製菓受講日記 ⑥ シュー生地
今回のテーマは・・・
第11課 シュー生地とシュー生地を用いた菓子
第12課 シュー生地を用いた大型の菓子
今回は、いつもに比べてあまり書くことがない。というのは、今回の題目パータ・シューは、私の得意種目(スポーツなの?)だからだ。なーんて傲岸不遜なことを書くと、先生方から厳しい添削が返ってきそうだ。でも得意だからもう学ぶことはない、と言っているのではなく、いつものように初めての連続で、これを失敗した、あれができなかった、ということが少なかった、という意味です。いつものように慌てふためいていないので、逆にパータ・シューについてしっかりと学べたかもしれない。つまりは何事も繰り返しが大切ということなんだけど。
今回の第一の収穫は「パータ・シューは疲れない」ということがわかったということ。今までの私は、私にパータ・シューを教えてくれたある人の影響で、パータ・シューは最初から最後まで、緊張と慌てふためきと、かき混ぜ運動の連続だった。その人の作り方はほぼ完璧で、上手にできるのだが、その人の性格なのか、理解が間違っているのか、とにかくパータ・シューは急いであわてて作るもの、と教わったのだ。
水とバターと塩を沸騰させたところに小麦粉を一気に投入したら、急いで、力いっぱい、休むことなく、木しゃもじでかき混ぜ続ける。鍋に薄く膜が張るまで、バンバン、バンバン、鍋肌に生地を打ちつける。卵を加えてからも、空気を抱き込ませるようにバンバン、バンバン、もう、手に豆ができても、オラオラ~! 休んじゃいかんっ! とスポ根物語のようで、シューを作るのは好きだけど、体力が万全でないとできない、そんな感じだった。そして生地ができあがったら、もう大急ぎで絞って、急いで焼かなくちゃ! と思いこんでいたのだ。
しかし先生の説明を聞いていると、小麦粉を加えてから再度火にかけてかきまぜるのは生地を糊化させるため、卵を一気に加えてはいけないのは固さを調整するためや生地の温度を下げないため、そして生地ができあがってからすぐに焼かない場合は、温度が下がらないように保存する、など、一つ一つの所作の意味がわかる。そうすると、素早く作業をする箇所は素早く、でも、全然あわてる必要はなくなったのだ。なーんだ、シューは疲れないのであった。
第二の大きな収穫は、サイズによって生地の固さを変えるとよい、ということを学んだことだ。今まで得意だったといっても、もっぱらミニサイズばかりで、なぜならシュー生地を学びたかった最初の動機が、「クロッカン・ブッシュを作ってみたかったから」だったのだ。だからサイズのことを考える必要は当初なかったわけだが、「わりと得意だわ」という意識が芽生えると、いろいろ作ってみたくなるのは人の性。ところがエクレールやパリブレストに挑戦してみると、なんだか変な形になってしまう。フニャフニャした仕上がりで、格好が悪い。生地が柔らか過ぎて、膨らみ始める前にだれてしまっていたのだろうか。
だから今回初めて、パリブレストがこんなにうまく作れて感動である。我が家のオーブンは、場所によって火の加減が違うようで、上にうまく膨らまず若干横に膨らんでしまった部分があるのは、膨らみ始めの段階でちゃんと火が入らなかったせいだろうか。途中でオーブンを開けることはできないので、こればかりはしかたがないのかな?
焼く温度や時間も正確に分かったことも、大きな心の支えになった。焼き始めて生地の組織がしっかりできあがるまでに20分はかかるので、それまでは絶対にオーブンを開けてはいけない、と先生はおっしゃった。「膨らんでちゃんとするまで」というあいまいな言葉でしか知らなかったことを、「生地の組織がしっかりする」まで「20分」という正確な情報として頭にインプットできたことは、大きな収穫だ。
意外だったのは、本物のフレンチ風シューは、日本で一般的なシューに比べて生地を硬目に焼き上げるのだということ。今までは生地に霧を吹いて焼いていたのでふんにゃりした仕上がりだったが、しっかり焼きあげるとクリームを詰めてもびしょびしょせず、生地とクリーム両方のおいしさが味わえる。ああ、書いていたらまた作って、そして食べたくなってきた。