実は世界一繊細!? 中国料理はダイナミックだけじゃない!
中国料理といえば、大きな包丁や大きな鍋で、
勢いよくダイナミックに料理を仕上げていくイメージではないでしょうか。
日本の約25倍という広大な国土の中国、様々な技があって当然。
今日はそれらの中から包丁の技をお伝えします。
中国料理の包丁は「菜刀 ツァイダオ」といい、幅広で両刃、刃先はやや弓なりになっており、重みがあるのが特徴。
左から、「片刀 ピェンダオ」といわれる薄刃、「切刀 チェダオ」といわれる厚刀、
骨付きの鶏や骨付きのバラ肉などの固いものを切る「骨刀 グゥダオ」、
北京ダックなどで使用する「片鴨刀 ピェンヤーダオ」など、ひとえに中華包丁と言えど、
他にも様々な種類があります。
これらの大きな中華包丁一本で切り出す料理人の技がこちら。
鶏や蝶、鳳凰やエビなどのニンジンの飾り切りです。
炒め物などに入れ、料理を一気に華やかにしてくれる、芸術作品ともいえる技です。
他にも、「拼盤 ピンパン」と言われる、中国料理伝統の前菜。
中華包丁を用い、切り出したり、巻いたりしながらパーツを作り、様々な形を作ります。
今回は鳳凰を模したもので、鳳凰拼盤といいます。
片や、ペティーナイフのような小さな包丁や彫刻刀でも、中国料理の技術が冴えわたります。
このような技術は、年々上手にできる職人が減ってきているのも現状です。
辻調では、この技術を後世に伝える為にも、授業の中や別科研究講座の中など、
様々な場面で学生に教えていますが、花彫りや飾り切りは料理に負けないほど、毎年の学生に大変人気です。
料理に直接的に関係する包丁技術も沢山あります。
今回は、飾り切りの包丁技術「花 ホワ」を、イカの飾り切りでご紹介します。
加熱すると皮目が縮むイカの特徴を活かし、内側に切込みを入れて花が咲いたように
きれいに切込みが開くようにすることで、柔らかく、味が絡みやすく、見た目にも華やかになります。
今が旬のイカ。
中国語では写真左のスルメイカ類の事を「魷魚 ヨウユィ」、右側のコウイカ類のことを「墨魚 モーユィ」といいます。
中に入っている軟骨が全く違うのも特徴で、飾りを入れるのであれば、
厚みのあるコウイカ類を選ぶとよいでしょう。
イカを使用する際はまずは薄皮を剝き、二カ所ある軟骨も削り取ります。
薄皮は火が入ると口に残るため、こういった丁寧な仕事も大切です。
飾りを入れるのはイカの内側。
内臓に接していた面に、縦に切り離さないように厚みの2/3程度の深さに切り込みを入れます。
その後、格子目の切り込みや、包丁をねかせての切り込みを入れていきます。
切る細かさや切り込みの向きや長さなどで、
出来上がりをイメージして、様々な飾りを作り上げることができます。
左が包丁をねかせた物、中央が格子目、右が「双飛片 シュワンフェイピエン」と言われる切り込みの入れ方です。
花のように綺麗に切り込みを開かせるには、包丁技術は勿論の事、
火を入れる前にイカの粘りをさっと洗うと、綺麗に花のように開いてくれます。
イカの飾り切りを知ったら、料理になった状態も見てみたいですよね!
でも今日はここまで!次回はこの包丁技術を生かした料理をご紹介します。
今日のテーマとは相反する、「ダイナミック」の神髄を体現する料理。
通常の炒め物より超高温で短時間に仕上がる料理! 必見です!
お楽しみに!
~プロフィール~
辻調理師専門学校 中国料理担当 船渡兼市
香港の「百樂潮州鮑魚飯店」にて研修。
現地の人々との交流を通して中国の食文化や潮州料理、広東点心や焼滷を学ぶ。
中国料理の理論の裏打ちされた、繊細でヘルシーな料理を得意とする。
学生からも評判の「楽しくて分かりやすい授業」がモットー。