「どっちがうまい?比べたらわかるで!」 ~日本料理だけを学ぶ辻調 ブログ8~
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昨年4月に日本料理本科(1年制)日本料理クリエイティブ経営学科(2年制)が
辻調理師専門学校の日本料理学科として開校しました。
この2つの学科では日本料理の会席料理を中心に学びます。
今日は日本料理クリエイティブ経営学科の2年生の授業を紹介します。
科目名は日本料理理論Ⅱ「食材の活用とその検証」です。
同じ調理法でも「魚の鮮度での違い」「骨がある、ない魚、肉での違い」によってどのような違いがでるのか
食べ比べて香り・味・食感・保水性の違いを探る実験を行います。
まずは2尾の鯵を比較!指をさしている所を見て!包丁で切った傷あとが見えるよね。
これは「活じめ」と言って釣れたてのバタバタ暴れている鯵の頭付近の中骨を切って即死させたものです。
一方手前に見える鯵は「野じめ」と言ってバタバタバタバタ暴れた後に自然に苦しみながら死んだものです。
どちらが鮮度良いの?答えは「活じめ」です。
理由として野じめは苦しみながら野垂れ死ぬので死ぬ前に相当なエネルギーを使い果たし、肉質が悪くなります。
それどころか体内に血液が貯まり血生臭くなる原因となります。この2尾を使い実験開始!
鯵の三枚卸しも何度も練習してきました。キレイに卸せています。手つきもプロです!
卸した鯵に塩をまぶして余分な水分を抜き、身をしめること20分。
写真の上に見えるのが活じめの鯵、下が野じめの鯵ですが比較すると野じめの身の方が赤く見えませんか。
これはバタバタと苦しみながら死んだため身全体に薄っすらと血が回っているのです。
塩で締めた後は、酢に20分漬けます。これを「酢じめ」と言います。
たっぷりの塩をまぶしていたので鯵は塩辛いはずですが酢に漬けることで中和して塩辛く感じなくなります。
そして魚の臭み成分(トリメチルアミンと言います)はアルカリ性のため酸性の酢と混ざり合うと中和して臭みを消してくれるのです。
みなさんよく知っている酢でしめた「しめ鯖」も同じことですよ。
酢から引き上げた鯵は厚さ5㎜のそぎ切り(斜めに切る)にします。
酢じめの鯵と相性の良い薄切りにした胡瓜と混ぜて夏らしい器に盛り付けます。
比較するためにガラスの器には活じめの鯵、ブルーの器には野じめの鯵を盛り付けます。
ところで何を比較するのですか?
それは香り、味、食感、保水性の4つです。
香りは生臭みが感じるかどうか!
味はさっぱりか、コクがあるか!
食感は硬いか柔らかいか!
保水性はしっとりかパサパサか?
など表現しますが見極めてほしいのは、どちらが美味しいかまずいかではありません。
はっきり言ってどちらとも美味しいですよ。
この授業では双方の特徴を理解することが目的なのです。
次は鯛です。泳いでいる鯛を購入、今から学生が活じめにします!
頭付近の太い中骨を一気に切り鯵同様、即死させます。
包丁で一気にグサッ→バタバタッ→ピタッ、一瞬で動きが止まります(笑)
後は体内に血が貯まらないように尾の部分にも切込みを入れてしばらく水にさらします。
この処理をするから鯛は刺身で美味しく食べられるのです!
三枚に卸した鯛は背側と腹側の身に切り分け皮をスゥ~と引きます!
お見事OK!
背側の身は模様がはっきり残り、腹側の身は銀色の模様がたくさん残っています。
皮が上手くに引けている証拠です100点あげましょう(笑)
鯛は「洗い」という手法の比較実験に使います。
ところで「洗い」って何ですか?
約2㎜厚さにそぎ切りにした身を氷水で洗うことで「無理やり死後硬直を起こす」ことなのです。
それって美味しいのですか?
