【キャリアガイダンス】学科長・矢尾板 渉先生インタビュー(12月号)
リクルート発行「キャリアガイダンス」12月号にて、
辻調理師専門学校 高度調理技術マネジメント学科(3年制)の
インタビューが掲載されました。
●学科長 矢尾板 渉
●1期生 松田 愛
●1期生 塩谷 陽平
新学科「高度調理技術マネジメント学科」を設立した理由を教えてください。
矢尾板: 最近は、料理で地域振興に努める人や、国境を越えて日本料理を広げる人など、
世の中に影響を与えるような料理人が、メディアで話題になっています。
彼らは、ただおいしい料理を作るだけでなく、自分の取り組むべきテーマや料理哲学を、
料理を通して発信しているんですね。これからの料理人は、お皿の中だけではなく、
お皿の外にも目を向けなければいけません。
自分のテーマをもち、それを料理で表現して、多くの人に伝える。
それができる料理人を育てるために、「高度調理技術マネジメント学科」を設立しました。
新学科では、どのような点に力を入れて授業をされていますか?
矢尾板: 新学科の目標は、考える力をもつ学生を育てること。
だから、とにかく考える機会をたくさん作っています。
考える機会は、どうやって作るんでしょうか。
矢尾板: そうですね...、たとえば、授業内で、私は学生に答えを教えないようにしています。
仮に、学生の作ったチャーハンが、ダマだらけの見かけの悪い失敗作だったとしましょう。
もし、私がそこで「○○でミスしたから失敗したんだね」と言えば、学生は「あ、そうか」で
終わってしまう。でも、「どうしてこんなに見かけが悪いの?」「どうしてダマができたの?」
「どうしてダマができる原因を放っておいたの?」と、失敗の原因を本人に考えさせるように
促せば、考える訓練になります。さらに、そうして自分で考えて答えにたどりつくことが
できたら、答えを直接教わるよりもよっぽど大きな学びになるんですね。
もちろん、ただ「考えろ、考えろ」と言ったって、失敗を分析できる知識がなければ、
考えることはできません。
だから、私たちは、実技だけでなく理論の授業にも力を入れています。
「チャーハンのおいしさとは何か」「チャーハンのお米がパラパラになる仕組みとは何か」
「チャーハンの香りが良いのはなぜか」といったことを、理論の授業でしっかり教えるんですね。
理論を知ったうえで、実際に調理を行えば、考えて調理をすることができるんです。
理論の授業が充実しているのも、新学科の特徴のひとつなんですね。
矢尾板: そうです。単なる技能なら、実技練習の時間を増やせば身につきます。
もっと言ってしまえば、現場に出たら技能を磨くチャンスはいくらでもあるんです。
この学科での3年間は、実技練習だけの3年間ではないので、ひょっとしたら卒業後に
職場で「君は3年間も学校に通っていたのに、こんなこともできないのか」と
言われることがあるかもしれません。でも、しっかり理論を理解して、考える力を
養っておけば、「すみません、今はできません。でも、できない理由は分かるので、
次までにできるように練習しておきます」と言えるはず。理論と考える力があれば、
先輩の仕事や自分の失敗を見て、自ら学んで成長することができるんです。
新学科のカリキュラムのなかで、特徴的なことを教えてください。
矢尾板: いろいろあるんですが、ひとつはゼミ形式の授業「総合演習」ですね。
新学科では、3年間の集大成として、「自分の思いをお皿で表す」というゴールを設定しています。
集大成になる料理は、自己満足や独りよがりのものであってはいけません。
学生たちは、1年次から課外授業で食材の生産者と交流するなどして、「お皿の外」に
目を向ける経験をします。そして、集大成の料理が完成したときには、業界の第一線で
活躍するトップシェフの前で料理のプレゼンテーションを行い、実際に食べていただき、
評価していただく予定です。
これは、3年制の課程でなければなかなかできない試みですね。
2年次からは、実習が始まると聞きました。
矢尾板: 2年次の前期に、まず「シミュレーション実習」があります。
これは、厨房とレストランがある現場さながらの環境で、お客さま役の他学科生に料理を提供する実習です。
料理を提供する時間などを計算しながら、チームで調理を進める。
これを半年間とことんやって、「現場の動き」を体で覚えます。
そして、2年次の後期からは、実際に現場へ出る「キャリア形成実習」が始まります。
この実習では、3カ所の事業所で、それぞれ4~5週間ずつ、研修を体験してもらう予定です。
これだけ長期間の現場実習ができるのも、3年制ならではの利点ですね。
「キャリア形成実習」で、学生さんに学んでほしいことは何ですか?
矢尾板: 他学科でも現場研修はやっているんですが、現場から帰ってきた学生の感想が
「楽しかったです!」だと、「そんな感想は期待してないよ!」って思います(笑)。
こちらとしては、「力不足を実感した」「全然できなかった」という感想を期待してるんですね。
世間に出る前の学生ですから、足りない点も当然たくさんあるじゃないですか。
それに気づいてほしいんです。現場のレベルと自分のレベルには大きな差がある。
自分には○○や□□が足りない。それが理解できれば成功ですね。
新学科の学生さんには、将来どんな人になってほしいですか。
矢尾板: 自分の料理哲学を世の中に発信できる料理人です。
自分のお店をつくることがゴールではなく、自分の料理哲学を、同志や後輩に伝えられる人。
地域や時代を越えてそれを広げることができる人。そんな料理人が出てきてくれたら嬉しいです。
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リクルート進学総研 キャリアガイダンス
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