「おいしさの授業って何ですか?」 ~日本料理だけを学ぶ辻調 ブログ16~
2021年4月に日本料理本科(1年制)、日本料理クリエイティブ経営学科(2年制)が
辻調理師専門学校の日本料理学科として開校しました。
この2つの学科では日本料理の会席料理を中心に学びます。
今日は日本料理クリエイティブ経営学科2年生の授業、日本料理理論Ⅱの中で行われる
「おいしさの科学」にクローズアップします。
担当いただくのは「神宗」小山先生です。
神宗と言えば大阪土産の代表選手と言われるほど「昆布の佃煮」が有名!
日頃、小山先生は昆布を軸においしさについて研究されています。
日本料理を専門に学んできた学生にとってはとても貴重な時間になることでしょう。
では先生よろしくおねがいしま~す!
「まかせてください。昆布と鰹節の相乗効果から生まれる、おいしさを教えますよ!」
まず食べ物には五味があるのを知っていますか?
甘味、塩味、酸味、苦味、ここまでは想像がつく味だと思いますが
「うま味」とはどんな味でしょうか?
想像できますか?
先生!
「うま味とは昆布のグルタミン酸の味です」
オッいきなりいい答えがでましたね。
日頃、日本料理を学んでいる学生は分かっています!
日本料理のだし汁は昆布、鰹節から抽出されますがまずは昆布についてです。
ここに有る3種の昆布は主にだし汁用に使われる高級品です。
獲れる場所によって名前が付けられ、味の特徴も違います。
回しますから香りを嗅ぐ、触って厚みなどの違いも確認してください。
「羅臼昆布の幅は利尻昆布の2倍あるな!大きいほど高価なのかな?」
「香りはどれも一緒かな!正直、好きな香りじゃないけど」
これから最初のテイスティング「昆布だしの飲み比べ」をしますが、それぞれの特徴を説明しておきます。
辻調さんではだしを引くとき真昆布を使っていると先生に聞きました。
そのため、みなさんも真昆布の味は馴染み深いと思います。
一般的に言われる特徴は上品な甘みがあるとされています。
今日はその他、京都でよく使われる利尻昆布、これはあっさりした味わいと言われ、
羅臼昆布は塩味とコクがあると言われていますが
実際に昆布と水だけで引いた昆布だしを飲み比べしましょう。
比較は甘味、うま味、塩味、苦味、ぬめり、磯の香りの6つです。
「美味しい昆布だしは苦味、ぬめりが少ないと言われます」
では試飲開始!
まずは香りを確認
「オッ磯の香りだ!」
3つを比較すればはっきり香りの強弱がわかりますね。
「オッ①だけうま味が強く感じる。悪いとされる苦味はどれも感じないかなぁ」
感じたことは忘れないようにすぐに書き出します。
ところでみなさん昆布だしって美味しいですか?
「美味しくありませ~ん!」
その通り、昆布と水だけで引いた「昆布だし汁」を飲んでも
磯臭いだけで一般的には美味しいと思う人は少ないでしょう。
ではこの昆布だしを美味しくするには何が必要でしょうか?
はい先生
「昆布のグルタミン酸に鰹節のイノシン酸を加えると美味しくなります!」
その通りですね。
これを相乗効果と言います。
単体より複数を組み合わせることで、美味しさが倍増するということですね。
次は鰹節についてですよ!
みなさんは本節(鰹節になる前の姿・燻して乾燥させた鰹の塊)を自分で削ったことありますか?
削りたては香りがバツグンにいいですよ。誰か削ってみますか?
「ハイ!やります」
どうぞ、どうぞ
鰹節を削る顔が真剣です「ゴシゴシ」と削れば教室中に香ばし~い鰹の香が漂います。
自家製鰹節の完成です。
すぐに食べてみたい!
鰹節がうまい!
「先生ご飯が食べたくなりました。」
ありません。
次のテイスティングは「違う種類の削り節と水だけで引いた」だし汁の飲み比べですよ。
向かって左から混合節(サバ・イワシ)、真ん中はマグロ節、右は鰹節です。
全て同じ水を使い同じ分量で引いただし汁です。
味はいかがですか?
「先生!うま味やコクが足りません!」「香りはいいけど味が薄いです!」
「混合節は中でも雑味が多く感じます」
結果、昆布だし同様、あまり美味しく感じないわけですね。
では一番香りが良いと思ったのは何番ですか。
②番、③番が多いみたいですね。②番はマグロ、③番は鰹です。
みなさん味覚が良いですね。
① 番は雑味が多く中でも濃厚な味だったと思います。
これは吸物のような上品な汁物には合いません。
味噌汁やうどん、そばのだし汁には合いますよ。
やはり昆布との組み合わせがないと相乗効果は生まれないということでした。
その他、相乗効果を生む組み合わせを紹介しておきましょう。
実はミートソースも牛肉とトマトによる相乗効果が生まれます。
考え方として野菜などにはグルタミン酸があり、動物性の食材にはイノシン酸が含まれている。
先生!チーズは植物性ですか?
実はそうなのですよ。
へー知らんかった
では次のテイスティング!は「利尻昆布+鰹節と利尻昆布+マグロ節」で引いただし汁の飲み比べです。
向かって左側に見えるのがマグロ節です。鰹節に比べて色が白いですね。
小山先生が実演されます。
しっかり昆布の味が染み出た昆布だしに鰹節を一気に加えて、10秒後には漉します。
マグロ節のだしも同様に引きましたよ。
引きたてのだしを試飲しましょう。
女性はいかがですか?
「正直どちらともうまい!」「好みはマグロ節の方かな」
なぜ?
「酸味がない気がする」
僕は「鰹節の方がすっきりしていて美味しいと思います。」
どちらも美味しいのですが好みが分かれますね。
ではそのだし汁に各自で塩と醤油少量を入れて!
美味しいと思う吸物の味に仕立ててください。
美味しいとされる味付けは塩分濃度0.6から0.7位ですよ。
やってみましょう。
学生は実習で常に塩分濃度0.6から0.7位で味付けできるトレーニングをしてきました。
吸物の味付けに自信がある学生は多いはず。
オッ!0.7%だ。うまいと思うよ。
鰹節とマグロ節で引いただし汁の特徴の違いもしっかりと記録しておこう。
その後も昆布を軸としたおいしさの授業はまだまだ続きました。
おいしさを科学的な目線で学ぶことで新たな発見がありましたね。
小山先生お疲れ様でした!
~プロフィール~
辻調理師専門学校 日本料理
小川 健
香川県出身。
私は今から35年前に辻調理師専門学校を卒業しました。
その当時と今も日本料理の基本は変わっていません!
揺るぎない基本をしっかり学ぶことが技術と知識を向上させる近道です。
日本料理に興味のある人、興味はあるけど自信のない人も大丈夫!
日本料理本科、日本料理クリエイティブ経営学科では
「難しいことが簡単にできるようになる」授業内容になっています。
どんな授業だ?これからも授業の様子はブログで紹介していきますよ!ご覧ください。