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辻調理師専門学校

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「京都吉兆、徳岡先生から学ぶ!」~日本料理だけを学ぶ「新学科」ブログ7~

日本料理クリエイティブ経営学科
日本料理本科

2021.07.01

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4月に日本料理本科(1年制)日本料理クリエィティブ経営学科(2年制)が
辻調理師専門学校の新学科として開校しました。
これまで個人実習という科目を主に紹介してきましたが、
今日は講義授業である日本料理理論「会席料理の調理法と構成」いう科目を覗いてみましょう。

「ところで先生、会席料理とは何ですか?なぜ私たちはこの授業を受けるのですか?目的を教えてください。」
といった質問を学生からよく受けます。

わかりました!説明します!
会席料理は江戸時代以降に発達した宴会料理です。
茶道とともに生まれた同音の懐石料理を源流としつつ、茶ではなく酒を飲むための料理として、
変化・発達し、現在ではコース仕立ての日本料理の主流となっています。

会席料理は一般に、先付、椀、造り、焼物、煮物、揚物、蒸し物、酢の物、食事、菓子
といった要素から成り立っています。

また会席料理では「五法」と呼ばれる、焼く、煮る、揚げる、蒸す、切る
といった調理法を巧みに組み合わせることが重要です!

「会席料理の調理法と構成」では、こうした調理法の基礎を、会席料理の構成に沿って学んでいきます。
会席料理に携わる技術者は、一連の料理のバランスを常に考えています。
季節感や色彩、食感や温度、味付けやボリュームの調和を保つのが肝心だからです。

この授業の目的はこうした様々な条件に気を配りながら、
会席料理のコースを組み立てられるようになることです。
そのためにはまず、五法をひとつずつ理解していくことが大切ですよ。

へーそーなんや! 
納得、まじめに受講しまーす!


今日は外来講師として京都吉兆、ご主人の徳岡先生に来校いただきました。
京都吉兆といえば世界的に有名日本を代表する料亭です。
みなさんはミシュランガイドをご存じだと思いますが常に3つ星を獲得されているお店でもあります。
よし!準備もOK授業始めましょうか!



これまで日本料理理論では
椀物(日本料理にとって大切なだし汁を軸に構成された料理)の基礎について2回行いました。
3回目となる今日は「実際店舗で提供される椀物」がテーマとなります。
まずはだし汁について徳岡先生から
「吉兆では昆布だしにこだわっています!」
「良質の2年間熟成させた利尻昆布を贅沢に使うことで旨い昆布だしが引けるのです。
単純に昆布を水に一晩浸すだけですが、昆布の質の良さが左右します。」
昆布だしの色が薄い黄金色に輝きます ピカッ!


まずは全員が試飲「磯臭くない!」「想像した味とちがう!」「おいしい~」なんで?
良質な昆布を使い水につける時間と温度から生まれるおいしさなのです。


ポイントは忘れないようにメモしとけよ!


次はおいしい昆布だしに鰹の削り節を加えて引く「一番だし」についてです。
おいしい日本料理を作るには、まずはおいしい一番だしがなければ始まりません。
今日教えていただく一番だしの引き方は辻調で教える引き方とは違います。
一番だしの引き方は全国共通ではありませんよ。
それぞれの店の引き方とそれに応じた考え方があるのです。
どれが正解というものではありません。奥が深いぞ!


引きたての一番だしの香りが教室中に漂います~ いい香りだ!飲みたい(笑)


味はどうですか?
「昆布のうまみと削り節の香りが濃くて味付けしなくてもおいしいです。」
「材料費を考えるとこの一番だしはとても高価ですよね!さすが高級料亭」



次はおいしい一番だしを使って椀物1品作ります!今が旬の鱧を主に「鱧椀」です。
吉兆では毎年この季節になれば「鱧椀を提供しています」盛り付けの最後はアツアツの吸地
(一番だしに少量の塩と薄口醤油で味付けしただし汁のこと)をタップリかけて完成です。


