製菓受講日記 ⑫ 氷菓
2015.02.16 カテゴリー:受講生日記
今回のテーマは・・・
第18課 氷菓
実は前回のプリンやババロアを終了してすぐ、じゃ、次は氷菓子いくよ~!と即刻アイスクリーマーを購入して張り切っていたのだが、急に本業、フードライターの仕事がとても忙しくなってお菓子作りは中断。それでもちょっとした暇をみつけては、買ったばかりのアイスクリーマーでジェラートを作ってみたりして「なーんだ、アイスクリームなんか簡単じゃーん」と思ったりしていた。ところがどっこい。ようやく時間ができてDVDを見、テキストを勉強してみると、アイスクリームもなかなか奥が深そうだ。毎度のことながら、簡単じゃーん、などと侮っていてはいけないと深く反省。ごめんなさい。
まずはパータ・クロキニョル(チューリップ)を作り、焼いてみる。生地自体は材料を混ぜるだけで、今までの18課の授業で基本を叩き込まれた私にとってはかんたーん!だったのだが、あれ! 生地を流すための薄い型がない! 厚紙でも結構ですよ、と先生は涼しくおっしゃっていたが、1.5ミリの厚さで水を弾く紙質の厚紙、なんて普通の家庭にはなかなかあるものではありませんっ。幸い、数日前に日本の知人からお土産にいたいた北海道銘菓「白い恋人」(懐かしい~)の箱が、厚みなどなかなかいい感じ。さっそく丸く切り抜いてみたのだが、直径が微妙に足りない。でも何とかそれを利用して、天板の上に薄く、丸く生地を伸ばすことに成功。が、難関はいつもの通り、我が家のオーブンである。テキスト通り180度で7~8分焼いていたら、あれよあれよという間に焼けすぎてしまった。焼き色は濃すぎる上に、天板からはがして型に敷いている間にカチカチ。型に敷き詰めようとしたとたん、パリン! 割れてしまった。きー、悔しい! しょうがない、生地をもう一度準備して再挑戦。私はいつも、こんな時、オーブン自体よりも我が家の天板の材質が悪い(熱を簡単に通しすぎる?)のではと睨んでいるので、今度は天板の下に何重にもアルミホイルを敷き、生地は天板に直置きではなくオーブンペーパーの上に流してみた。そしてオーブンに入れたらかなり早い時点で取り出す。早く、早く! 早くはがして型に入れないと硬くなっちゃうよ~と大焦りしながら型に敷き詰めると、今度は用意しておいた型が生地に対して若干大きすぎる。これじゃあチューリップ型にならないじゃないかっ!! 慌てて食器棚を開いた私の目の前に、ちょうどいいサイズと形のミニすり鉢が。これだ! と取り出して生地を中に入れ込む。ちょっとゆがんでしまったがなんとか器形にできあがった。でも焦っていたので、一部ゆがんで醜い仕上がり。直そうと思っても、すでに硬くなっているから後の祭りである。
うーん、チューリップを美しく、そして心安らかに作ろうと思ったら、焼く前に器と生地の大きさのバランスをよく調べておく必要があるんだなあ。型に使う器に、紙か何かを敷き入れてみて、たわみ具合を確認するとか。たかがアイスクリームを盛り付ける器といえども、綿密な下準備が必要なのだ。18課お勉強を続けてきても、相変わらず学ぶことはなくならない。お菓子作りはほんとうに難しく、奥が深いのである。
ともあれ、とりあえずチューリップ型の器ができあがったので、次はいよいよアイスクリームを作る。ソルベも作ってみたいところだけれど、ソルベアイスクリーム作りの醍醐味はボーメ計やブリックス計を使ってフルーツシロップの糖度を調整するところにあると見た。科学の実験のようでとても面白そう。しかし残念ながらイタリアでこの二つを手に入れることは無理そうなので、次回日本に帰国したときにでも入手してからトライすることにする。
というわけで、オーソドックスな「グラス・ア・ラ・ヴァニーユ」とそのバリエーション、抹茶アイスクリームに挑戦。冒頭でも書いたように、買ったばかりのアイスクリーマーですでに何度かアイスクリームを作ってはいたが、それは機械の説明書に書かれた通りにアイスクリームの材料を機械に放り込むだけという、言ってみればアイスクリームの超素人バージョンだ。しかし「辻製菓専門学校・別科 通信教育 製菓技術講座」を受講するわたくしたちが作るアイスクリームは、そんなのとは全然違うのでございます。まずは作り方が違う。卵、生クリームといった材料を83度まで加熱して雑菌除去を行いながらクレーム・アングレーズを作り、それを冷ましてからソルベティエール(アイスクリーマー)にかけるという、丁寧な丁寧な作り方なのだ。だから衛生管理も完璧、しかもできあがったその味はリッチでまろやかで、ただのバニラアイスだなんて侮るなかれ~というおいしさである。
そして材料も違う。抹茶バージョンなんか、できあがり量約500gのアイスクリームのルセットに抹茶を15gも使用するというゴージャスさだ。15gという数字だけみるとたいしたことがなさそうだが、相手は抹茶である。羽のように軽い。私が日本から持ってきてチビチビ使っていた高級抹茶の缶が半分なくなってしまった。ところが、できあがりを食べてみると、本物の抹茶の味が濃く、それがバニラアイスの強目の甘みやコクと混ざり合って、こんなにおいしい抹茶アイスは食べたことがない!という驚愕のお味。抹茶アイスなんて、日本ならどこでも食べられるけれど、どれもこれも、そのイマイチさで大同小異なのは、こういうことだったのだ。厳選された材料をたっぷりと使い、丁寧に時間をかける。そんなお菓子作りは手間の点でも経費の点から言ってもなかなかできることではない、ということだ。
もう一品、グラニテに挑戦。ブリックス計がここでも必要になるのだが、ここではそれを私の舌で代用することにしてとにかく作ってみることにする。桃の湯むきって始めてしたけれど、トマトと同じように皮がツルリとむけておもしろい。そしてこの桃を赤ワインで煮込んで、その煮汁を凍らせて、かと思いきや、その煮汁の中にラズベリーのピュレを混ぜて凍らせるという、ここでも贅沢に材料と手間をかけるのだ。ピュレに少しずつ桃の煮汁を加え、その都度味見をする。と、だんだん、だんだん甘く、おいしくなってくる。これぐらいでいいかな? いや、この甘さは今食べてちょうどいい甘さだけど、凍らせるならもう少し甘みが強いほうがいい。こんなふうに人間ブリックス計は何度も何度もグラニテ液を舐め、考え、糖度を調節していくのであった。
これを冷凍庫で、少し凍ってはかき混ぜ、かき混ぜては凍らせながら、粒状のサラサラとした結晶に仕上げる。という予定であったが、なんだか私のは、ネットリした感じの氷に仕上がって、サラサラと、とはいえない状態。なぜ? もしかして人間ブリックス計の感度が悪く、ワインの量(アルコール分)が多くなったために、凍りづらかったのだろうか?? 私のねっとりグラニテもおいしかったけれど、次回はちゃんとブリックス計を使って、さらさらグラニテに挑戦しないといけませんね。