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第13課 材料(1)小麦粉/第14課 ソフト系のパン(1)

通信教育講座受講レポート

宮本さんの受講日記 フードジャーナリスト、料理研究家 宮本さやか製パン技術講座


製パン技術講座を体験中の宮本さやかです。イタリアのトリノに暮らしていますが、辻製菓専門学校にいるかのような中身の濃い授業が受けられること、教材がとてもわかりやすくて楽しく続けられることに惹かれて、数年前に日本料理の講座を履修したことから始まり、次に製菓、今回の製パンと通信にはまっています! フードジャーナリストという仕事をする私にとって、たくさんの料理人や業界のプロの方達を取材する時に、ここで得る専門的な知識はとても役に立ちます。そして在住日本人の奥様方にイタリア料理を、イタリア人に日本料理を教える仕事もしていますが、その時にもここで得た専門知識が頭の中にあることで、自信を持って仕事ができています。

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今回のテーマは...

第13課 材料(1)小麦粉


第14課 ソフト系のパン(1)


製パン技術講座を受け始めて数ヶ月、ようやく13、14課まで進んで来た私だが、今回は小麦粉について、である。
ひえー、緊張するー。だって強力粉や薄力粉の違いなど、論理的にはわかっても、実際に使いこなすとなると、そう簡単にうまくいくかどうか。しかも私はイタリアで孤軍奮闘中である。日本で先生や同級生(?)たちが使っているだろう「フランス粉」も「強力粉」もイタリアには売っていないし、売っていたとしてもタンパク質の含有量などいろいろ違うだろうし、ネットで検索しても情報は出て来ないし。それぞれの粉の特性を見極め、自分の作りたいパンに合わせた配合を見つけるなんて、いったいできるのだろうか?

ちなみにイタリアで売られている一般的な小麦粉は「デュラム小麦粉」と「小麦粉00タイプ」の2種類。
小麦粉00タイプは、日本の小麦粉(強力粉や薄力粉)の原料でもあるいわゆる普通の小麦(パン小麦)を粉にしたもので、00というのは精製の度合をあらわしている。日本の薄力粉と似た感じで、スポンジケーキやクッキー類、てんぷらなどに活用。まあまあの結果を出せている。
一方、デュラム小麦粉は、日本のみなさんには乾燥パスタの原料「デュラムセモリナ」として知られているもので、単に「セモリナ粉」と呼ばれることも多い。パン小麦の粉に比べると粒子は粗くて、色も黄色い。これを私は強力粉の代わりとして普段のパン作りやパイ生地作りなどに使用して、まあなんとなく、それらしくできている。

というわけでまず「ハードトースト」に取りかかる。こういうパンはイタリアにはないから、おいしくできたらいいな。
これを作ろう、と決めてDVDで勉強したその日の午後、たまたま取材で出かけたパン屋さんに「強力粉」が売っているのを発見。さっきも書いた通り、イタリアで「強力粉」は一般的でなく、売っているのを初めて見た私は「おお! これはハードトーストを上手に作りなさいという天の啓示に違いない!」と早速購入。翌朝、娘を学校に送り出してから早速取りかかったのだが。

レシピ通りの分量でこね始めると、生地がドロドロなのである。
??? 調整水はもちろん取り置いてある。脱脂粉乳がないので水を牛乳に置きかえているが、水分量が必要以上に多いとは思えない。なにか計算を間違えたかな?? と思うほどドロドロである。しかたないので、フランス粉の部分(今までの課で硬質小麦粉8割・軟質小麦粉2割デュラム小麦粉8割、普通の小麦粉2割で配合してきて、まあまあの結果)を少しずつ足して、なんとかまとまりのある生地に仕上げた。

発酵、成形などをすませ、最後のホイロ。ここが一番緊張の瞬間である。なぜかというと、前回も型を使ったパンは予想されたほど上に膨らまなくてちょっと残念だったからである。今回のこのハードトーストはなんと「型からちょっとはみでるぐらい」膨らんだら焼成に入るということ。ドキドキしながら70分たったホイロの中をのぞいてみると。

ガーン。全然膨らんでないじゃん。だけど触った感じの生地の感触は、もう焼いてくれと言っている感じ。もしかして、焼いたら一気にバーンと膨らんだりして? と淡い望みを託して焼いてみたものの、やっぱり。できあがったのは型の3分の2ぐらいまでしか膨らんでいない、潰れた食パンであった。

なにがいけなかったのだろう? きっとこの、イタリアの強力粉が何か違うに違いない。
ネットで調べてみると「同じ強力粉でもグルテンの質が違うと吸水率が10%以上違う場合がある」!! 生地ベトベトの理由はこれだったのだ! そして「小麦粉の生産国の違いなどにより、タンパク質含有量が同じでも、焼き上がりのボリュームに差が出ることが多い。特に食パンのような型焼きのパンにすると、ボリュームの違いがはっきりと出る」!!

よし、今度はイタリアで「よく膨らむ」と評判のマニトバ粉を強力粉の代わりに使ってみることにする。
イタリア語のサイトで見ると、マニトバ粉は軟質小麦から作られるが、タンパク質の含有量が高く、「強力粉」として使用されることが多い、とあるじゃないか。私はいつも、パンを焼く時に全粒粉とこのマニトバを混ぜて焼いている。全粒粉のどっしり感がマニトバを加えることでふんわりして、とても美味しいパンができるのだ。

マニトバ粉を前述の強力粉の代わりにして作ったハードトーストの生地は、ホイロが終了した時点で、型からはみ出るほどではなかったが、最初の強力粉のものよりずっと持ち上がっていい感じ。

ところが! 最後のホイロ70分はこの粉には長過ぎたのか? オーブンに入れる前に触ってみると、いやーな予感。発酵し過ぎの、あの、力を失った生地の感触がほんの少しだがある。
恐る恐る焼いてみるとやっぱり。焼く前はあんなに膨らんでいたのに、焼き上がりはぺしゃんこに潰れていて、最初に焼いたものと似たような結果となったのでありました(泣)。

パン作りは本当に難しい。こねたり、成形したりの技術は少しだけだが進歩してきているようで、ツォップフはとてもおいしく、かわいくでき上がった(あられ糖がなかったので、表面はシンプルになにもなし)。
けれど、型焼きパンはこれからまた、何度も何度も挑戦し、イタリアの粉でうまく焼けるようにならないといけない。小麦粉それぞれの特質を理解して、それにあったパン作りができるようになるには、遠い道のりが待っている。

 


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