ハイ夏場など暑い時期に提供する方法の一つです。
目的は魚の脂分を洗い落とし、急激に冷やすことで身が固く締まります。
結果さっぱりとした味わいとなるのです。
ダイナミックに洗うと身がビックリして急激に引き締まる!
動画で確認してね☆彡
洗うと氷水に脂が浮いてきます。
放置するとまた鯛の身に吸収しちゃうので新しい氷水に漬けなおします。
その後、身がチリチリとした感じになれば引き上げます。
ところで何を比較するのです?
これは先程、包丁で一気にグサッと活じめにした鯛の身の洗いです。
身のまわりがチリチリしているのがわかるよね。「身に凹凸があります」
こちらも活締めの鯛ですが締めてから4時間経過した身を洗いにしています。
比較するとあまりチリチリしていない「身に凹凸があまり感じられません」
これは鯛の洗いに添える野菜です。胡瓜はうす~く桂むきにして千切りにします。
人参も桂むきにして線状に切り、箸に巻き付ければバネのような形になります。
これを専門用語で「より人参」と言います。
鯛の洗いも2種のガラスの器に盛り付けて後で比較します。
次は鮮度抜群のカレイです。「骨付きの煮つけ」と「骨無の煮つけ」との違いを比較します。
カレイは五枚卸しと言って表と裏、合わせて4枚の身と中骨に解体します。
お見事!
骨に身がまったく残っていません!100点
右は骨が付いたまま、ぶつ切りにしたカレイです。これから煮つけにして比較します。
煮る前には熱湯にサッとくぐらせて生臭みを取り除いておくことが美味しく仕上げるポイントです。
皮が縮み身が変形しているように見えるけどこれは鮮度が良い証拠なのです。
骨付き、骨無ともグツグツと強火で一気に煮ること約6分で完成。
木の芽をたっぷり添えて完成。ダイナミックな盛り付けで美味しそう!
最後に鶏もも肉を骨無と骨ありで塩焼きにして食べ比べます。
骨ありと無でははっきりとした違いはあるのでしょうか?
食べ比べればカレイも鶏もも肉も明確にそれぞれの特徴がわかりますよ。
「先生! 僕はカレイも鶏もも肉も骨ありの方が好きです」といった意見が多かったです。
真剣に食べ比べるからこそ特徴が見極められるのです。
それにしても香ばしい焼き色がとても食欲をそそります。
「オイ!ひっくり返すのまだ早いんちゃうか」と言いたくなります。鶏肉はしっかりと焼け!(笑)
では料理が完成したところで試食といきましょう!
「ん!活じめの鯵は少しコリコリ感があるなぁ~俺好みかも」
「煮つけは絶対骨付きの方が、身がしっとりしていて美味しいぞ」
「洗いにするなら鮮度を重視しなければ食感が悪いことがわかった!」
「鶏もも肉は骨が付いている分、焼いているとき、身が縮じみにくく柔らかく仕上がることがわかった」
など心の中でつぶやいているのでしょう。
現在、試食中マスクは外していますが黙食がルールです。
みんなと楽しい会話をしながら食べるのは美味しいけれど、考えながら食べるのも楽しいのです。
比較したコメントは忘れないようにしっかりと書き留めます。
これで180分間の授業が終了!お疲れ様でした。
~プロフィール~
辻調理師専門学校 日本料理
小川 健
香川県出身。
私は今から35年前に辻調理師専門学校を卒業しました。
その当時と今も日本料理の基本は変わっていません!
揺るぎない基本をしっかり学ぶことが技術と知識を向上させる近道です。
日本料理に興味のある人、興味はあるけど自信のない人も大丈夫!
日本料理本科、日本料理クリエイティブ経営学科では
「難しいことが簡単にできるようになる」授業内容になっています。
どんな授業だ?これからも授業の様子はブログで紹介していきますよ!ご覧ください。