椀物には漆塗りの椀が使われます。この素材の器で食べるからおいしいのです!
それからこの椀の色ですが銀色です。
なぜ?
夏の暑い季節、扇風機やクーラーがなかった時代でも鱧椀という料理はアツアツで提供されていました。
その際、見た目を少しでも涼しく感じてもらうための日本人のセンスから生まれた発想なのです。


次は「えんどう豆精進椀」を教えてくれます。
精進椀とは動物性の食材を一切使わない料理です。そのため鰹の削り節を使う一番だしは使えません。
徳岡先生それだとおいしさが半減しませんか?
「その通りでおいしく仕上げるは難しいです。そのためコクとうまみを多く持つ野菜を使うのです!」
えんどう豆、レンコン、それから椎茸は炭火で焼いて香ばしい香りをつける!


レンコンはすり卸してから団子に丸めて油で揚げる。
大きな椎茸は炭火焼き!天盛りに針ネギと花穂紫蘇、これだけでもおいしそう~


仕上げは、えんどう豆をペースト状にして昆布だしと合わせただし汁をかければ完成!
色合いも最高、きれいですね!
料理はおいしいだけではダメ、見た目の美しさもおいしさに影響することを教わりました。



「全員に食べてほしいので店で仕込んできました!」
お手伝いに来ていただいたスタッフの方の無駄のないスピーディーな動きに学生はクギづけです
「動きがヤバッ」(笑)


ではアツアツをいただきましょう!


感想はどうですか?「動物性の食材を使っていないとは思えないくらいコクとうまみを感じます」
おかわり食べたいです。それはダメ・×(笑)


最後に教えていただくのは「鶏だし」です。
「鶏だしといえば一般的には鶏ガラを使うのですが、吉兆では手羽部分を使います!」
「理由はコクとうまみが強く臭みがでにくい鶏だしが引けるからです。」



鶏手羽はトントン関節で切り落とした後、熱湯をかけて臭みを取り除く!


次は昆布だしと水、鶏手羽を一緒に火にかけコトコト10~15分煮込めば完成。
その際、途中でアクを細目に取り除くことがポイントです。


透明感あふれる鶏だしが完成!
「先生こんな短時間で本当においしい鶏だしが引けるのですか?」学生!疑っています(笑)


では、試飲して全員で確かめてみて!
スタッフの皆さん準備お願いします!「オッ、やっぱり動き早」「確かにおいしい!」
「全然生臭くない」「鶏手羽も食べたいよね!」


「吉兆ではこの鶏だしを提供するときは茄子、海老を椀種として仕上げます」
サッサっと素早い手つきで盛り付けされていきます。


海老に茄子、そしてウニ!迫力ある盛り付けですね。そして美しい。




本日お手伝いいただきましたスタッフの中で今井さん、松村さんの2人は辻調の卒業生なのです。
後輩である在校生に興味深い話しをしてくれました。
まずは入社3年目の松村さんからは、徳岡先生の視線を気にしながら(笑)
なぜ吉兆のような高級店に就職したのか、職場での人間関係、前向きに働けるコツについて
学生にもわかりやすい話しをしてくれました。
次に入社5年目の今井さんからは就職先の選び方、今学んでおくべきこと、先輩との付き合い方など
これからプロの料理人を目指す学生にとってはとても興味深い話しでした。


2人の先輩の話しに気持ちはクギづけです。良い刺激を貰えたみたいですね(笑)


最後は徳岡先生にもたくさんの質問がありました。そして包み隠さず本音で返答いただきました。
これで180分の日本料理理論が終了となりました。
徳岡先生、スタッフの皆様、お疲れ様でした。ありがとうございました。

~プロフィール~
辻調理師専門学校 日本料理
小川 
香川県出身。
私は今から35年前に辻調理師専門学校を卒業しました。
その当時と今も日本料理の基本は変わっていません!
揺るぎない基本をしっかり学ぶことが技術と知識を向上させる近道です。
日本料理に興味のある人、興味はあるけど自信のない人も大丈夫!
日本料理本科、日本料理クリエィティブ経営学科では
「難しいことが簡単にできるようになる」授業内容になっています。
どんな授業だ?これからも授業の様子はブログで紹介していきますよ!ご覧ください。