「今日はブラックBOX実習!先生✋それ何ですか?」 ~日本料理だけを学ぶ辻調 ブログ20~
2021年4月に日本料理本科(1年制)、日本料理クリエイティブ経営学科(2年制)が
辻調理師専門学校の日本料理学科として開校しました。
この2つの学科では日本料理の会席料理を中心に学びます。
今日は日本料理クリエイティブ経営学科2年生のグループ実習「ブラックBOX実習」をクローズアップします。
この実習は当日まで学生は、どんな食材を使って何を作ればいいかがわかりません!
学生にとっては不親切な実習ですが、当日まで秘密にしている理由は、
これまで積み上げてきた
調理技術の正確さとスピード!食材の特徴に応じた使い分け!会席料理の献立が考案できる知識
を限られた時間内に学生だけで考え抜いて実際に再現させるトレーニングの為なのです。
これまで習ってきた料理は勿論、学生オリジナル料理でもいいのです。
学生オリジナルって、なんかワクワクしますね
それでは、この実習のルールを説明するね!
まずはプリントが1枚配られ、赤字で囲った「共通食材」を必ず使うこと!
統一テーマは「点心弁当・椀物」です。
3つの班に分かれて、各班10人前ずつ作ります。
ところで誰が食べるのですか?
隣のクラスの学生が食べます。
ではこれから各班で統一テーマ「点心弁当・椀物」の献立を考えてください!
制限時間は60分ね!
まず1班は最終的にこのように仕上がりました。
この班は全員が留学生ですが日本の食文化を十分理解しています。
色彩バランス、盛り付けの立体感、そして器の選択も良かったですよ
2班は全員が日本人です!
今回はまず天然鯛を棒寿司にしたい。それを軸に他の料理を考案しました。
この班も盛り付けのバランス、色使い、器の選択とも良かったですね
こちらの3班は日本人、留学生が混ざっています。
この班の料理は他の班に比べて食材を複数組み合わせた
とても手の込んだ料理が多数ありました。
その分、時間もかかりましたが見事時間内に完成しました
今日は代表でこの3班の作業工程から完成までをクローズアップしていきますね。
各班とも最大60分間かけて献立、仕込み表が完成!では実習スタート。
完成までの制限時間は180分間です。
「何から始めるか」段取り力が結果に大きく影響しますよ。
まずはだし汁を引かないと話になりませんね。
並行して鯵を三枚に卸して塩を振ります。
焼物にするようですが醤油、味醂、酒を合わせたタレに30分間漬け込みます。
タレに漬けた後は、
オッ!鯵の身に深く切込みですか?なぜそうするの?
「焼き時間を短縮させて身のしまりをなくしたいからです!」
即答してくれてありがとう。確かに短時間で焼き上がりました。
切込みが模様となってキレイですね
火口では黒ゴマを使った胡麻豆腐を練る留学生を発見!
ペタペタとかなり熱そうですね。「もう20分練っています!」
もう冷やし固めてもよいのでは?
「提供まで時間に余裕がないので40分は練り、すぐに固まるように考えました」
オッ!よく考えていますね。
40分練れば確かに固そうだけど、これなら30分も冷やせば提供できそうですね
これは海老を殻付きのまま合わせだしで煮たものです。
その後、殻をむいて背中に切り込みを入れていますね。
そこに何か詰めますか?
ゆり根に卵黄を加え練りながら火を通した「ゆり根餡」を作りました。
それを海老の背中に詰めると色もキレイかなと思い考えました。
「これくらいかな?」「黄色が目立ちすぎている?」結局この状態で行くことに決定!
これは学校では教えていない料理ですが何ですか?
「これは錦玉子と言ってすり身に卵黄を混ぜて白、黄色の2色にしました。味付けも色々入っています」
色々?気になりますね。ひとつ食べていい?
「どうぞ」
オッ!これは初めての味かも!
白味噌と少量の生クリームの味を感じるけれどバランスよくておいしいです!見た目もキレイ
実習開始から120分が経過!
この班は段取りが良くスムーズに仕上がってきていますね。
盛り付けやすいように1人前ずつに切り分けた料理はキレイに並べて、
この時間から盛り付けておいても大丈夫な料理は器に盛り付けて冷蔵庫で保存しておきます。
料理を作りながら整理整頓もプロの料理人は常に意識していますよ。
料理提供まであと30分!
ここからは保存のきかない、作ってすぐに提供しなくては美味しくない料理の仕上げとなります。
これは湯葉の上に海苔を置き、鯛の切り身、すりおろした山の芋をセットして
細巻き状にくるくると巻いていきます。その後、高温の油でジュワっと揚げます。
「外側の湯葉はパリパリ、中の山の芋はフワッと火が通り2つの食感のギャップが美味しいのです!」
と学生は申しておりました。
いよいよ提供10分前となりました。
点心弁当は美味しいだけでなく見た目も重要!
これまでトレーニングを積んできた盛り付けのセンスが問われますよ!
点心弁当の仕上げと並行して、椀物(吸物)の仕上げです。この大福餅のような奴は何ですか?
これは湯葉真薯(ゆばしんじょ)です。白身魚のすり身を柔らかくすりつぶし、湯葉を混ぜてゆでたものです。
湯葉真薯を器に盛り付けて、紅葉の型にした人参をおき、最後に薄く切ってゆでた大根をのせると
紅葉人参、湯葉真薯が透けて見えます。
これは今の季節(12月)を料理の盛り付けで表現したものです。
解説するとこの時期ようやく冬本番といった感じで、池の表面には薄く氷が張ります。
今日の場合は大根を薄氷に見立てその下には紅葉が透けて見えているイメージです。
椀物はアツアツで提供したい!一気に10人分を仕上げていきます。
試食するのは隣のクラスの学生です。同期に提供することはとても緊張します。
料理内容がわかるようにテーブルには一人ひとりに献立表がセットされています。
試食する学生はこの献立表を見て初めて提供される料理内容を知るのです。
13:10スタートです!
まずはアツアツの椀物が提供されます。
「今日の椀物はこの季節に合わせて薄氷をイメージしました」
しっかりアピールしていますよ!いいね。
椀物とほぼ同時に点心弁当が提供されます。
「オッ!キレイ」自然と言葉がでます。
「献立表と料理を照らし合わせながら食べてください。なんでも質問してくださいね。」
しゃべる気満々ですね
この錦玉子は誰が考えたのですか?
「僕が考えました。先日おせち料理の本を読んでいたら、これに似た料理がありました。
そこからのアイデアです。」
いいね!
自分で作った料理について質問されることは実は嬉しいものです。
食べる側の学生は一品ずつ、良い点、悪い点を評価しながら試食します。
最後に反省会をしますがその際全員が一人ずつ感想を発表します。
その際、厳しい意見もでますよ。食べる側も真剣なのです。
みなさんお疲れ様でした。
今後はもっと内容が濃い授業となります。またブログでも紹介していきますね。
~プロフィール~
辻調理師専門学校 日本料理
小川 健
香川県出身。
私は今から35年前に辻調理師専門学校を卒業しました。
その当時と今も日本料理の基本は変わっていません!
揺るぎない基本をしっかり学ぶことが技術と知識を向上させる近道です。
日本料理に興味のある人、興味はあるけど自信のない人も大丈夫!
日本料理本科、日本料理クリエイティブ経営学科では
「難しいことが簡単にできるようになる」授業内容になっています。
どんな授業だ?これからも授業の様子はブログで紹介していきますよ!ご覧ください。