「美味しい自家製のぬか漬けを作ります!」 ~日本料理だけを学ぶ辻調 ブログ11~
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昨年4月に日本料理本科(1年制)日本料理クリエイティブ経営学科(2年制)が
辻調理師専門学校の日本料理学科として開校しました。この2つの学科では日本料理の会席料理を中心に学びます。
今日は日本料理クリエイティブ経営学科2年生の授業を紹介します。
科目名は日本料理理論Ⅱ「食材の活用とその検証」その中で学生自身が漬物を作ります。
方法は簡単に言えばグループに分かれて「ぬか床」を作成、毎日かき混ぜる、野菜を主に食材を漬ける~食べるの繰り返しです。
授業でなぜ「ぬか漬け」を作るのですか?
さっそくいい質問ですね みなさんはプロの料理人が作る料理とはどのようなイメージがありますか?
たぶん「めちゃくちゃ美味しい」「盛り付けが綺麗」「高級な食材を使っている」などなど想像するのではないでしょうか。
勿論、綺麗で美味しいのは当たり前、その分、良質な高級食材もふんだんに使われますよ。
しかしこれまでは美味しいことへの追及は多々ありましたが「健康」についてはあまり考えられてきませんでした。
そればかりかプロが作る料理は食材の良い部分だけを使うケースもあり、肉、野菜などに無駄がでることも多々あります。
これからのプロの料理人は綺麗で美味しい料理を作れることと並行して
「健康や食材ロスをなくす」ことも考えていかなくてはいけない時代となりました。
では「ぬか漬け」にはどのような「利点」があるのでしょうか?
ぬか床は、ぬかと塩水を混ぜたものに野菜の微生物などが入り、発酵熟成したもの。
そこに野菜などを漬けると、ぬか床に住む微生物(乳酸菌や酵母など)がたんぱく質をアミノ酸に炭水化物を糖質に分解するなどして、
ぬか漬け特有の風味やうま味、酸味が生まれ、ビタミンやミネラルなども加わり栄養価がアップします。
また、ぬかに含まれる栄養が素材の中に移るため、ビタミンB群やミネラルなどが増加するという効果もあり、ぬか漬けは栄養の宝庫なのです。
それから余った食材をぬか漬けすることで保存効果も高まり「食材ロス」の軽減にもつながりますよ!
では授業の様子を見ていきましょう。まずグループは8つに分けて、ぬか床が作られています。
実は6月の授業で学生はぬか床を作り、それからほぼ毎日欠かさず実習時にぬか床をかき混ぜる。
またあまり野菜を漬けて状態を良くしています。
ぬか床は生き物です。手を抜くと状態の良い、ぬか床は作れませんよ。
ところでなぜぬか床は毎日かき混ぜないといけないのですか?
ぬか床には主に3種類の微生物が住み着いています。
まずは「産膜酵母」これは空気を好むため表面に出てこようとします。
逆に空気を嫌うため、底の方に行きたがる「酪酸菌」そして常に真ん中あたりを好む「乳酸菌」がいます。
これらを放置しておくとそれぞれの微生物にとっては住みやすい環境となりやりたい放題となり、
表面の産膜酵母が増えすぎると
白いカビが発生× 酪酸菌が増えると悪臭がでる× 乳酸が増えすぎると酸っぱいぬか床になるのでこれも×ね。
そのため動画のようにぬか床の底からしっかりと混ぜるのです。
きれいにグランド整備されたぬか床の表面にポツンと赤いものが見えるけど何ですか?
これはタカの爪です。
とても辛~いので防虫作用(虫を防ぐ)があります。黒く見えるものは何ですか?これは昆布です。
グルタミン酸といううま味成分があるため、ぬか床にもうま味をプラスさせる目的で入れています。
夏野菜の代表としてぬか漬けによく使われる胡瓜と茄子。
みなさんもよく目にするのではないでしょうか
ぬか床に漬ける前に、胡瓜、茄子の表面に塩をまぶします。
えぐみが抜けて味が染み込みやすくなります。そして色が綺麗に仕上がります。
あとはぬか床に漬ければ~明日には美味しく食べられますよ。
みなさんはトマト、とうもろこしのぬか漬けって食べたことありますか?
これ絶対おすすめ!
トマトは小ぶりの方が食べやすいのでおすすめね。まずは塩をまぶします。
理由は胡瓜、茄子と同じ。とうもろこしは蒸して火を通しておきます。
トマトは柔らかいので、そぉっ~と漬けよう。明日が食べごろです。
蓮根は酢漬けにすることは多いのですが、ぬか漬けですか?
蓮根はアクが強い野菜なので一度熱湯でゆでてからぬか床に漬けると実は美味しい。
学生は年間を通じて桂むきの練習を数多く行います。その際、大根の芯がたくさん残ります。
すべてをぬか漬けにするのは無理ですが、ぬか漬けすることで長期保存ができ、実習時に他の料理と一緒に食べることができます。
学生が就職先でも率先してぬか床の活用を広めてくれれば「食材ロス」の軽減につながると思います。期待しよう!
大根も塩をまぶしてからぬか床に漬けますが水分が多いため1時間くらい置き水分をある程度抜いてから漬けます。
その方が漬かりやすいのです。
次はゆで卵です。食べるときほとんどの人が塩をつけながら食べると思いますが、最初から卵全体に塩味が付いていると食べやすいと思いませんか?
ぬか床に漬けるとそうなります。そしてぬかの風味も程よくついて美味し~い!これも明日食べよう。
先生、これも漬けますか? 彼女が持っているのは「白こんにゃく」です。
ぬか風味のこんにゃく? 美味しいのだろうか? とにかくやってみようということでぬか床に1日漬けます。
どうなるか楽しみ(笑) 私も食べたことがありません。
実は肉や魚もぬか漬けできるのです!これは鴨肉ですが鴨ロースと言って鴨の胸部分の端っこです。
脂と筋が多い部分で火を通すと固くなるため、日本料理ではあまり使われず捨てられることもあります。
これも食材ロスを軽減するための一品としてぬか漬けにしてみます。これを焼くとうまいはず
衛生面を考えてぬか床は野菜とは別々にして1日漬け込みます。
魚も漬けます!鯛にぬかの風味をつけて焼物としましょう。鴨肉同様に野菜とは別々に1日漬けましょう。
「何が一番美味しいと思う?」「俺はとうもろこしかなぁ~」
「トマトは絶対うまいと思うよ」「鴨肉はひょっとしてぬかの成分で肉質が柔らかくなるのかなぁ?」
「明日は白ご飯と一緒に試食できるみたいやで!」「ご飯と一緒は嬉しい」
あとはぬか床に任せて帰ろう。明日楽しみで~す!
この続きは再来週ブログで紹介しま~す。
おや、右下のぬか床が笑っているように見えるのは私だけ(笑)
~プロフィール~
辻調理師専門学校 日本料理
小川 健
香川県出身。
私は今から35年前に辻調理師専門学校を卒業しました。
その当時と今も日本料理の基本は変わっていません!
揺るぎない基本をしっかり学ぶことが技術と知識を向上させる近道です。
日本料理に興味のある人、興味はあるけど自信のない人も大丈夫!
日本料理本科、日本料理クリエイティブ経営学科では
「難しいことが簡単にできるようになる」授業内容になっています。
どんな授業だ?これからも授業の様子はブログで紹介していきますよ!ご覧ください。