辻調理師専門学校 辻製菓専門学校 通信教育部 ブログ

  1. ホーム
  2. 通信教育部 ブログ
  3. 受講生日記
  4. 製菓受講日記 ⑤ 折り込みパイ生地

製菓受講日記 ⑤ 折り込みパイ生地

今回のテーマは・・・ 

第8課 折り込みパイ生地   

第9課 折り込みパイ生地を用いた菓子(1)  

第10課 折り込みパイ生地を用いた菓子(2)




折り込みパイ生地


今回は難易度もより高そうな折り込みパイに挑戦。今まで何度か作ってみたことはあるのだが、バターが溶けるのが怖くて、きちんと折れているのかいないのか分からないまま、ええーっい!と折りたたみ、やっつけ仕事をしたという印象がいつも残っていた。常に苦手意識があるので、それがまたわるく作用してうまく作れない。というわけで、今回は苦節ウン年の折り込みパイ苦手の歴史(?)に終止符を打つべく、しっかりお勉強いたしましょう!


温度管理と小麦粉選択の難しさ



まずは3種類ある折り込みパイの製法の中の「フイユタージュ・ノルマル」から。小麦粉と塩、冷水でデトランプを作り、その中にバターを包みこみ、それをのばしては折り、折ってはのばすというもの。もろく口どけのよい焼きあがりで、パイ自体を味わう菓子に向いているそうだ。

 まず冷蔵庫で固く冷やしておいたバターを麺棒で叩いて成形する。DVDで見ると簡単そうだったのに、バターはいじっているとどんどんベタついてくるし、結構難しい。が、なんとか成形したら再度冷蔵庫へ入れ、冷やしている間にデトランプを作る。

 イタリアで、イタリア菓子でないお菓子を作る時いつも悩まされるのが、小麦粉の選択である。イタリアの一般市場には「強力粉」「薄力粉」という分類の粉がないからだ。あるのはタンパク質の含有量が多くスパゲティやピザなどを作る「硬質小麦」と、いわゆる普通の小麦粉である「軟質小麦」。ところが最近のナポリピッツァ人気の影響で、「マニトバ」という小麦粉があちこちで売られるようになった。これは軟質小麦粉なのにタンパク質含有量がとても高いらしく、ピッツァやパイに最適! とパッケージにも書いてある。 握ってみると固まりになり、DVDの中で先生が見せてくれる強力粉と同じような感触だ。でもあまりに強力すぎると困るので、マニトバ400gに普通の軟質小麦粉100gを混ぜてやってみることにする。

 ところがデトランプはなかなかうまくのびない。練り過ぎてもいないし、よく休ませているのにすでにグルテンが強烈に頑張っている感じ。のびないので麺棒にも力が入り、グイグイやればやるほどグルテンもますますがんばり、のびなくなる。ああ、DVDの中の川北先生の手は、まるで魔法の手のようにスルスルと生地をのばしているのに、私のデトちゃんはムニューっとのびたかと思うと、スッと元に戻ってしまう。それでも何とか、少しずつのびて、決められたサイズになった。ところがバターをのせている間にやっぱり縮んでしまったのか、生地がバター全体をうまく包み込まない。しかたなく四隅を引っ張りながら、なんとか包む。

 次に麺棒でのばす作業に入る。先生の指示通り、生地の上下部分を押しつけるようにしてうまくのばしたつもりだったのに、なんと、バターを包んだ時に引っ張った部分が薄くなっていて、そこが破れて穴があき、バターが出てきてしまった。やっぱり、マニトバ粉はフイユタージュ向きじゃない!? しかも、しっかり冷やしてあるはずのバターが、ここのところすっかり夏モードの気候のせいか、すでにベタベタと大理石にくっつく。先生助けてー! と叫んでも、やさしい先生はテレビの奥でほほ笑むばかり。通信教育ああ無情! 一人で何とかするしかないのである。バターのベタベタする部分に打ち粉をバンバンして、「ああ、先生はブラシで余分な打ち粉を払いのぞくほど繊細な仕事をなさるのに、私はこんなに雑」と情けなくなりながら、なんとか形通り6回折る。


