辻調理師専門学校 辻製菓専門学校 通信教育部 ブログ

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製菓受講日記 ③ フィナンシェ

今回のテーマは・・・ 

第4課 バター生地(1)  

第5課 バター生地(2)




オールインワン法で作るバター生地


第4課と5課はバター生地。今回は5課のオールインワン法をお勉強した。

バター生地に関しては4課のシュガーバッター法、フラワーバッター法も、5課のオールインワン法も、技術的に難しい点があるというよりは理論が難しい。オールインワン法では「卵に砂糖を溶かしこんだ液体の中に小麦粉の粒子が分散し、さらにその中に溶かしたバターが小さい粒子となって分散している(これを乳化という)」、だからできあがりの生地はしっとりとコクがあるのが特徴なのである! 


ああ、私は料理やお菓子作りは得意だけれど、理科も数学も得意じゃないのよお~、と泣いてもわめいても無駄だ。製法による生地の違いが習得できなければ、お菓子のプロには到底なれない。既製のレシピを一生作り続けるだけだ。いつかは私オリジナルのレシピだって作ってみたい、という淡い夢に胸をふくらませ、いざ、オールインワン法に挑戦である!

 

食べたいお菓子は自分で作る


というわけで、今回の課題は「パン・ド・ジューヌ」「マドレーヌ」「フィナンシエ」の中からの一品を作ること。「パン・ド・ジューヌ」はジェノヴァ風パンという意味のケーキで、ジューヌはジェノヴァのフランス語読みだそうだ。ジェノヴァは私の住むトリノからもそう遠くない、古くからの港町。ちなみにジーンズという言葉も、ジェノヴァからやってきた布という意味だとか。イタリア暮らしの私にちなんでこれにしようかとも思ったが、最終的にフォナンシエに決めた。理由は簡単、私はフィナンシエが大好き、でもイタリアにはフィナンシエは存在しないからだ。だったら自分で作るしかない。


しかもDVDを見ていると、フィナンシエに使用する溶かしバターはブール・ノワゼットだ。フランス料理やお菓子のレシピは当然のことながら、小説や詩の中にまで頻繁に登場する「焦がしバター=ブール・ノワゼット」という響きに、かつての文学少女(私のこと)は秘かにあこがれていたのである。去年パリで行った、今人気のブラッセリーという「ブール・ノワゼット」のことも思い出される。こんなによく耳にする言葉なのに、一度も実際に作ったことがないなんて、そりゃあフードライターとしてもまずいでしょ、ということでフィナンシエに決定!





 

憧れのブール・ノワゼット


さっそくブール・ノワゼット作りから開始する。バターが鍋の中で完全に溶けると、恐ろしいほど沸騰を始める。こんなにブクブクいって大丈夫だろうか? でも教材の中でも先生も沸騰させていたよね、と勇気を奮い起こす。次第に鍋の周りについた泡の部分が赤銅色になってきた。こうなったらOKのはず、念のため、泡の下の溶けたバター液の色を確認すると、自分でメモをとった通り「ブロード・ディ・カルネぐらいの色」になっていた。

ブロード・ディ・カルネとは、イタリア料理でいう牛肉のコンソメのこと。高級イタリアンのそれではなくて、うちのおばあちゃんが牛のいろいろな部位をぐつぐつ茹でて食べる時に出る、だし汁の色なのだ。ぴったりその色になっていたので火を止め、シノワにキッチンペーパーを敷いたもので濾す。イタリア暮しが長くなり、普段の生活はほとんどがオリーヴオイル一辺倒だが、ブール・ノワゼットのこの芳しい香りはちょっと感動的。



 

しっとりした焼きあがりに感動



卵白に粉糖を混ぜ、そこにアーモンドパウダーと薄力粉を加え、最後にブール・ノワゼットを合わせてできあがり、と思った以上に生地作りは簡単であった。ただし卵白に粉糖を混ぜ込む時にはほんの少しだけ湯煎にかけてダマにならないよう気をつけたり、ブール・ノワゼットを加えた後で生地を冷蔵庫で冷やし、型に絞り出しやすい固さにするなど、いつものようにフレンチ菓子ならではの細かい気遣い、作業が各所で要求される。

さて、イタリアにはフィナンシエがないから自分で焼かないといけない、と書いた。フィナンシエがないということは、フィナンシエ型も売っていないのである。専門店に行ってみても見当たらなかったのだが、シリコン型で形の似たものを発見。これで代用してみることにした。シリコンなので型に塗るバターは少なめで、オーブンの温度は教材の200度ではなく180度に設定。我が家のオーブンはどうも表示温度より高めになって、すぐに焦げてしまう傾向があるからだ。途中10分ほど経過した時点で、型の前後をひっくり返す。庫内の手前と奥では焼け加減がずいぶん違うのも、家庭用オーブンではいたしかたない。

15分ちょうどで焼きあがった。表面が持ち上がり、ちょっと割れた感じがいかにもおいしそう。シリコンの型は思った以上にきれいに焼きあがるし、型からはずすのも楽なのに、フィナンシエ型もマドレーヌ型もイタリアのシリコン市場にはなくて残念。 さて、きれいに並べて写真も撮り終わった。お楽しみの試食である。紅茶を入れていただきまーす。ああ、こんなにしっとり焼きあがって、ケーキ屋さんで買ったみたいにおいしい! でも、縁の部分がほんの気持ち、焼き色が付き過ぎのような気もしなくもない。オーブンの温度や焼き時間に気をつけて、近々もう一度焼いてみよう。





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