日本料理体験記~vol.3 茄子揚げ煮 こんにゃく梅煮 きぬさや 木の芽生姜
Vol.3 茄子揚げ煮 こんにゃく梅煮 きぬさや 木の芽生姜
第5課、6課で学ぶのは家庭料理の代表、煮物です。
家庭料理というと私は「あ・うん」「阿修羅のごとく」などで知られる作家の向田邦子さんが浮かびます。
料理を使った表現方法を小説に取り入れるだけではなく、「昔カレー」など、思い出の味、家庭の味をテーマにしたエッセイも多数残しています。
昭和一桁生まれの女性らしい古風さと飾らない人柄、並々ならぬ食べ物への関心を持つ向田さんは、作家の水上勉さんとの対談のなかで「煮物の味が母に似てくる」という言葉を残しています。
母から娘へ受け継がれていく家庭の味。それがプロの手にかかるとどうなるのか、今回もとても楽しい経験になりました。
まず、ナスの両端を切り落として縦半分に切り、皮目に切り込みを入れます。
縦半分とはずいぶん大きいようですが、ナスは油を通すと実が小さくなりますので、ちょっと大きいくらいがちょうどいいのです。
そして165℃に熱した油で色よく揚げていきます。
こんがりしてきたらナスをざるに取り、お湯をかけます。余分な油を抜くためです。
茄子は油との相性がいいのですが、揚げ時間、温度、揚げた後の調理などによって、油っこくなってしまうことがあります。
このように揚げたあとでお湯をかけて余分な油を抜く作業を加えると、すっきりして旨みだけが残ります。
続いて、煮汁。
ここで登場するのは、第1課で学んだだし汁です。
ナスに使う煮汁はだし汁に砂糖、みりん、薄口醤油、たかの爪を入れたものです。
この煮汁を沸騰させたらナスを入れ、なんと1分で取り出します。
そして素早くナスをざるに取り出してうちわで扇いで温度を下げていきます。
このように茹でたものや煮たものを、水につけないでざるに上げて冷ますこと、これを「おか上げ」といいます。煮汁の方も、鍋底を氷水にあてて冷まします。
煮汁が冷めたらナスを戻し、味を染みこませていきます。
この間に次の作業、こんにゃくの梅煮に取りかかります。
まず、こんにゃくの表面を握りこぶしでたたきます。余分な水分を取り除き、味を含みやすくするためです。
そして、スプーンを使って一口大に切ります。「手綱」や「鹿の子」など、こんにゃくには料理に合わせた切り方がいろいろありますが、今回は味がなじみやすいよう、スプーンで一口大にちぎっていきます。
熱湯で3分茹で、こちらもおか上げに。そして空煎りをして水分を完全に取ります。
こうすることで、こんにゃく独特の匂いも消えます。
こんにゃく用の煮汁はナスの煮汁と少し異なり、濃口醤油や梅干を使います。
こんにゃくを煮る時間は10分。
火を止めたらそのまま冷まし、こんにゃくに味を含ませます。
絹さやを彩りよく茹で、第一課で学んだ「八方だし」につけて味がなじんだら、盛り付けをして完成です。
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