっと気になった。眼球の膨らみが、今一つぷっくりしていないように見えたのだ。でもなんとなく言い出せず、そのまま家に持ち帰って水洗いをしてみると、お腹にどす黒い血がまっている。エラの色も鮮やかさがない。嫌な予感はますます膨らみ、さて、三枚におろしてみると、この通り。


私の包丁さばきが悪いのももちろんあるけれど(得意とか言っておいて・汗)、 
身がぶよぶよして、刃を入れるところから、肉が割れていく。

 
 
イタリアには魚を釣った後、日本のような野じめ、活じめというような処理をする習慣はないと聞く。ずいぶん前に、豚の屠殺を見学に行ったことがあるが、動物に死の恐怖を与えるとアドレナリンが身体中を巡って肉が固くなるからと、屠殺するのを悟られないようにとても気を使っていた。それが本当かどうかはわからないが、さすが肉食文化の国だなあと思った。一方で魚にはあまり気を使わない。イタリアは島でなく半島。でも三方を海に囲まれ、大きさも形も日本によく似た細長い国だ。なのに魚に対しての文化がこんなに違うのはなぜだろう? と不思議に思う。

 
さて、文化が違うのは仕方がないので、翌日、もう少しマシな魚を買って、やり直すことに。調理したものは在住日本人の友人たちに食べてもらうことにしているから、あまりひどいものは出せないじゃない。今度は使い慣れている(第1課でも使用した)ORATA(オラータ。クロダイ、またはチヌ)を、私なりに厳しくチェックして買ってきた。


今度は目もぷっくり、お腹も硬く、イキが良さそうだ。 
さばいてみると、身も締まっている。

 

さっそく三枚におろしてみると、今度は身が締まっていて、いかにも美味しそう。頭は梨割りにして、骨やヒレと一緒に潮汁の復習。そうだ、お造りに仕上げる前に、けんや、つまの準備もしなくては。

かつらむき。 
1ミリのつもりでも、ちぎれるのを怖がるとあっという間に3ミリぐらいになってしまうし、 
1ミリ1ミリと唱えながら包丁を進めると、極端に薄い部分ができて、ポキっと折れてしまう。


 
1ミリのかつら剥きで1ミリに切ったつもりだったけど、写真で見るとまだまだ太い。

 

かつら剥きをしてけんを切り、より大根とより人参(ウドはないので)を切ってみて実感したのが、日本の野菜は全般的に水分が多くて水々しいこと。だから大根やキュウリは噛めばシャキッ、パリッとしていて美味しいし、かつら剥きも美しく仕上がるのではないか? 一方雨があまり降らないイタリアの野菜は、土の養分が濃いから味や香り、甘みが濃くて、例えば人参や葉野菜などとても美味しいけれど、水分は少なくてかつらむきには適していないような気がする。自分の下手くその言い訳なのだが、逆に言えば、この野菜でも上手にかつら剥きができるように練習したら、日本ではすごいことになれるのではないか?(何に?)

食べにきてくれた友人に前菜としてお出しした刺身こんにゃくに、失敗したよりにんじん(よれてないけど・笑)を飾る。イタリアの人参は、みんなとても細くて、太くても直径2-3センチなのでかつらむきは至難の技。


シマアジ食べたいなー、でもイタリアにはないもんなーと泣きながら第4課へ。カツオは今の時期は手に入らないので、出回ったら絶対やってみようとノートだけ取り、今回は鮪角造りに挑戦。鮪のお刺身はイタリアでも人気なので、比較的美味しいものが手に入るのだが、難関は山芋。アジア、アフリカ系食材を扱う中国系食材店へ行けば手に入ることもあるのだが、今回はアボカドで代用してみることにした。イタリア料理のおしゃれレストランでよく登場する、鮪とアボカドのタルタルからアイデアを頂戴しました。

よく熟れたアボカドを潰してすり鉢ですり、鮪の上にのせて海苔しょうゆを添えた。 
飾りには失敗したより大根。人参よりは長く切れて多少マシだけど、よれていなくて、玉ねぎみたいだ。

こちらは山芋と同じように、アボカドをすったところに卵白を入れてみたら、ふんわり感が出ていい感じだ。 
温泉卵を乗せたら色鮮やか。 
温泉卵をこんなふうに飾りに使うなんて知らなかった。

 
お造りは比較的得意なんて偉そうに始めた今回だったけれど、やればやるほど、まだまだ練習が足りないのを実感してちょっとヘコむ。もちろん、先生や、毎日お店で働いて修行をしている人たちにかなうわけはないのだけれど。また来月も頑張りまーす。

得意といったっけれど、写真に撮って見ると、切り口は汚いし曲がっている。 
プロの方々は一体どれぐらい修行をこなし、あんなに美しい料理を作るのだろうとため息。

 

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