アメリカンはイージーで幸せ


ガンガンに冷やしておいたはずのバターでさえベタベタしてしまうのだ、とてもバターでデトランプを包むという2番目の製法「フイユタージュ・アンヴェルセ」は怖くてできません。冬になったらやってみますので、今回は勘弁して下さい、と3番目の「フイユタージュ・ラピッド」へ。こちらも作業の途中でバターは柔らかくなり、若干ベタついてきたけれど、バターが外側に出ていていいのだから気が楽だ。小麦粉とバターをそぼろのようにザクザクと混ぜるだけというイージーな感じも、さすが別名「アメリカンパイ」というだけある。リラックス気分でできたので、こちらは問題なくクリア(のはず)。というわけで、2種類のフイユタージュができあがった。さて、次はいよいよ実践編のお菓子制作へ。


3日間の仕事が5分でおなかの中へ




まずパルミエを作る。選択の理由はいつもの通り「このお菓子が好きだから」に加えて、比較的簡単そうだから。ところが形を作ってオーブンで焼き始めると、これがなかなかの曲者。家庭用のオーブンでは、きれいなハート型に広がらないもの、真中は白っぽいのに周りは焦げ始めるものなど、一つ一つ焼け具合が違い、絶えずオーブンの前で見張ってひっくり返したり、形を整えたりしなければならない。焼きあがったもののうちの4分の1くらいはうまく広がらず色も悪かったが、残りは素晴らしい仕上がり! 色つやも美しく、生地は歯ごたえがありながらもろく口の中で壊れて、もうケーキ屋さんみたい! と感動したものつかの間、翌日になってみると、中央部分がモソッ、フニャッとした口当たりに変わっている。焦げるのを恐れて、焼き具合が足りなかったのだ。折り込みパイは焦げるギリギリぐらい、かなりしっかり焼くことがおいしさのコツなのかもしれない。そういえば、先生が見せてくれた焼き色もかなり濃いキツネ色だったもんね。


気を取り直して翌日、ミルフイユに挑戦。9センチの板も、焼くときに重しにする網もないのだが、とりあえずやってみる。家庭用オーブンの天板は約30センチ×30センチなので、生地はそのサイズにのばす。焼き始めるとすぐにぷわーんと膨らんできたので、やはり重しが必要だ。四角い網はないので、ケーキを冷ますときに使う丸型の網をのせて重しにしてみたら、なんとかいけそうな感じ。


キツネ色にきれいに焼けたフイユタージュ、そこから9センチ幅を3枚切り取り、残り部分は少なめだが刻んで、飾り用にする。しかし最後の組み立ての段階で、やっぱり焼くときにちゃんとした重しがなかったことが悔やまれた。フイユタージュが微妙に歪んでいたりするので、クリームも均等に塗れないし、最後に上にかけるフォンダンは両サイドに流れてしまったり。それを修正しようと厚塗りになって、生地はサクサクでとてもおいしいのだが、かなり甘~いミルフイユになってしまった。美しいフレンチ菓子を作るには、技術はもちろん、的確な機材も必要不可欠なんだな~と反省。

 その日、フイユタージュ・ラピッドでバンド・オ・フランボワーズ用の生地を焼くだけ焼いたら、最後の組み立ては翌日にすることにする。2センチ幅の生地を長方形に仕立てた生地の両側に貼り付けたり、切り込みを入れたりする作業は工作にも似て楽しい感じだし、3日間ずっとフイユタージュと格闘したせいか、扱いにも少し慣れてきたようだ。何事も繰り返しは重要だなあ。
 クリームを入れる部分が膨らまないように、オーブンに入れる時にスープスープンをのせてみた。サイズも長さもちょうどよかったのだが、スプーンの口に入る部分が当たっていたところはうまく火が入らなかったのか、翌日、食べてみると生地が硬くなっていた。でも、他の部分は何層にも膨らんだパイ生地がサクサクと夢のようにおいしく、クリームとフルーツとの組み合わせも絶妙。2台のうちの1台は洋ナシとチョコレートクリームでアレンジしてみたけれど、やっぱりフランボワーズのほうがおいしかった。
 3日間のフイユタージュとの格闘は、5分間であっという間におなかの中へ消えて行った。だが自分でこんなものが作れるようになったんだなあ、と感動もひとしおの今回でありました。

  • 一覧を見る
ボーダー